
埼玉県三郷市中央の市道で5月14日夕方、下校中の小学児童10人の列に車が突っ込み6年生の男児4人に重軽傷を負わせて逃走する事件があった。ひき逃げ事件として捜査していた県警は18日、運転者の同市早稲田の解体工・鄧洪鵬容疑者(42)を自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致傷)と道交法違反(ひき逃げ)容疑で、同乗者の同市新和4、会社員・王洪利容疑者(25)を道交法違反(飲酒運転同乗)の疑いで逮捕した。
飲酒運転の発覚を恐れた両容疑者は救護措置を怠って逃走か
事件は14日午後4時5分ごろ、三郷市中央5の市道で発生、けがをした6年男児のうち1人が右足骨折の重傷、残り3人が軽傷を負った。現場から逃走したのは1000万相当の高級SUVタイプの乗用車で、翌15日に現場から約2キロ離れた地点で見つかった。
県警は防犯カメラや現場付近を走行していた車のドライブレコーダーの映像を分析、車に乗っていた両容疑者が事件前に市内の飲食店で数時間にわたり飲酒していた事実を突き止めた。
王容疑者は鄧容疑者が酒気帯び状態であることを知ったうえで自宅まで送ることを依頼したとみられる。
事件現場はJR武蔵野線三郷駅から車で5分ほどの閑静な住宅街。新しい洋風の一軒家が多く建ち並び、各家庭にマイカー用の駐車場も完備されているが、周辺にはガードレールなどの設備はない。車も人もそこそこ多いが、事故を防ぐためのハード面の整備は遅れている印象を受けた。
実際、押収されたSUV車の車幅では対向車とすれ違うことは難しく、突然子供が飛び出してきたらぶつかってしまうくらいの狭い道だった。ドライブレコーダー映像には、接触後に車から降りてきた鄧容疑者とみられる男が子供たちに手を合わせて謝意を伝える様子も記録されており、飲酒運転の発覚を恐れた両容疑者は救護措置を怠って逃走したとみられる。
近くに住む女性はこう語った。
「ここら辺で大きな事故なんかは今まで聞いたこともありませんでした。ニュースを見て、住宅街の側道には歩道がないことを改めて知りましたし、車も多いので、歩く時も運転する時も気をつけないといけないと思いました」
「相手が大丈夫と言っていたのでその場から離れただけだ」
SUV車が発見されたのは、事件現場から約2キロ南の住宅街にある王容疑者の自宅である3階建ての社員寮だ。
「この住宅は5年ほど前にそれまでの入居者が出られてから寮として使われ始めたんです。アジア系の社長さんが菓子折りを持って挨拶に来られて、真面目な人だなあと思いました。
住人の方々も騒いだり大音量で音楽をかけたりすることもなく、すれ違った時には挨拶をしてくれて、トラブルを起こすような印象は全くありませんでした。あの車(事件で押収されたSUV車)はいつ頃からか、たまに停まっているのをみましたし、事件の翌朝にも停まっていましたね。
住人の移動手段は自転車か徒歩だと思うのですが、過去にも違うSUV車や他にも高級そうな車が停まっていたことがあったので、『また社長が車を乗り換えたのかな』なんて思っていました。事件翌日に警察とメディアがたくさん来ていて、大きなレッカーで車が持って行かれたので驚きましたね」
この男性が言う「アジア系の社長さん」は鄧容疑者とは別人とみられ、押収された高級SUV車は鄧容疑者名義だった。
「鄧容疑者は会社に出入りはしていたもの従業員ではなく“下請け”の一人で、自宅も別。家庭もあり、自宅周辺では特徴のある外見で、珍しい車を乗っていたことから知られた存在でした。家族もいて、事故の際は妻に『子どもがぶつかってきた』と説明していたようです」(社会部記者)
鄧容疑者は18日午前になって女性に付き添われて県警吉川署に出頭、逮捕後の調べに「ぶつかったことは間違いないが、相手が大丈夫と言っていたのでその場から離れただけだ」とひき逃げ容疑については否認している。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班