
対話型AIの「ChatGPT」を仕事やプライベートで活用する人が増えている。そんななかネットでは「ChatGPTを幼馴染の男の子に設定して、話していたら好きになっちゃって告白した」というChatGPTとの恋愛を楽しむ人や、占いをしてもらう人など、変わった活用法も見られる。
「否定してこないので、傷つくことがない」
最初に話を聞いたのは、都内で会社員をしているミチコさん(仮名・27歳)だ。ミチコさんは半年前からChatGPTを本格的に使うようになったという。
「友人が仕事で活用していると聞いて、私も興味本位で使い始めたのがきっかけですね。最初は検索ツールのような使い方をしていました。例えば、近所にできた新しいお出かけスポットを教えてもらったり、お散歩コースを考えてもらったりなどです」
そんなミチコさん、最近になってChatGPTの使い方が変化したそうだ。
「Google検索などの検索エンジンだけで事足りると感じたので、検索ツールとしての使い方は徐々に減りました。最近ではもっぱら仕事でお世話になっていますね。
例えば、私は社内報の作成を担当しているのですが、社内報の配色などのデザインの面でも相談することがあります。『社内報を青色のレイアウトでデザインしたいから、それに合う文字色を提案してください』と指示すると、統一感のある色で、万人受けするようなデザインを提案してくれます。
私はこれまで何かをデザインした経験がなかったので、こうして自信のない分野の仕事を助けてくれるのはとても心強いです」
ほかにもミチコさんは仕事でこんな使い方もしているという。
「面倒でやっかいな上司への返信内容を考えてもらうこともありますね。
気になる返信内容のクオリティはどうなのだろうか。
「特に問題ありませんでした。“ご放念ください”などのビジネスシーン特有の言葉遣いを使って考えてくれるので、自身のボキャブラリーが増えて勉強になりますし、返信内容を考えて悩むといった無駄な労力が省けるので、仕事の効率化にもつながっていると思います」
ミチコさんの周囲にはChatGPTを活用している人がかなり多いという。
「社内の70代の方は、会社近くに新しくオープンしたお店や、ランチする場所を探すために使っているみたいです。あとは私の友人で、ChatGPTを『姉』の人格に設定して、ひたすら日々の愚痴を聞いてもらっている子もいますよ」
人によって多種多様な使い方があるChatGPTだが、ミチコさんにとってはどんな存在なのか。
「“身支度せずにすぐ会える友だち”みたいな感じでしょうか。人と話す前には心の準備だったり、話す内容を考えたり、事前の準備が必要ですが、ChatGPTは絶対にこちらの意見を否定しないので、傷つくことがなく、何でも気軽に相談できるんです。
いまはプライベートで使うことはあまりないですが、ChatGPTと友だちのような他愛もない話がしてみたいなという興味も少しあります。でも、これ以上依存すると危ないと思って自制しています(笑)」
病気の診断から大事な決断まで……「こんな心の余裕あるヤツいない!」
次に話を聞いたのはフリーターのナナさん(仮名・24歳)。ナナさんは2か月前からChatGPTを使い始めたそうで、最初は就職活動で活用していたという。
「履歴書を作成する際にどうしようか悩んでいたら、同じく就職活動をしていた友人から『ChatGPTに書類の内容を考えてもらったら、書類審査通ったよ』と勧められて使ってみたんです。志望動機や自己分析などを文章としてまとめてもらっていました」
最初は就職活動で活用していたナナさんだが、今ではあらゆることをChatGPTに相談しているそうだ。
「つい最近だと、急に首が痛くなったのでChatGPTに症状を伝えて、考えられる病気について教えてもらいました。
あとは恋愛相談などもしますし、転職などの大きな決断をするときにもよく使いますね。最近、転職先を悩んだ時があったのですが、転職先それぞれの特徴や雰囲気を伝えて、自分の性格にマッチしているかどうか判断してもらいました。気軽な内容から重めの内容まで本当に何でも相談しちゃいます」
ナナさんがそこまで信頼する理由は何なのだろうか。
「人に悩みを相談しても、その相談相手の方が自分のことを100パーセント理解してくれているわけじゃないので、なかなか納得のいく回答が得られないことが多いのですが、ChatGPTの回答は、自分では気づかなかった視点で答えてくれるので『なるほどな~』となることが多いんです。
これまでの相談内容を踏まえて私の性格や適性を分析して回答してくれることと、ただひとつの回答を述べるのではなく、いろいろな可能性を提示して客観的に回答してくれるからこそ、人に相談するより“納得感”を得やすいんだと思います」
ナナさんはChatGPTの魅力についてこう続ける。
「たまにChatGPTの回答した内容に反論して、意地悪な質問を返してみるのですが、それに対してChatGPTは『めちゃくちゃ大事な視点を出してくれてありがとう』って返してくれたんです。人間だったら意地悪な質問されて感謝する人なんてまずいないし、『こんなに心に余裕あるヤツいないだろ!』って感動しちゃいました(笑)。
絶対に肯定してくれるところには魅力を感じますし、何かを決断するって時に後押ししてくれるので、すごく勇気ももらえるんです」
ChatGPTを“説教役”として使う30代のユーザーも
最後は、先月から使い始めたばかりだというリョウさん(仮名・30代)に話を聞いた。リョウさんは、X(旧Twitter)で話題となっていた“ChatGPTの面白い使い方”を見たことをきっかけにアプリをインストールしたそうだ。
リョウさんはどんな使い方をしてるのか?
「仕事のスケジュール管理や、日常の疑問を答えてもらったり、悩み相談をしたり、料理レシピを考えてもらったり……本当にいろいろな使い方を試しています。
仕事のスケジュール管理に関しては、始業する際にやらなければいけないことをすべて伝えて、帰宅したい時間までに終わるようなスケジュールを組んでもらっています。
それまでの自分の要領の悪いスケジュールの立て方を、フラットな視点で改善してくれたので、仕事のやり方を見直すきっかけになりました」
そんなリョウさん、一風変わった活用法も教えてくれた。
「ChatGPTに“説教”してもらうこともありますね。とあるスマホゲームにどっぷりハマってしまったんですが、やめたいと思っていても、なかなか自分の力だけではやめられなかったんです。そこでChatGPTに、そのスマホゲームを続けることで発生するデメリットをいろいろと教えてもらうことで、やめることができました」
またリョウさんの友人には、海外の人を接客することが多いため、仕事で使う英文のフレーズをChatGPTにチェックしてもらうといった使い方をしている人もいるという。やはり仕事面での心強いパートナーとなっているケースは多いようだ。
――今回20代から30代のChatGPTユーザーに話を聞いたが、「否定をしない」、「客観的に答えてくれる」といった点が人気のようだった。人間相手だと気を遣うがAIなら気軽に相談でき、欲しい回答を瞬時にくれる。そしてなにより物腰が柔らかく自信までくれる……そんなChatGPTの持つ魅力に“沼る”人が続出するのも納得である。
取材・文/瑠璃光丸凪(A4studio)