
ロサンゼルスドジャース・大谷翔平投手のCM起用が相次ぎ、CMタレントとしての存在感が高まっている。CMにおける大谷の人気はいつ頃から高まり、どのような層に支持されているか。
CM好感度調査から見る大谷の国民的人気
CMタレントとしての価値は、契約社数や放送回数だけで図ることが難しい。CMで訴求したい商品やサービスのターゲットに影響力があるか、つまりどのような層に支持されているのかも重要だ。
CM総研では、3000名を対象に「好きなCM、印象に残ったCM」を調査。好感を持った理由を15項目から選び、さらに商品・サービスについて「ためしてみたい」「ためしたくはない」「愛用している」「愛用をやめている」を聞いている。
その結果を数値化すると、大谷の「CM好感度」は、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本の優勝に貢献した2023年から上昇。今年は、1月から4月末までの4か月だけですでに昨年、一昨年の数値を超えている。
だが、CM総研の代表である関根心太郎氏によると、大谷が出演するCMの支持層は、この3年で大きく変化したという。
「一般的に、野球選手の支持が高いのは男性。特に40代以上が高い数値になる傾向が強いです。これに加えて、大谷さんの好感度は2023年、20代以上の女性でも高くなりました。これは、2023年3月に、東京でWBCが開催された影響が大きいでしょう。大会期間中に次々と大谷さんが出演するCMが放送され、野球ファン以外の生活者にも支持が拡大しました」(関根氏、以下同)
化粧品メーカーのコーセーが、主に女性をターゲットとする「雪肌精 UVエッセンスジェル」や「コスメデコルテ」ブランドのCMにて、2023年から大谷を起用しているのも納得だろう。
要因は『リアルタイム視聴』
しかし、2024年は女性の支持が一段落する。この要因を、関根氏は次のように分析する。
「2024年は、『50/50』『本塁打王』『MVP』など記録ずくめのシーズンで、CM起用企業数の増加とともにCM放送回数は最高値を記録しました。ですが、CM好感度の面で見ると、2023年と比べて大きな山は観測できませんでした。これはWBCとは違ってメジャーリーグには『リアルタイム視聴』という環境がなかったためと推測されます」
今年は、3月に読売ジャイアンツなどとの親善試合と、シカゴ・カブスとの開幕戦が東京ドームにて開催。この時期に大谷が出演する新作CMが大量に放送されたことで、再び女性からのCM好感度の上昇につながったという。
また、2023年と今年では大きな違いがある。それは子ども世代での好感度の上昇だ。
「今年は、男の子を中心とするティーンなど、年齢や性別を問わず、幅広く好感度が高まっています。今や絶対的な『国民的人気を得た』と言っていいと思います」
大谷自身も今年4月に第一子となる長女を授かったが、これからますます子ども世代や親世代から支持を得ていくことが想像される。これまでリーチのかかることが少なかった主婦層や女性層へのアプローチも起用企業を見るとわかるだろう。
歴代アスリートでもTOP5入り!
振り返ってみると、これまでも国民的な人気を集めたアスリートは多数いた。歴代の現役アスリートのCMタレント好感度ランキングの結果について関根氏はこう語る。
「これまでに、1年間のCMタレント好感度が最も高い数値となったのは、フィギュアスケーターの荒川静香さんです(2006年度)。2位と3位には、2024年度と2023年度の大谷さんがランクイン。プロゴルファーの石川遼さんが4位(2010年度)、プロ野球選手のイチローさんが5位(2009年度)と続きます」
一流アスリートが名を連ねるが、彼らのCM起用が多かった要因はこうだ。
「2006年に開催されたトリノ五輪にて、荒川さんは金メダルを獲得。”イナバウワー”旋風が巻き起こり、起用社数は4社ながら高い好感度を得ました。
10年度の石川さんは、実に20社のCMに出演し、年間の放送回数は1万回を超えています。『ハニカミ王子』として話題になってからは多くのファンが彼を応援していましたね。多くの企業が彼を起用し、まさにCMにおいて大ブレイクの年でした。
また、2009年のイチローさんは、WBC決勝にて劇的な決勝タイムリーを放ち、大きな注目を集めました。いずれのアスリートも日本中の注目を集めた人物ですね」
大谷の起用数が多いのも彼の驚異的な活躍を見れば納得ができるだろう。2025年は1月からの4か月間で、すでに2023年・2024年を上回る勢いを見せている。
「このままのペースでいけば、荒川静香さんを超えて歴代1位となる可能性は高そうですね」
続々と新作が放送される大谷の出演するCM。
取材・文/羽田健治