
2017年の渡米以来、6年ぶりとなる帰国を果たしたピースの綾部祐二。10月15日に開催される『ピーストークライブ ~本とアメリカ~』の舞台上で、相方の又吉直樹と久しぶりの再会を果たすという。

6年ぶりに帰国したピースの綾部祐二さん
圧倒的にアメリカ
――今回、6年ぶりの帰国を決意されたきっかけは。
もともと5年くらいは帰らないと決めていたんですけど、まあ6年経って、親にも会っていなかったですし、この辺がよきタイミングかなって。
――Instagramに投稿されていましたが、千鳥のノブさんなど先輩芸人の方々に久しぶりに会ってみて、いかがでしたか。
6年って短い年月じゃないと思うんですけど、家族や先輩と会ってみて、「こんな感じか」っていうくらい、あっさりしていますね。「6年ぶり! おお~」みたいなのもお互いになく、「1年ぶりくらいの感じだよね」って。
――帰国されて驚いたことは?
街を歩いていると、まわりのすべての会話が耳に入って来るっていう現象にびっくりしました。英語だとそんなに聞き取れないから、向こうにいるときは「何となくこんなことを言っているな」っていう感じで、全然聞こえてこないんです。
――まだ数日の滞在だと思いますが、日本にいる自分とアメリカにいる自分、どちらのほうが心地いい?
圧倒的にアメリカです。ただ「やっぱり日本最高だな~」とは思いましたね。
――日本の情報は向こうでも気にしていました?
大きなニュースは知ることもありましたけど、芸能界については、人もまったくわからなくて。帰って来てから、なぜかテレビを観られないんです。実家でテレビが流れていても、「ちょっと消して」ってなるくらい。
(自分の中に)なにが生じているのかはわからないですけど、感覚が戻らなくなっているものはたくさんあります。でも、“失ってしまった”という表現ではなく、それが一番心地良いというか、アップデートされたと思っていますけどね。
妻とはプラスでしかない関係値
――昨年出版されたエッセイ『HI, HOW ARE YOU?』に、「1万点中の4点の英語力」だと日本人の英語の先生に評された、というエピソードがありましたが、語学の成長度合いはどうですか。
渡米したころと比べたらレベルアップしていますけど、渡米時点の英語力がなんせゼロだったので、まだまだお話にならない状況です。
僕のインスタとかYouTubeを見て、「そんなことないよ」って言ってくださる人もいるんですけど、自分の英語がまったく通用していない、聞き取れない、っていうのを向こうで味わっているんで。
「日常会話の英語ができる」ことを日本で想像するのと、実際にアメリカに住んで「日常会話ができる」ことの差を痛感していますね。カフェでコーヒーを頼んだり、洋服屋で「違うサイズある?」って聞いたりするのは、日常会話のとっかかりですらなく、ウォーミングアップくらいですから。
こうやってインタビューを受けている。これこそが会話であって、これを英語でやれって言われたら、まだまだ話にならないな、と。
――その日本人の先生とのちにご結婚されたとのことですが、決め手はどんな部分?
僕は自分の夢や目標をメインに置いてしまうタイプなので、それを追いかけていくときに、一緒にいてもらえたらラッキーだな、完全にプラスでしかないなって。そういうところです。

――「ハリウッドスターになってレッドカーペッドを歩く」という夢には、どのくらい近づいている感覚ですか。
ニューヨークからハリウッドに引っ越したんで、物理的な距離は近づいたんですけど、夢としての距離は、渡米してから1ミリも変わっていないです。
――お笑い芸人としてスターダムをのし上がった日本での成功体験と、アメリカでの目標実現は、重なる部分はありますか。
母国で母国語を使って、それでも10年かかっていますから。その“言語”ができないで、世界中から人が集まっているアメリカでは単純に難しいよな、と。「日本で10年か、じゃあアメリカでは20年かもな」っていう感じです。
又吉直樹とは舞台上で6年ぶりに再会
――目標の実現方法についての金言が詰まっている一冊だと感じたのですが、夢や目標が定まっていない人には、どんなアドバイスをおくりますか。
これは無理にやっても難しいことで、子供と同じように授かるものだと思っていて。
神様なのか何なのかはわからないですけど、そういう存在が僕たちを上から見ていたとしたら、“のほほんと生きている人”より、“手探りでも前向きにやっている人”に、(目標や夢を)ポンと落とすような気がするんです。
だからそれが見つかった人は、授かったっていう感覚でやるべきかなと。
見つからない人は、そのことに対してネガティブになるのはよくないんじゃないかな。「まだタイミングではないんだな」って自分に問いかけつつ、「でも、ちゃんと見てくれているんですよね?」っていうような概念を持っていればいい。僕はそういう概念で生きていますね。
――どんな人にこの本を読んで欲しいですか?
まず、この表紙は失敗したなって思っているんで、表紙に騙されないでください(笑)。
「綾部祐二ってこんな考えを持っているんだ」っていうことを思ってもらう必要はまったくなくて。
やりたいことが見つからないとか、「どうなのよ俺? どうなの私?」っていう人に、「こんなサンプルもあるんだよ」と思って作った本なので、読んでくださった人に何かが引っかかったり、少しでもプラスになれば、まさに作った意味があるなって感じです。

――今回のトークライブは、綾部さんと又吉さん、どちらからの提案ですか?
「日本に帰ったときには、ライブをやるのが一番いいんじゃないか」って、何となく僕のほうから提案して、「そうだな」っていう感じでした。
――帰国後、又吉さんとは会いましたか?
まだです。楽屋も別にして、お客さんと同時に舞台上で会おうっていう作戦なんです。
――トークライブ後、日本ではどのように過ごす予定ですか?
トークライブ後は、ずっと先輩とご飯を食べていくだけです(笑)。あとは人間ドックに行くくらいで、今月中に向こうに戻りますよ。

取材・文/佐藤麻水 写真/松木宏祐
HI, HOW ARE YOU?
綾部祐二

2022年7月15日発売
1650円
208ページ
ISBN:978-4048974608
綾部祐二、5年の沈黙を破る!
なぜアメリカに渡ったのか? 目標に掲げたレッドカーペットまでの現在地は? 日々の暮らし、英語力、人生哲学、そしてこれからのこと……。5年間日本に戻らず向き合い続けてきた思いを綴る初めてのエッセイ集!