
多くの食品関連子会社を持つヨシムラ・フード・ホールディングス<2884>は、2023年に子会社化したホタテ加工大手のワイエスフーズ(北海道森町)などを核としたロールアップ戦略(複数の中小企業を買収し、統合することで一つの大きな企業として成長を目指す手法)によって、ホタテ加工事業を拡充する。
2030年2月期に売上高を1150億円に
2026年2月期を初年度として、複数の水産加工企業の買収を進め、企業数が増えた段階でグループ内で生産の平準化をはじめ、設備や販路の相互活用などに取り組む。
その後2027年2月期には新たな分野で核となる企業を傘下に収め、翌年の2028年2月期から同様のロールアップ戦略を展開。
さらに2029年2月期にも新たな核となる企業を買収し、翌年の2030年2月期からロールアップ戦略で複数の企業をグループ化する。
加えてニッチな市場で高いシェアを持つ企業や、海外販売に適した高付加価値商品を製造する企業の買収にも着手し、これら複数の取り組みで2030年2月期に売上高1150億円(2025年2月期比1.96倍)、営業利益80億円(同1.92倍)を目指す計画だ。
連携して生産量を平準化
ホタテ加工事業ではワイエスフーズと、2023年に子会社化したマルキチ(北海道網走市)の両社を核に、多数の中小企業が競合する北海道の水産加工業界でロールアップを進める。
この取り組みで企業数を増やし、最漁期が異なるワイエスフーズ(冬~春=噴火湾)と、マルキチ(夏~秋=オホーツク海)を中心に、グループ内で生産量を平準化し、生産効率を高める。
加えて原材料や設備、人材のグループ内での活用や、仕入や販路の統合などを実施し、ホタテ加工分野で高いシェアの獲得し、収益の拡大を目指す。
さらに新たなロールアップ戦略では、核となる企業の売上高は20億円以上、ロールアップの対象となる企業は3億円以上の売上高を目安に探索する。
同時に進めるニッチ市場のM&Aでは、企業規模にかかわらず高いシェアを持つ企業や、高付加価値商品で高収益を生みだせる企業を対象にグループ化を検討する。
過去の事例では、陸上養殖でアユの稚魚の孵化から出荷までを自社で手がける森養魚場(2019年に子会社化)や、業務用春巻きの皮で長年トップシェアを維持している富強食品(2024年に子会社化)などがあり、同様の環境下にある売上高が3億円以上の企業を探索する。
このほかにも日本国内をはじめシンガポールやマレーシアなどの東南アジアを中心に独自の商品や技術を持ち相乗効果が見込める売上高3億円以上の食品関連の企業を対象にM&Aを検討する。
これまでに29社をM&A
ヨシムラ・フードは食品の製造、販売を行う中小企業の支援、活性化を目的に、2008年に設立されたエルパートナーズが前身。
設立の9カ月後には業務用食材の企画、販売を主な事業とするミズホ (現 ヨシムラ・フード)と、シューマイの製造、販売を主な事業とする楽陽食品の株式を取得。
その後、2010年に白石温麺などの乾麺の製造、販売を主な事業とする白石興産と麺寿庵を子会社化したあとは毎年、食品関連の事業承継問題を抱える企業や経営に行き詰まった企業、成長を望む企業などをグループ化していき、2025年2月期までに29社(事業譲受を含む)のM&Aを実施した。
食品業界はコロナ禍からの回復やインバウンド(訪日観光客)需要の増加などから、業績が上向く企業が少なくないが、長期的には日本の人口が減少する中、事業の継続が困難になる企業が増加することが予想されている。
このためヨシムラ・フードでは今後M&Aによる事業承継のニーズは強まると見ており、実際に同社に寄せられるM&A案件紹介件数が、2024年2月期に400件ほどだったのが2025年2月期は540件ほどに拡大しているという。

2025年2月期は大幅な増収営業増益に
ヨシムラ・フードは買収後に企業価値を高めて売却することを前提とする投資ファンドとは一線を画しており、売却を前提とせずに、グループとしての相乗効果を目指している。
こうした運営によって、業績は好調に推移しており、2025年2月期はワイエスフーズが連結対象に加わったことや、ホタテの販売価格が上昇したことで、ワイエスフーズ、マルキチともに大幅に増益となったことなどから、売上高585億4200万円(前年度比17.6%増)、営業利益41億6100万円(同75.8%増)と大幅な増収営業増益を達成した。
2026年2月期は、米国の関税政策の不透明さに加え、ホタテ価格の変動予測が難しいため業績予想に幅を持たせ、売上高は607億~637億円(同3.7%~8.8%増)、営業利益30億~40億円(同27.9%~3.9%減)を見込む。
今後5年間(2026年2月期~2030年2月期)で売上高を2倍近くに伸ばす計画の実現の可能性は、今後のロールアップやニッチなどのM&A戦略の成果次第ということになりそうだ。

文:M&A Online記者 松本亮一
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