食べ過ぎていないのに太るという人は食事以外の原因を疑う必要があるかもしれません。本記事では順天堂大学医学部教授の医師、小林弘幸氏による著書『お医者さんがすすめるバナナの「朝食化」ダイエット 超シンプルな腸活健康法』(アスコム)から一部抜粋して、腸活によるダイエットについて解説します。

食べ過ぎなくても太る!恐怖の「モナリザ症候群」

「あまり食べないのに太った」「なかなかやせない」という人は、特にこの自律神経の乱れによる肥満を疑ってみてください。

この話は、意外と昔から指摘されており、「モナリザ症候群」といわれています。モナリザ症候群※とは簡単にいえば、自律神経の乱れによって交感神経の働きが衰えて代謝が悪化し、太りやすくなっている状態のことです。肥満の人の約7割がこの「モナリザ症候群」ではないかといわれています。

※ルーブル美術館に収蔵されているあの有名絵画とは無関係。「Most Obesity kNown Are Low In Sympathetic Activity」の頭文字(kNownのみ2文字目のN)を取ってつけられた造語(和訳:肥満者の大多数は交感神経の働きが衰えている)。

ストレス以外にも、不眠などの生活習慣の乱れによっても自律神経の乱れは引き起こされます。

そして自律神経の乱れは、悪化するまで気がつきにくいもの。簡易的なものですが、ぜひ次のチェックリストで自律神経の状態を調べてみてください。

モナリザ症候群チェックリスト

このなかで、あなたが今の症状にあてはまるものにチェックをしてください。1つでもチェックがつくと、自律神経が乱れている可能性があります。また、チェックした数が多いほど自律神経の乱れが大きいと考えられ、モナリザ症候群の危険性が高まります。

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「ダイエットに腸活は欠かせない」と断言する理由

ここからは、勝手にやせる体になる2つ目の要素である「腸内環境を整える」ことについて、説明していきます。腸内環境を整えて腸本来の働きを取り戻す腸活は、ダイエットには欠かせません。その理由は、2つあります。

 

1.腸は自律神経と密接な関係があるから

1つは、腸と自律神経には密接な関係があるからです。腸と脳とは、自律神経、内分泌系、免疫系の3つの経路を介して、互いに影響を及ぼしあう関係で、これを「腸脳相関」といいます。

ストレスで下痢気味になったり、緊張するとトイレに行きたくなったり、おなかが痛くなったりした経験はないでしょうか? これは、ストレスによって自律神経が影響を受け、コントロール機能が乱れ、大腸の働きに異常をきたしたことによって起きる現象です。

腸の働きには、自律神経が大きくかかわっています。「交感神経」が優位なときは、便を排出するための運動であるぜん動運動は停滞し、「副交感神経」が優位なときは、ぜん動運動は活発になるといわれています。

ぜん動運動がしっかり起こっていると、便などの腸内の不要なものが次々と押し出され、腸内環境にもいい影響がでます。そのため、ストレスを受けて交感神経が優位な状況が続くと、便秘しやすくなるといわれています。

また、逆に腸内環境が悪くなると、脳が不安を感じ、自律神経が乱れやすくなるといわれています。うつ病の人に便秘の人が多いのも、この腸脳相関の関係性からくるものといえるでしょう。

2.腸内細菌が「やせる物質」を生産してくれるから

腸活がダイエットに欠かせない2つ目の理由が、腸の中にいるビフィズス菌などが「短鎖()脂肪()酸(たんさしぼうさん)(」というやせる物質を産生してくれるからです。これは、ビフィズス菌などの善玉菌と呼ばれる腸内細菌が、食物繊維やオリゴ糖などをエサとして食べることで産生する、代謝産物の1つです。

「短鎖脂肪酸」にはいくつかの種類があり、どれもさまざまな健康効果から今注目されている物質です。なかでもダイエットと結びつくのが「酢酸(さくさん)()」と「酪()酸(らくさん)」です。

「酢酸」は、脂肪細胞に余分なエネルギーが取り込まれるのを防いで、脂肪をたまりにくくしてくれます。また、「酪酸」は、交感神経に働きかけて、心拍数や体温を上昇させ、代謝を高めてくれる効果があります。 

この「短鎖脂肪酸」の恩恵をうけるには、善玉菌が元気でなくてはなりません。そのためには、善玉菌が元気に活動できる環境を整える必要があります。そして、その環境こそが腸内に便がたまっていない状況なのです。

つまり、代謝を下げる自律神経の乱れから身を守るためにも、やせる物質である「短鎖脂肪酸」を体内で多く産生するためにも、腸内環境をよくする腸活は、欠かせないものなのです。

小林 弘幸

順天堂大学医学部教授