
高齢になるとカラダのあちこちにガタがきて、どうしたって薬に頼ることが多くなる。しかし、年をとればとるほど副作用が起きやすくなることをご存知だろうか。
『60歳から女性はもっとやりたい放題』 (扶桑社新書) より、一部抜粋、再構成してお届けする。
骨粗鬆症の薬でかえって骨折しやすくなる!?
高血圧や高血糖自体を、薬を使って一時的に改善したとしても、それが本当に健康長寿につながるのかどうかは、実ははっきりとはわかっていません。
だから、頭がぼーっとするとか、ふらつくといった症状を我慢してまで、薬で無理に血圧や血糖値を下げる必要はないのではないかと私は思っています。薬を飲み続けることで血圧や血糖値が「正常値」になったとしても、他の症状に苦しめられるのだとすれば、果たしてそれは「正常」なのかという疑問も残ります。
薬というものに絶対的な信頼を寄せる人はとても多いのですが、高齢になるほど副作用が起きやすくなることは絶対に忘れてはいけません。
例えば歳をとるとどうしても深い睡眠が減るので、夜中に何度も目が覚めるようになります。それが嫌だからと睡眠薬を飲む人は多いのですが、最近睡眠薬として処方されるのはその大半が睡眠導入剤なので、寝付きはよくなっても、眠りが深くなることはありません。
だから睡眠薬を飲んだとしても夜中に目が覚めることには変わりないのです。つまり、本来の目的は果たせないので、睡眠薬を飲むことにたいしたメリットはありません。
ところが睡眠薬の中には筋弛緩作用が働くものが多く、足がふらつく原因になります。実際、睡眠薬を飲んでも結局夜中に目が覚めて、トイレでも行こうと立ち上がったら、ふらついて転倒するケースは珍しくありません。
また、女性に多い骨粗鬆症にも薬はありますが、実は胃腸障害という副作用が起こることが多々あります。
薬の多量摂取で転倒リスクが倍に
多くの種類の薬を一緒に飲むことでどのような作用が及ぶのかはほとんど検証されていないのですが、唯一わかっているのは、5種類以上の薬を飲むと転倒のリスクが倍になるということです。
特に女性の場合は骨粗鬆症の傾向もありますから、転倒したら骨折する可能性が高く、それがきっかけで体の自由が効かなくなってしまう危険もあります。これはもう、立派な薬害ではないでしょうか。
近年高齢ドライバーの暴走事故が問題になり、認知機能や判断力の話を持ち出して、あたかも年齢だけが原因であるかのような話になっていますが、そんなことよりむしろ服用している薬が影響していると私には思えてなりません。
高齢者はたいがい何らかの薬を服用していますから、降圧剤で血圧が下がりすぎたり、糖尿病の薬で極端な低血糖に陥ったりしたせいで、意識障害を起こしてしまったのかもしれません。
他の病気の薬のせいでせん妄という意識障害のような症状が出ていた可能性だってあると思います。もちろん意識がもうろうとした状態はとても危険で自動車の暴走事故が起こっても不思議ではありません。
製薬会社に忖度しているのか何なのかはよくわかりませんが、テレビなどでそういう問題に声をあげる人は私の知る限りほとんどいません。そんな重大な問題を一切検証することなく、「年寄りは免許を返納しろ」という空気をつくり上げていくことに私は強い憤りを感じずにはいられません。
薬の相談に乗らない医者は切り捨てよう
医者にもらった薬を言われるがままに飲み続けて、いつの間にか薬漬けになり、むしろ体調が悪くなったり、寿命を縮めたりするリスクはみなさんが想像している以上に高いのです。
この薬を飲むと体調が悪くなるなと思ったら、思い切って量を減らしたりやめたりしてみてもいいと私は思うのですが、自己判断でそれをするのはやっぱり怖いという方もいるでしょう。
だからといって我慢して飲み続けるのは、それ自体もストレスになっていいことは何もないので、どのような症状が出ているのかを処方した医師に必ず相談するようにしてください。
「副反応のようなものだから仕方がないですよ」とか「頑張って薬を飲み続けましょう」と言うような医者は、どれだけ親切そうな顔をしていても、教科書通りの診察しかできないダメな医者だと思います。
うまく言い返すことができず、その医者の言いなりになる方が多いのですが、本当に健康でいたいなら、ダメ医者はさっさと切り捨てて、別にいい医者を見つけるべきです。
理想的なのは患者が苦痛なく、そして、できるだけ生活の質を落とさずにいられるよう親身になって考えてくれる医者です。多くの高齢者を診てきた医者であればそのノウハウを持っている可能性が高いですし、70代・80代になっても良い相談相手になってくれるはずです。
どんなに腕がいいと評判でも、嫌だなと感じる人や、自分には合わないなと感じる人とは無理して付き合わないのが原則であることは、相手が医者であっても同じなのです。
文/和田秀樹 写真/shutterstock
『60歳から女性はもっとやりたい放題』 (扶桑社新書)
和田 秀樹
●第1章 60歳以降が女性の「本当の人生」
「本当の自分」が出しづらい日本/「第2の人生」のスタートに最適な60歳
女性こそ60歳から「やりたい放題」に生きられる/男性ホルモンが増大する更年期以降の女性
やる気が減退する「男性更年期」とは?/本音を言えない相手に嫌われても問題なし
60代は新しい友人をつくりやすい/年齢を気にせず「やりたいこと」を楽しもう
新しいことへの挑戦が脳を若返らせる/おしゃれに定年はない
シニアのプチ整形は決して悪くない/見た目にこだわり続けたほうがいい理由とは?
「推し活」はおしゃれ心も刺激してくれる
●第2章 親や夫のしがらみにとらわれない
「第2の人生」を阻む介護問題/親孝行は親が元気なうちに
「介護施設に入れる=かわいそう」は思い込み/家族を介護するとストレスをためやすい
若い女性ばかりを見るフェミニスト/「親の介護は当たり前」という思い込み
定年後の夫ほどやっかいなものはない/第2の人生でも夫と一緒にいたいか?
二人だけの生活がもたらすストレス/楽しくないなら夫の世話なんてしなくていい
熟年離婚という決断があってもいい/法律は熟年離婚した女性の味方
シニアが働ける場所はいくらでもある/お金以外の目的が持てる仕事を選ぼう
仕事ができなくなっても心配はいらない/生活保護を受けるのは恥でも悪でもない
セーフティネットは手をあげた人だけに機能する/60代以降の女性にはモテ期がやってくる
●第3章 無理に痩せると命が縮む!?
小太りくらいがもっとも長生きできる/太りすぎより痩せすぎのほうがリスクは高い
高齢者の「食べないダイエット」は命を縮める/栄養不足に悲鳴をあげるシニアの体
栄養不足の原因「フードファディズム」とは?/栄養不足解消にコンビニを活用しよう
ラーメンほど体に良いものはない!?/高血糖より危険な低血糖
若い頃の1・2倍のたんぱく質を目標に
●第4章 医者の言いなりにならないで
医者の言うことにもウソがある!?/コレステロールを制限するメリットはない
コレステロール不足で生じるデメリットとは?/がんやうつのリスクまで高まってしまう
悪玉コレステロールが嫌われる理由/多くの医者は「総合的に考える」習慣を持たない
専門分化はコロナ対策にも弊害をもたらした/高齢者はあっという間に薬漬けになる
薬漬け医療に拍車がかかる理由/まったく意味のない日本の健康診断
血圧や血糖値を下げるデメリットとは?/骨粗鬆症の薬でかえって骨折しやすくなる!?
薬の多量摂取で転倒リスクが倍に/薬の相談に乗らない医者は切り捨てよう
●第5章 知らないと怖い「うつ」のリスクとは?
高齢女性を苦しめる「うつ」のリスク/年齢とともに「幸せホルモン」は減少する
セロトニン不足がもたらす不幸な老後/セロトニンの材料を食事で摂ろう
脳内のセロトニン濃度を上げるには?/日光でセロトニンの分泌を活性化
老人性うつの原因はセロトニン不足以外にもある/ストレスをためやすい「不適応思考の癖」とは?
高齢になるほど「二分割思考」になりやすい/落ち込みやすい「かくあるべし思考」
うつの予防には「不適応思考」の修正が大切/「やりたい放題」に生きて、うつと無縁に
●第6章 前頭葉の活性化で「第2の人生」を楽しむ
日本は「不適応思考」の温床/ワイドショーは話半分で聞こう
萎縮した前頭葉を活発に働かせるには?/前頭葉機能は何歳からでも取り戻せる
前頭葉の衰えは意欲の低下につながる/幸せな老後を送るのに大切なのは前頭葉の若さ
毎日の「実験」で前頭葉は活性化する/脳を鍛えるなら脳トレより家事
アウトプット主体で脳を若返らせよう
●第7章 「やりたい放題」生きるのが長寿の秘訣!
「60歳からはやりたい放題」こそが最高の生き方/インチキ道徳になんて縛られなくていい
「健康のため」にする無理な運動は逆効果/60歳を過ぎたら〝今この瞬間〞を楽しむ
老後の不安を失くすには?/老化現象のがんを怖がりすぎない
がんと診断されたときの対応を考えておく/子どもや孫に遺産を遺す必要はない
お金も使いたいときに使う/新しいものには60代のうちに触れておこう
テクノロジーの進化で幸せな老後が待っている/幸せそうに生きるのが高齢者の使命
「『第2の人生』を無理なく楽しく生きる」ための7か条