2024年のTOB(株式公開買い付け)件数が100件(届け出ベース)に達した。年間100件の大台に乗せるのは過去最多を記録した2007年104件以来17年ぶり、2度目。
TOBラッシュ、1カ月半で30件
12月16日、精密蒸留の大阪油化工業、マーケティング支援サービスのシャノンに対するTOB開始の届け出がそれぞれあり、今年の累計件数が100件(常磐興産、富士ソフトのTOBはいずれも2段階方式のため、各2件としてカウント)に到達した。
大阪油化に対しては産業廃棄物中間処理のダイセキが完全子会社化を目的に買い付けを開始。TOBが成立すれば、大阪油化の東証スタンダード市場への上場は廃止となる。一方、シャノンにはオンラインメディア事業のイノベーションが株式51%を取得し、連結子会社化することを目指しており、TOB成立後もシャノンの東証グロース市場への上場は維持される。
この2案件を含めて12月に入ってからのTOB届け出は7件。11月中の23件と合わせると30件で、1カ月半余りで年間件数の3分の1近くが集中するラッシュ状態となった。
海外投資ファンドの独壇場
TOBの活況を牽引するのは海外勢を中心とする投資ファンドの存在だ。2024年のここまでの全100件のうち、投資ファンドが関与する案件は27件(投資銀行も一部含む)と、4分の1を超え、年間を通じて11件だった前年の3倍近い。
しかも27件中、海外ファンドが21件を占める独壇場で、国内ファンドの関与は6件にとどまる。記録的な円安水準が続く中、潤沢な資金を持つ海外勢による日本企業買いが鮮明だ。

MBO増の背景に東証要請も?
MBO(経営陣による買収)もTOB件数を押し上げる要因となっている。全100件のTOBのうち、MBOを目的とする案件は19件を数え、前年の16件を上回る。19件中、投資ファンドと組んだケースは9件(海外勢7件、国内勢2件)。
MBO増加の背景には、東京証券取引所が2023年3月にプライム市場とスタンダード市場の上場企業に要請した「資本コストと株価を意識した経営の実現への対応」も見逃せない。低PBR(株価純資産倍率)企業の場合、アクティビスト(物言う株主)の経営介入を招き、買収の標的になりやすいことなどから、株式の非公開化で先手を打つ動きがある。
東証の市場区分見直しに際し、上場維持基準に未達でも上場を認める「経過措置」が2025年3月から順次終了する。これを見据え、MBOを含めてTOBに踏み切る事例も今年すでに散見される。
2000年代後半以来、再ピーク期に
M&A Onlineの調べによると、TOB件数はリーマンショック前年の2007年に過去最多の104件を記録した。08年78件、09年79件と高水準が続いた。
2000年代半ば、村上ファンド(当時)やハゲタカファンドとされた米国スティール・パートナーズが猛威を振るい、その脅威から逃れるためにTOBを通じて合従連衡やMBOの動きが産業界に広がった。2011年には55件あったTOBのうち、MBOが4割近い21件(過去最多)に達した。
TOBは2010年代に入ると落ち込み、年間40~50件で終始した。復調したのはコロナ禍初年の2020年。この年に60件、21年70件に伸ばした。東証市場区分見直しのあった22年は54件に低下したが、23年は74件と09年(79件)以来の高水準となり、24年はさらに増勢を強め、再びピーク期を迎えた形だ。
文:M&A Online
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