
「このマンガがすごい!2024」オトコ編の1位に輝き、話題沸騰の野球漫画『ダイヤモンドの功罪』。連載開始から同作を担当するヤングジャンプ編集部の伊佐治宝氏に作品の魅力を聞いた。
1コマずつ、思いを込めて作り上げています
――「このマンガがすごい!2024」オトコ編の1位になったことを受けて、作者の平井大橋先生はどんなリアクションをされていましたか?
(ヤングジャンプ編集部・伊佐治宝 以下同) 喜びはもちろん、とにかく感謝という反応で、「本当にたくさんの人に応援されているんですね」と。まずは読者、そしてすべての関係者にお礼を伝えたいとおっしゃっていました。

ヤングジャンプ編集部・伊佐治氏
――伊佐治さんは、担当編集者としてどんなお気持ちでしたか?
とにかくうれしくて、先生より派手なリアクションで喜んでいたかもしれません(笑)。私のもとに一報が入ったのがちょうど電車に乗っているときだったのですが、もうニヤニヤが止まらなくて。やっと落ち着いてきたと思っても、“これは本当にすごいことだぞ”と興奮がまた湧き上がってきて。うっすら涙すら出てくるくらいでした。
――それだけ思い入れの強い作品なのですね。
そうですね。平井先生が読者の皆さんに楽しんでいただけるよう、1話1話丁寧に積み上げてきたことに対して、目に見える形で結果が出てよかったと思っています。ランクインについては運とタイミングもあると思いますし、平井先生と同じく感謝の気持ちでいっぱいです。

『ダイヤモンドの功罪』©平井大橋/集英社
――平井先生と伊佐治さんはどのようにして出会ったのでしょうか。
2020年に集英社青年コミック誌で「賞金総額最大1億円40漫画賞」という企画が開催されていたのですが、そのなかのひとつで私が担当していた「野球漫画賞」に平井先生が作品を投稿されたのがきっかけです。
「担当編集者として、自分が知っていることで読者が知らないことをなくしたい」
――コマの隅々まで登場人物の人柄が見えるような描写があるので、読み手として目が離せません。
そこはかなり気を遣っているところです。
でも、『ダイヤモンドの功罪』では、本編では描けなかったことや展開をなるべく削らずに読者に届けたいという思いがあるので、扉でそれを見せることを重要視しています。たとえば、登場人物が幼い頃の日常を描いたイラストがわかりやすいですかね。よく見ると靴下が丸まっていたりして。こういうところから人間味とか、魅力が見えてくると思うんです。

『ダイヤモンドの功罪』©平井大橋/集英社
――単行本のおまけページでも同様に、登場人物に親近感が湧くような漫画が掲載されていますよね。
それも同じような意図です。担当編集者として、私の知っていることで読者が知らないことをなくしたいなと思っていているので、同じくおまけページも大切にしています。

『ダイヤモンドの功罪』©平井大橋/集英社
天才の「苦悩」と「孤独」に共感させられる圧倒的な人間の描写力
――担当編集者として『ダイヤモンドの功罪』のすごいと思うところを教えてください。
スポーツ漫画の長い歴史の中で、天才の「苦悩」と「孤独」というテーマをほかにはない切り口で描いているところです。

『ダイヤモンドの功罪』©平井大橋/集英社
――伊佐治さんが特に好きなシーンはありますか?
多すぎて難しいですが…。パーソナリティが掘り下げられているからこそ、どの登場人物も野球をしているときの本気の顔にグッときますね。あとは、2話目で綾瀬川がはじめて本気で野球をして、日本代表のメンバーたちに認められていく過程もすごく気に入っています。野球をしている綾瀬川が本当に楽しそうで。

『ダイヤモンドの功罪』©平井大橋/集英社
あと野球のシーンではないですが、3話目のかき氷をみんなで食べているところも好きです。イガがかき氷機から直で食べるところとか。こういった人間らしい、かわいらしい描写があるからこそ、シリアスなシーンがソリッドで伝わりやすくもなりますし。先にも言いましたが、コマの隅々までこだわりがあるので、読者のみなさんにはぜひ登場人物のさまざまな魅力を見つけていってほしいです。

『ダイヤモンドの功罪』©平井大橋/集英社
――最後に、今後の展開について話せることがあれば教えてください。
ストーリーの展開については、今後も毎週の楽しみにとっておいていただければと思います。変わらずていねいに、綾瀬川とその周りの人たちの人生を描いていくと思うので、ぜひ一緒に見守ってください。
彼らがどんな人に出会って、どう成長していくのか、担当編集の私自身、心配と期待が入り混じった気持ちで読んでいます。知り合いや親戚の子どもを見ているような感覚です(笑)。どうぞ引き続きの応援をよろしくお願いします。
取材・文/鳥山徳斗