
三共生興<8018>は、英高級ブランドの「DAKS」や、フランス高級婦人ブランド「LEONARD」に次ぐ新たな高級ブランドの開拓に乗り出した。
主力事業であるファッション関連事業のグローバル展開を加速することで、安定的な成長を目指すのが狙いだ。
同社では2022年3月期から2024年3月期までの3年間に、LEONARDの子会社化をはじめとするM&Aに20億円を投じており、今後3年間はこれを上回る投資を計画している。
「DAKS」「LEONARD」と並ぶのはどのようなブランドだろうか。
世界の主要都市に旗艦店を出店
三共生興はファッション関連事業(売上高構成比46%)のほかに、アパレルのOEM(相手先ブランドによる生産)を中⼼とする繊維関連事業(同43%)と、オフィス、ビル、ホールの賃貸を中⼼とする不動産関連事業(同11%)の3事業を展開している。
ファッション関連事業の柱となっている「DAKS」は、1894年創業の英国王室御⽤達ブランドで、1970年に三共生興が日本での本格販売に乗り出した。
その後20年ほど経った1991年に三共生興が買収し、現在は世界8カ国2837カ所で、ジャケットやスラックス、コート、シャツ、靴、バッグ、小物、アクセサリーなどを販売している。
今後はライセンスビジネスの再構築や、世界の主要都市での旗艦店の出店などに取り組む計画だ。
ファッション関連事業のもう一つの柱である「LEONARD」は、三共生興が1971 年に独占輸入販売契約を結び、日本での販売を開始。
2022年にLEONARDの株主である経営陣と協議を重ね、株式の100%を取得し、現在は世界17カ国約80カ所で、婦人服のほかスカーフやネクタイ、バッグなどを販売している。
こちらも世界の主要都市に旗艦店を出店し、新規顧客の開拓などを進めるという。
これに続く新たなブランドに投資し「DAKS」「LEONARD」に匹敵する大型商品に育てるのがファッション関連事業の戦略だ。
アパレルブランドの「Product Twelve」を傘下に
三共生興は2024年7月に、子会社の三共生興アパレルファッションを通じて、アパレルブランド「Product Twelve」を展開するTwelve(東京都目黒区)の株式の51%を取得し、子会社化した。
「Product Twelve」はデザイナーの川瀬正輝氏(Twelve社長)によるブランドで、国内大手セレクトショップだけでなく海外にも販路を持つ。
「Product Twelve」は有力ブランドであり「DAKS」「LEONARD」に次ぐ新ブランドと見ることもできる。
ただ三共生興は、これまで培ってきた企画提案力や海外ネットワークなどの強みと、Twelveが持つ発信力をかけ合わせることで「既存のOEMビジネスモデルだけではない新たな市場の開拓と海外を含む販路の拡大が期待できる」としている。
繊維関連事業の事業戦略として、OEMビジネスモデルの変⾰を掲げているほか、子会社化した三共生興アパレルファッションは、繊維衣料製品のOEM事業を手がけている。
これらのことから「Product Twelve」の案件は、OEMビジネスモデルの変⾰に向けた取り組みの一環とみるのが妥当で、「DAKS」「LEONARD」と並ぶ新ブランドの探索は今後も続くと見てよさそうだ。
その繊維関連事業では、生地の供給をはじめ、製品の企画や提案、最終商品の納品などを行っており、紳士、婦人、ヤング、ジュニア層などに向けたホームウェアや、インテリア小物などを供給している。
同事業では、新規事業創⽣の一つの手段として、M&Aによる⾮繊維分野への進出を掲げている。新ブランドの開拓と並んで、非繊維分野の商品開発でもM&Aを活用する場面がありそう。
ちなみに不動産関連事業では、新規不動産の取得や、既存不動産の建て替えなどに、過去3年で40億円を投じており、今後の3年も保有不動産の安定収益⼒の強化や新不動産の取得などに積極的に投資する計画で、この分野ではM&Aの出番はなさそうだ。
想定を下回る国内外の市況
三共生興は1920年に横浜で三木商店を創業したのが始まりで、当初は輸出絹織物を外国商館に販売していた。1923年に関東大震災で店舗が焼失したため神戸に移転し、三共商会として再スタートを切った。
1924年には横浜に復帰したが、1932年に本拠を神戸に移したあと、1953年に本社業務を大阪に移し、2015年には本店を神戸から大阪に移した。
この間「DAKS」「LEONARD」以外の主なM&Aについては、2001年の横浜テキスタイル倶楽部の子会社化、2006年のブティックサンプチの吸収合併、2009年のサン プロシードの吸収合併、2018年のスプラスインターナショナルの子会社化などがあるものの、件数は多くない。

三共生興の業績は底堅い。コロナ禍の影響で、2020年3月期は95%もの営業減益に陥ったが黒字を確保し、その後も赤字に転落することはなく、利益を出し続けている。
2024年3月期は商業施設などへの人流の回復やインバウンド(訪日観光客)需要の増加などにより、繊維・アパレル業界の市場環境は回復基調を示した。
ただ直近の国内外の市況は、三共生興の想定を下回っており、同社は2025年3月期の業績予想を下方修正し、3期ぶりに営業減益となる見込みだ。
2027年3月期には売上高250億円、営業利益28億円を見込んでおり、これは2024年3月期と比べると17%ほどの増収、13%ほどの営業増益となる。
計画通り新しいファッションブランドや非繊維部門でのM&Aが実現すれば、目標を達成することは難しくないように見える。

文:M&A Online記者 松本亮一
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