クマ出没は早くも「警報レベル」…「死んだふり」は有効? 遭遇時に“絶対にやってはいけない”行動
冬眠から目覚めたクマの活動が活発化している。市街地や住宅街での出没が相次ぎ、人々の生活に深刻な脅威を与えている。

4月19日には、仙台市中心部のマンション敷地にツキノワグマが出没。11時間にわたる膠着(こうちゃく)の末、緊急銃猟によって駆除された。
すでに今年の出没件数が200件に迫る岩手県は22日、県内全域を対象にクマ出没警報を発令。21日には行方不明者を捜索中だった警察官がクマに顔や腕を噛まれる人身被害も発生している。
昨年、全国的に出没件数が増大し、社会問題化した「クマ問題」。冬眠期間で落ち着いていたが春を迎え、市民は再び緊張の日々を強いられている。
最新の状況と公的機関の情報を基に、クマ出没の現状、行政の対応、そして万一に備え、取るべき行動について整理する。

深刻化するクマとの遭遇

環境省のデータによると、令和7年(2025年)度のクマによる人身被害は過去最多の238人に上った。前年度の85件から約3倍増で、特に東北地方では出没が相次ぎ、各県で警戒レベルが引き上げられている。
宮城県では4月の目撃件数が過去5年の平均を大幅に超え、観測史上初めて4月中に「クマ出没警報」が発令された。岩手県でも人身被害が発生し、秋田県では目撃件数の急増を受け、注意報からわずか4日で警報へと切り替えられるなど、春を迎えたばかりの時期に早くも深刻な状況となっている。

クマ出没の「注意報」と「警報」の違い

こうした警報の発令はどのように判断されるのか。
主な指標は、クマの出没件数、人身被害の発生状況、餌となるブナの実の豊凶などに基づく。注意報、警報、特別警報と段階的に設定されており、被害の深刻度に応じ、以下のように警戒レベルが引き上げられる。

1. クマ出没注意報:前年のブナの結実状況や出没件数などから、人身被害の発生が懸念される場合に発表。
2. クマ出没警報:人身被害が発生した場合や、出没件数がさらに増加した場合に発表。
3. クマ出没特別警報:死亡事故が発生した場合や、人身被害が多発した場合に発表(最も深刻なレベル)。
東北ではすでに複数県でリスク度の高い「警報」が発令されており、十分な警戒が求められる。これら警報は、原則として県内全域を対象とし、期間を定めて発表され、県のホームページや報道機関を通じて住民に周知される。

最終手段、緊急銃猟が実施される条件

こうした情報を常にチェックし、外出を控えるなどが対策の基本となるが、市街地に出没するなど、いよいよ市民に危険が迫ってきた場合、対策の最終手段として位置づけられるのが「緊急銃猟」だ。
従来、住居が集合する地域などでの銃猟は原則禁止されていたが、2025年9月改正鳥獣保護管理法の施行により、特定の条件下で市町村が委託したハンターによる銃猟が可能となった。実施条件は以下のようになっている。
  • クマ等が人の日常生活圏に侵入した、またはそのおそれが大きい
  • 人の生命・身体への危害を防止するため緊急の必要がある
  • 銃猟以外の方法では捕獲が困難
  • 住民等に弾丸が当たるおそれがない
仙台市の緊急銃猟は、この制度に基づき実施された。当初は箱わなでの捕獲が試みられたが、捕獲できずにクマが移動した場合のリスクを考慮し、やむなく銃猟に踏み切った。
市街地での銃猟には難しい判断が迫られる。加えて二次被害などのリスク管理も求められ、遂行には経験と高度な技術などが必要とされ、その人員確保も課題となっている。

クマとの遭遇を避けるためにできること

これだけクマの出没エリアが生活圏に近づくと、行政の対策と並行し、一人ひとりが適切な知識を持ち、行動することも被害を防ぐ上で不可欠となる。
基本は、クマを寄せ付けないことだ。
そのためのゴミの管理、家の周りなどの環境整備、車庫や物置などの封鎖による侵入防止は、徹底する必要がある。
山に入る際には細心の注意を払うことも重要だ。入山前に、地域の出没情報を必ず確認し、鈴やラジオを携帯。自分の存在をクマに知らせることで、不意の遭遇(鉢合わせ)を防ぐことができる。
単独行動は避け、複数人で行動するのも基本だ。クマ撃退スプレーも有効な自衛策となる。
また、クマが活発になる明け方や夕方の入山は避け、クマの糞や足跡を見つけたら、すぐに引き返す判断もリスク回避には有効だ。

もしもクマに遭遇してしまったら?

それだけ注意し、警戒していても出会ってしまったらどうすればいいのか…。
慌てて背中を見せて逃げるのは一番やってはいけない行動だ。クマは逃げるものを追いかける習性がある。クマから目を離さず、ゆっくりと後ずさりしてその場を離れる。
子グマを見かけて、「かわいい」と思っても絶対に近づいてはならない。近くには必ず母グマがいるからだ。

逃げ場を失い、いよいよクマに追い詰められた…。そうなればもう最終手段は自衛しかない。
一般的に「死んだふりをする」が対策として知られている。だが実際にはその有効性は認められていない。なすがままに襲撃され、瀕死の重傷を負い、後遺症が残った被害者の事例も報告されている。
そうした中で推奨されているのが、ダメージを最小限に抑える「防御姿勢」をとることだ。両腕で顔や頭部を覆い、うつ伏せになるなどして急所を守る。目の前にクマがおり、もはや逃げようがない場合の最後の抵抗といえる。クマの攻撃は長くは続かないことが多いため、急所を守り切れれば、助かる可能性はある。

「共存はできない」正しい知識で身を守るのみ

クマの出没は、もはや自然に囲まれたエリアだけの他人事ではない。市街地での目撃情報も増加しており、いつどこで遭遇してもおかしくない。
出かける前に天気情報を確認するように、自治体が提供するクマの出没情報(岩手県の「Bears」のようなアプリなど)を日頃から確認し、クマを寄せ付けない環境づくりを徹底する。

併せて、万が一の遭遇に備え、正しい対処法を身につけておく。それがこれからの時代に求められる対クマの自己防衛策といえるだろう。
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長年生死をかけてクマと向き合ってきた池上氏の言葉は思い

猟銃所持許可の取り消しをめぐる訴訟で、最高裁で逆転勝訴した北海道猟友会砂川支部長の池上治男氏(77)は、クマと人の共存について、「共栄はできても『共存』はまず無理」と断言した。生死をかけてクマと向き合ってきた同氏の言葉はあまりに重い。
クマを目撃した際は、決して近づかず、速やかに市町村や警察に連絡。人が気を緩めれば、クマが牙をむくと認識し、誰もが自分に起こり得る事と捉え、行動する。その積み重ねでしか、人はクマから身を守れない。そう肝に銘じておく必要がある。


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