
「食欲がわかないから、朝ごはんを食べない」「朝ごはん食べるより、ギリギリまで寝ていたい」などといった理由で、朝食を食べないという人は多いだろう。しかし、「朝食」をとらないと、思わぬ健康被害があるというのをご存知だろうか。
『10000人を60年間追跡調査してわかった 健康な人の小さな習慣』 (ダイヤモンド社)より、一部を抜粋・再構成してお届けする。
日本人はインスリンが出にくいタイプが多い
朝食をとる人ととらない人では、1日の総摂取カロリーは前者のほうが多くなりそうです。でも、面白いことに、朝食をとったほうが糖尿病や肥満が少なくなるというエビデンスがあります。朝食をとったほうが、肝機能も改善することがわかっています。
私たちが食事をとると、インスリンが分泌され、血糖値の上昇をほどほどに抑えてくれます。そのときに、一度に食べる量が多ければインスリンもたくさん必要になります。
しかし、日本人はインスリンが出にくいタイプが多く、大量に食べるとインスリンの分泌が間に合わず、糖尿病にかかりやすくなるのです。
朝食を抜けば、昼にドカンと食べることになり、結果的に糖尿病のリスクが増します。
また、JPHCスタディで、朝食を抜くことと脳卒中や虚血性心疾患との関連を調べた研究では、1週間あたりの朝食摂取回数が少ないと脳出血のリスクが高くなることがわかりました。
もちろん、朝食の時間をしっかり確保しているような人は、そうでない人に比べて、そもそも健康意識が高く、普段からバランス良く食べているということもあるでしょうし、3食しっかり食べないと、必要な栄養素がとれないということもあるのかもしれません。
塩分摂取量が多くコレステロールが少ない人は血管がもろく脳出血を起こしやすいので、朝から適切な量のタンパク質などをとったほうがいいでしょう。
朝食には、タンパク質と炭水化物をとると、栄養素的にも腹持ちの点でもいいのではないかと思います。
時間がなくてとにかく手軽に済ませたいという人は、卵かけご飯や納豆ご飯を選んではどうでしょう。
レンジでチンしたご飯(もちろんパックご飯でもかまいません)に生卵や納豆をかけるだけなら、たいした時間は要しません。なお、そのときの醤油は少量垂らす程度にとどめてください。
こうして朝食をとることで、体内リズムがつくれるのも健康に寄与します。
バナナ・ヨーグルト・野菜ジュースも過信は禁物
朝は少しでも寝坊していたいというとき、バナナやヨーグルトなどを食べて家を出るという人が多いのではないでしょうか。
バナナにはカリウムが多く含まれているので、高血圧の人にはとくにおすすめです。糖質量が結構ありますが、朝食ならその後の活動でエネルギーが使われてしまいますから気にしないで大丈夫です。
ヨーグルトはカルシウムの多い乳製品であり、発酵食品でもあるので、やはり朝食におすすめです。
ただし、どちらも完全食ではありません。バナナ1本であっても、ヨーグルト一つであっても、リズムをつけるという点で「なにも口にしないよりはいい」というくらいに考えてください。
野菜ジュースを飲んでいるという人も多いですね。「これ1本に1日分の……」などと書いてあると、それだけで「健康に良さそうだ」と思ってしまいそうです。
しかし、一口に野菜ジュースと言っても成分はさまざまです。宣伝文句を信じ込まず、しっかり自分の目で「なにが入っているのか」を確かめましょう。
さらに、簡単にジュース1本飲んだだけで「自分は健康に留意している」と思ってしまうことが、あまりよろしくないと言っておきましょう。
もし、本当に健康に留意する気持ちがあるなら、自分でスムージーをつくりましょう。砂糖も入れず、塩も入れず、新鮮な野菜をミキサーにかけただけのスムージーなら、繊維質も豊富にとれます。
どうしても空腹なときは無塩ナッツ
前述したように、一度にたくさん食べるのは、糖尿病の原因ともなり健康によくありません。
夕方などに小腹が空いたら、そこで我慢して後からドカ食いするのではなく、おやつを食べましょう。
おやつにいいのが、マグネシウムやカリウムが豊富なナッツです。ただし、塩分の多いものは避け、無塩タイプを選びましょう。
こうしたナッツは、お酒のつまみにも向いています。お酒を飲むと、どうしても尿にマグネシウムやカリウムが排泄されてしまいますが、ナッツでそれを補うことができます。
私がおやつに愛用しているのが、カロリーが低くタンパク質豊富で腹持ちがいいスティックタイプのサラダチキンです。普通サイズのサラダチキンは、おやつにはちょっと大きいので、もっぱらスティックタイプを食べています。飽きないようにいろいろな味を冷蔵庫にキープしてあります。
チョコレートもいいですね。心疾患の予防効果などについて、ポジティブなエビデンスがいくつも出ています。ただし、ホワイトチョコレートにはエビデンスがありません。
というのも、ポリフェノールの抗酸化作用がいい働きをしているものと思われ、カカオ成分が高いチョコレートほど効果が期待できるのです。
具体的には、カカオ成分が70パーセント以上あるようなチョコレートを、1日に10グラムくらい食べることが推奨されます。これで、ポリフェノールが250ミリグラムほどとれます。
チョコレートは乳脂肪分も含むので、あまり量を食べるとカロリーをとりすぎてしまいます。あくまで、ほどほどをキープしましょう。
文/大平哲也 サムネイル/Shutterstock
『10000人を60年間追跡調査してわかった 健康な人の小さな習慣』(ダイヤモンド社)
大平哲也 (著)
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1963年から10,000人を60年間追跡調査し続けたから
ついにわかった、日本人の健康「本当の最適解」
死ぬまでずっと健康な人は、
無意識のうちに「健康になる習慣」を実践していた!?
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同じ研究を今から始めると、2085年までかかります。
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●本書の最大の魅力3点
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本書のノウハウは、「人間は弱い」ことを前提にして、「それでもできるようになるためにはどうすればいいか」に焦点を当てた内容。ありがちな新情報の提供のみに留まらず、そのノウハウの実践まで踏み込んで解説しています。60年間の歴史に基づいているからこそ、納得感と説得力があります。