
Text:笹谷淳介 Photo:シンマチダ
5月26日、東京・下北沢Flowers Loftにて『Grasshopper vol.31』が開催された。チケットぴあ注目の次世代音楽シーンを担う若手アーティストを応援するライブハウス企画として初声を上げたイベントも今回で31回目。
■SAIHATE

SAIHATE
下北沢Flowers Loftに集まったオーディエンスは、今か今かと開演を待っている。各バンドのファンなのだろう、「あのライブ、観た?」、「あのバンドは好き?」など各々でコミュニケーションを楽しむオーディエンス。会場にはすでにいい空気が流れているが、そんな温かい空気を、カナイタクミ(vo/g)の歌声が切り裂く。「大器晩成」からキックオフした彼らのライブは、冒頭から疾走していく。〈聞こえるか? 俺らの音楽が〉と歌うカナイに呼応するかのように、オーディエンスは腕を突き上げ、彼らのサウンドに寄り添う。

コバヤシトモヤ(b)
たった1曲でSAIHATEのフィールドに引き摺り込むと、「月曜日、俺らと最高の景色を作ろう」と勢いをそのままに、「緑道」へ。コバヤシリュウセイ(g)のスキルフルなギターの音色、全身全霊で魂をぶつけてくる4人にオーディエンスは目を離せないでいる。間髪を入れず進行していくSAIHATEのライブ。コバヤシトモヤ(b)の奏でる低音が耳に轟く、「SEA GIRL」が投下されるとフロアのボルテージはさらに上昇。オーディエンスはカナイと共に歌詞を口ずさみながら、彼らの奏でる音楽に心酔していく。

コバヤシリュウセイ(g)

ツネザワハヤト(ds)
“その鳴り音にプライドと覚悟を”、彼らの音を聴いているとそんな強い思いが伝わってくるような気がする。もう我々は彼らの一挙手一投足から目が離せない。スタートから3曲、立て続けに楽曲を披露すると、カナイは「俺たちがSAIHATEです。一番大事な曲を」と口を開き、「Stay」を投下。オレンジ色に染まるステージの上で、語りかけるように言葉を紡ぐ、そんな彼の歌声に呼応するかのように音像は広がっていく。全力でオーディエンスの心を掴もうとしていることを滴る汗から感じることが出来る。MCの時、カナイは「伝えたいことが伝えられず自分が嫌になる毎日」、「でも非日常的な感覚が、俺を頑張らせてくれている。今日みたいな日があるから、みんなにもまた1週間頑張ろうと思ってほしい」と言葉を紡ぎ、「音楽であんた一人ひとりに伝えます」とオーディエンスの心をぶち抜いた。

カナイタクミ(vo/g)
なんていいフロントマンなんだろう、なんていいバンドなんだろう。私感だらけで申し訳ないが、これぞバンドなんだと思う。音を掻き鳴らせ、その音でフロアを掌握しろ。その歌声で、リスナーの心をぶっ刺せ、目の前に広がるのは、SAIHATEの音楽に呼応し、腕を突き上げるオーディエンスたちだ。
■プルスタンス

プルスタンス
ドラムの前に集結し、4人は円陣を組んだ。暗転すると、プルスタンスのライブはキックオフする。小林カナ(vo/g)の「よろしくどうぞ!」と軽快な挨拶からスタートした、「タイトルコール」。冒頭からオーディエンスのクラップを拝借すると、フロアの一体感が増していくのが分かる。ポップでカラフルなサウンドに祥吾(g)のギターサウンドがフロアに轟く。「お集まりの皆様、プルスタンスですここから最高の1日を僕たちと一緒に作りましょう!」と小林が声を高らかに宣言すると、オーディエンスは腕を突き上げ彼の言葉に応える。

小林カナ(vo/g)
記名性の高い歌声とプルスタンスのポップネスを詰め込んだサウンドには不思議な力が宿っているように思える。勝手に体が揺れて、キャッチーなリリックは頭に残って、勝手に口ずさんでしまっている。「夢追いフール」、「追いかけがいのある人生を」を連投する、4人。

祥吾(g)
プルスタンスのライブの何がいいって、フロアを沸かせるのはもちろんだが、ステージ上の4人が一番楽しそう。

吉野冴紀(b)
スキルフルな祥吾のギター、どんなBPMでもブレない、ヨレない、木村海映(ds)のドラムさばき、そして一番冷静そうで、一番ステージ上を動き回る吉野冴紀(b)の胸に響くベースの音色。ポップだけじゃない、ロックな一面も垣間見せつつ、ジェットコースターのように展開する彼らのライブ。「カフネ」、「センチメンタリスト」と続けざまに見せる彼らのいろんな表情にフロアの熱気は上昇していく。

木村海映(ds)
「青春ってものは一瞬しかないと思ってるかもしれない、でもそうじゃない、何歳になっても自分が青春と思えば、いつだって青春です」、「ここから、青春真っ只中のあなたたちと一緒に歌える馬鹿みたいに声を出せる曲を持ってきました!」なんて言うんもんだから、我々は呼応するしかない。スタートした「Fermi」がキャッチーすぎて、ポップすぎて、自由に声を上げ、自由に体を揺らすオーディエンス。小林が言うように、青春じゃん。
■おもかげ

おもかげ
『Grasshopper vol.31』もファイナルの時間がやってきた。この日トリを飾ったのは、神奈川 横浜発・おもかげ。SEがフロアに流れると、ひとりずつステージに姿を表した彼らのライブは、その声と言葉と音楽を伝え続けた、圧巻のライブだったように思う。ギターを爪弾き、ドラムの音色がその音に重なる、「星降る夜に」から幕を開けた、おもかげのライブ。自然発生するクラップ、オーディエンスはすでに彼らの音の虜だ。極上のバンドアンサンブルがフロアに轟く。えいと(g)と左近航介(ds)が時折目配せをしながら、音を奏でる。その瞬間を見るだけでも、おもかげがどれだけいいバンドか理解できる。間髪を入れず「ボクの文学」を投下すると、日隈貫太(vo/g)は「僕ららしく、声と言葉と音楽を」、「楽しんでいこうぜ!」とオーディエンスを煽る。

左近航介(ds)
えいとのスキルフルなギターソロでギアが上がったのが分かる。その鳴り音に呼応するオーディエンス。「初めましてなんて関係ない! あなたの声が聴きたい!」と日隈が言葉にするものながら、フロアには「LaLaLa」とさまざまな声が響いている。この場にいる全ての人間を置いていかない、巻き込んだライブ展開は圧巻。音を奏でるのがまだ10代の若人と考えると、未来は明るい。「ミライ」がスタートすると、えいととゆうせい(b)によるギターとベースのスキルの応酬、そして左近のドラム、おもかげというひとつの生き物は曲を終えるたびに進化し、オーディエンスの心を鷲掴みにしていく。そんな楽器隊に呼応するように日隈のボーカルも力強さを増し、極上のバンドサウンドを奏でていく。

ゆうせい(b)
「出会ってくれてありがとうございます。僕らにとって大切な曲を」と始まった「ラベンダー」。紫色に照らされたステージの上で、語りかけるように日隈は歌う。叙情的な彼の紡ぐ言の葉、「あなたを待っています」と付けられたラベンダーの花言葉、恋愛の思い出を想起させる抜群のリリックとサウンドにオーディエンスは酔いしれる。曲中彼は「あなたに真っ直ぐ届けます」と口にしたけれど、確かに届いている。

えいと(g)
情感たっぷりに大切な曲を歌い上げると、8月に自主企画をすること、そして熱い思いを吐露し、「閃光」を投下。高く腕を突き上げて、おもかげの音楽に呼応するオーディエンスの表情は皆、笑顔だ。若きバンドヒーローが作り上げた最高の雰囲気の中、「最後はロックバンドをやって帰ります!」と宣言しスタートした「18歳」。初期衝動的に鳴るサウンド、〈昨日のことなんてどうでもいい 今は歌を歌おう 明日のことなんてわからない 今を生きろ 生きていこう〉と力強く歌い奏でる4人。確かに明日のことなんて分からない、でもこの日この場所にいたオーディエンスは同じことを思っていたはずだ、「おもかげが奏でるから、歌うから、明日が楽しみになる」と。この日一番の一体感の中で、日隈は先輩たちに負けてたまるか!と言葉にして、「笑って生きていこうぜ!」とオーディエンスの背中を押した。「まだ時間が少しあるみたいなので!」とラストに「茜」をワンコーラス。拳を高く突き上げたオーディエンスの熱気と4人の掻き鳴らすロックサウンドの余韻が、いつまでもフロアに漂っていた。

日隈貫太(vo/g)
3組のエネルギーが混ざり合い、最後の最後まで盛り上がり続けた、『Grasshopper vol.31』はこれにて閉幕。Grasshopperから羽ばたき、これからの音楽シーンを担っていくであろう若き3組の才能の天晴れと賛辞を送り、レポートを閉じようと思う。今後も出演した3組とGrasshopperから目が離せない!
<公演情報>
『Flowers Loft × チケットぴあ presents. Grasshopper vol.31』
5月26日 東京・下北沢Flowers Loft
出演:SAIHATE、プルスタンス、おもかげ
<次回公演情報>
『Grasshopper vol.33 supported by チケットぴあ』
2025年7月17日(木) 東京・渋谷 Spotify O-Crest
開場 18:15 / 開演 19:00
出演:Dannie May / PompadollS
【チケット情報】
前売:一般3,600円、学割2,900円
当日:一般4,100円、学割3,400円
※入場時ドリンク代が必要
●発売中
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/grasshopper-vol33/(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2519711&afid=P66)
公式サイト:
https://fan.pia.jp/grasshopper/