
投資に興味はあるけれど、どうやって始めていいかわからないから、お世話になっている銀行や有名な証券会社で口座を開いてみようかなと思っている人も多いだろう。だが、個人投資家が大手の銀行や証券会社で口座を持つことは、メリットが少ないという。
書籍『ふつうの会社員が投資の勉強をしてみたら資産が2億円になった話』より一部を抜粋・再構成し、おすすめの2つの証券会社を紹介する。
大手銀行・証券会社で投資を始めてはいけない理由
投資の目的を整理して、生活防衛資金が十分貯まったら、いよいよスタートです。最初にすることは、投資用の証券口座を開設する金融機関を選ぶことです。
皆さんはお金を預金しようとする時、銀行に銀行口座を開設しますよね?
投資も同様です。
銀行口座を選ぶ時は、金利優遇キャンペーン、ATM手数料、近所の店舗の有無を参考にするでしょうが、証券口座は何を参考に選べばいいでしょうか。色々な観点で比較検討できますが、今はSBI証券と楽天証券という二大証券会社のどちらかを利用すれば大丈夫です。
こう書くと「え、その二つだけ!? 銀行でも投資はできると聞くし、昔からある証券会社の方が安心じゃない??」と疑問を持つ投資初心者の方もいることでしょう。詳しく解説します。
まず、昔からある大手証券会社(野村證券、みずほ証券、大和証券、SMBC日興証券)でも当然ながら投資はできます。身近な大手銀行(ゆうちょ銀行、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、りそな銀行)や地方銀行でもできますが、株式投資はできず、購入できるのは投資信託、国債のみになります。
旧来の証券会社や銀行は店舗を構えていますから、ドコモショップで携帯電話の契約をするぐらいの安心感で、相談しながら投資できることをメリットと感じる人は多いかと思います。
しかし、残念ながらリアルの証券会社や銀行で投資商品を購入するのはまったくお勧めできません。なぜなら、お勧めされる投資商品が個人投資家にとって魅力的でないものが多いからです。
新NISAのつみたて投資枠にも非対応
例えば、三菱UFJ銀行での投資信託の取扱件数は現時点(2024年8月)で599件です。うち、オンラインのみで購入できるのは334件なので、実店舗で購入できる投資信託は265件と半分以下です。つまり、店舗を訪問した時点で半分の商品が購入できないわけです。
「銀行で販売されている商品は厳選された良いものでは?」と思うかもしれません。では、実際に銀行の窓口で売れている商品を見てみましょう。次の商品が、本書執筆時点の直近6か月で、三菱UFJ銀行の店頭で最も売れた金融商品TOP5になります。
・MUFGウェルス・インサイト・ファンド(標準型)
・三菱UFJインデックス225オープン
・アライアンス・バーンスタイン
・米国成長株投信Dコース毎月決算型〈為替ヘッジなし〉予想分配金提示型
・MUFGウェルス・インサイト・ファンド(積極型)
・三菱UFJ/マッコーリーグローバル・インフラ債券ファンド〈為替ヘッジなし〉(毎月決算型)(愛称:世界のいしずえ)
この5つすべてで、購入時の手数料が0.5~3%かかります。100万円投資をしたら手数料として5000~3万円を支払う必要があるということです。1年間預けた時の信託報酬は1%程度で、同じく100万円を投資したら手数料として1万円払うことになります。その上、すべての商品が新NISAのつみたて投資枠に非対応です。
購入時の手数料が無料で、信託報酬は0.05775%、新NISAでの投資が可能なオール・カントリーと比較すると、一般人の投資先としてはどれも見劣りする商品です。
窓口で購入できる金融商品が正直イマイチなのは、何も三菱UFJ銀行に限った話ではなく、三井住友銀行やみずほ銀行など他の都市銀行、そして、野村證券やみずほ証券などの旧来型の証券会社でも同様です。
どうしてこのような偏ったランキングになってしまうのでしょうか。
楽天グループの課題
生命保険会社が多くの営業人材を抱えているのと同様に、旧来型の銀行・証券会社には実店舗があり、その人件費を賄う必要があります。ですから、ネット証券より手数料を多めに取らないと利益が出ません。
また、直接会えるわけですから、自社の関連商品を重点的に営業することもできます。一方、ネット証券では人件費を抑えられますし、もし商品ラインナップがイマイチであれば、ワンクリックで他のサイトに逃げられてしまいます。
いずれにしても、大手の証券会社や銀行の事情からすれば、このような販売方法はまったくおかしなことではありません。ただ、個人投資家がその事情を考慮する必要はないですよね。
二大ネット証券であるSBI証券や楽天証券が取り扱っている投資信託の数は、2500銘柄以上と、都市銀行や旧来型の証券会社の2~5倍と多く、そのすべての投資信託で購入時の手数料が無料です。
そして、SBI証券と楽天証券での販売金額ランキングの上位は、1年間の信託報酬が非常に安い商品ばかりです。
ちなみに、ネット証券が倒産し、預けている資産がなくなってしまうのではないかという心配はあるかもしれません。ただ、これも心配無用です。
実は、証券会社には、自社の資産と投資家の資産を別々に分けて管理する義務があり(「顧客資産の分別管理」)、たとえ証券会社が倒産しても資産は確実に戻ってくるようになっています。
万が一、証券会社が義務を怠っても、日本投資者保護基金から1000万円まで補償されることになっています。
SBI証券は親会社のSBIホールディングスが上場していて大手証券に並ぶ規模に成長していますし、楽天証券は株主が楽天グループとみずほ証券です。
どちらも、20年程度の歴史があり、証券口座の開設数は1000万を超え、投資資産の保護の仕組みもありますから、「ネット証券だから不安」という心配は必要ないでしょう。また双方とも、証券口座の開設数や預かり資金の残高数も、競合のネット証券と比べて非常に多く、2023年10月からは国内株式の売買手数料の無料化もスタートさせています。
ただ、楽天証券は楽天グループ全体としての課題があり、最近はポイント還元含めSBI証券にサービスで劣後することが増えてきました。
楽天証券の元気がなくなれば、競合のSBI証券は無理なサービスを提供しなくなるでしょうから、いつまでもこの2社だけを使っていれば〝お得〞かといえば、10年後には変わっている可能性もあります。
後から証券会社を変更したり、複数の証券会社を併用したりすることもできますから、二大ネット証券会社を基本的には利用しつつも、5年、10年単位で有利なネット証券が登場しないか確認してもいいと思います。
写真/shutterstock
※おことわり
この記事で紹介している社会制度・金融商品は、書籍『ふつうの会社員が投資の勉強をしてみたら資産が2億円になった話』が執筆された時点のものです。最新のものではない可能性があることにご注意ください。特に、税制・法律は改正されるものですし、書籍の執筆時点で施行されていない法律・制度は反映していません。必要に応じて、ファイナンシャルプランナー・税理士・弁護士等の専門家に相談することも検討してください。
また、投資のノウハウは、投資をする際の参考になるようにできるだけ丁寧に説明していますが、投資の勧誘や推奨をしているわけではありません。
ふつうの会社員が投資の勉強をしてみたら資産が2億円になった話
斗比主閲子
人気ブロガーによる
地味だけど着実に資産が増えていく
令和のお金大全!
「お金は汚いもの!」だと思っていた著者が
辿り着いた「富裕層になれるお金の方程式」を全公開!
これからの時代を生き抜くための金融リテラシー80
<目次>
はじめに
・私はどのように「資産2億円」を築いたのか
・日本の富裕層は20年で2倍に!なぜそんなに増えたのか
・みんなが幸せになるようなお金の増やし方
第1章 家計簿も付けられなかった私が資産2億円を達成するまで
・「お金の話、大好き!」な私も昔は「お金は汚い」と思っていた
・ブラック労働で気付いた「お金があれば自由になれる!」
・投資を始めて「見える世界」が広がった
・「経済的な自由」を得てストレスフリーな日々に
第2章 「お金を増やす方程式」を実践する方法
・お金を増やす方程式は「(収入-支出)+(貯蓄×利回り)」
・年収が上がる資格&生活を豊かにする資格
・いまの会社で給料を上げる「二つの方法」
・「持ち家VS賃貸論争」のファイナルアンサー
・老後も収入を絶やさないための「リスキリングのすすめ」
・幼児教育は「コスパが良い」
・「もういつ死んでも大丈夫」――私が生命保険を解約した日
・子どもに「メルカリ名人」と揶揄される私のネットフリマ攻略法
・ポイント還元率を最大化させる「カードの使い分け」
・私が「推しの店」ではクレジットカードや電子決済サービスを使わない理由
第3章 投資の仕組みから新NISAまで投資徹底解剖
・「老後2000万円問題」は嘘だった?
・100万円貯まるまで投資をしてはいけない理由
・投資をするのは誰のため?
・インフレ下では「現金より投資」
・株価が下がった時は「ケーキと紅茶」
・新NISA徹底解剖
・iDeCo超解説
第4章 お金が増えていく過程で気になること、教えます
・資産が増えたら生活水準を上げていい?
・なぜ私たちの賃金は株価ほど伸びないのか?
・寄付をすると節税できるのは本当?
・増えたお金、どうやって家族に相続したらいい?
これからの時代を生き抜くための 金融リテラシー80