「どうしてみんなと違うの?」特別支援学級の名札の色分け問題に悲しむ子どもたち…「差別を助長しない?」保護者も困惑、クラス名にも潜む分離教育の実態
「どうしてみんなと違うの?」特別支援学級の名札の色分け問題に悲しむ子どもたち…「差別を助長しない?」保護者も困惑、クラス名にも潜む分離教育の実態

発達障がいや情緒障がいなどを持つ子どもたちの自立を目指し、困難を改善・克服するための一人一人の状況に応じた指導を行なう特別支援学級(以下、支援級)。しかし、いま、小・中学校に設置された一部の支援級の取り組みが物議をかもしている。

「クラスごとに名札の色分け」複雑な心境の保護者も

今年5月、支援級に通う子どもを持つ複数の保護者からこんな声が寄せられた。

「この4月、埼玉県内にある小学校の支援級に息子が入学しました。驚いたことに、通常学級(以下、通常級)と名札の色が違うんです。『どうしてみんなと違う色をつけないといけないの?』と毎日息子が尋ねてきます。『教室が違うから』と伝えても納得せず、学校にも聞いてみましたが『クラスで色を分けています』と言われ……。

でも、学校によっては、支援級への入学者が一人の年度もあります。そうなれば校内でその色の名札をつけているのはひとりだけになる。“悪目立ち”しないか、いじめに発展しないかと心配です」

取材を進めると、埼玉県某市では入学したばかりの1年生は“分かりやすい”ように、ほとんどの学校でクラスごとに名札の色を変えていることがわかった。

たとえば、1年1組は赤、2組は黄色、支援級の新1年生はピンク色というような色分けで、2年生に進級後は全員が同じ色の名札をつける。

実際にこの小学校の支援級に通う子どもや保護者はどのように感じているのか。Yさんに話を聞くことができた。

「幸いにも、うちの子はそこまで気にしていないのですが、色分けされることで『差別を助長する』と嫌がっている保護者もいます。でも、学校では数年前からの取り組みで、導入時には保護者に確認したらしく『嫌です』とは言いづらい。

子どもの特性を個性として受け入れている親だけではなく、まだ複雑な気持ちを抱えて支援級に入級させている保護者もいます。色分けは、そういう保護者の気持ちを踏みにじる行為と感じ、必ずしもしないといけないの?という疑問はあります」

実際に“色分け”を行なっている小学校で教頭を務めるM氏に色分けの意図を聞いた。

「各クラスにカラーを設置し、児童はそのクラスカラーと同じ色の名札を装着しています。それにより、名札と同じ色の教室に入るよう指導ができるなど、入学して間もない児童のスムーズな学校生活につなげることができます。

ですが、私の勤務する小学校は新1年生の通常級が1クラスしかなく、支援級に入学した数名が『自分だけ色が違う』と感じている可能性はあるかもしれません」

こうした声を行政はどう受け止めているのか。同市の教育委員会に聞いた。

「名札の色分けをしている学校はありますが、市の共通ルールではありません。色分けについては、各小学校の判断にお任せをしているのが現状です。

実際に支援級の名札の色を変えている小学校からは、支援級在籍の児童であることがひと目でわかり、支援の状況や対応などの情報が共有をしやすい利点があると聞いています」

埼玉県に限らず、関東には名札のほかにも、上履きや遠征時に装着するバンダナ、保護者が学校行事に参加する際のネームプレートの色が分けられる学校もあるという。

なぜ支援学級のクラス名は「ひまわり、なかよし、あおぞら」なのか

寄せられた保護者の声のなかには、全国各地で長らく用いられてきた“クラスの名前”に疑問を投げかけるものもあった。

「どうしてボクだけ“ひまわり組”なの? 数字のクラスじゃないのはなんで?」

発達障害を持つHさんの子どもは、今年4月、東京都内にある小学校の支援級に入学した。入学式が終わった帰り道、最初に尋ねてきたのがクラスのネーミングについてだった。

そして数日後、前年度まで通っていた幼稚園のお友達に「お前だけ花の名前のクラスで幼稚園のままじゃん」と指摘されたことを涙ながらに口にしたという。

「学校は、分かりやすいように花の名前にしているようですが、子どもからすれば“自分は他の子とは違う”と差別されていると感じたようです。本人はもちろん、見ている私たち親も悲しい」(前出・Hさん)

通常級が3組までの学校で、ひとつ空けた5組を支援級のクラスにする学校もあるが、ほとんどが「ひまわり、なかよし、おおぞら」など平仮名のクラスだ。

「日本は、差別しない教育を推し進めているはずなのに、現実は差別が色濃くなっているような気がしています。まずは、クラスの名前から見直してもらいたい。学校に伝えても変わらないし、どこに伝えればいいのかと日々悶々と悩んでいます……」(前出・保護者Hさん)

2012年、文部科学省は、海外でのインクルーシブ教育(障がい者を差別しない教育)にならい、『共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システムの構築のための特別支援教育の推進』において、「障がいのある子どももない子どももできる限り同じ場で共に学ぶ」などの方向性を示している。〈共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)〉

しかし、2022年には国連から日本へ「分離教育をやめるように」と勧告が出された。それから3年……現実の教育現場にその動きが浸透しているといえるのだろうか。

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取材・文/山田千穂 集英社オンライン編集部ニュース班 サムネイル/PhotoAC

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