ガソリン減税、何が何でもやらない自民党に国民が絶望…野党も「頑張った感」だけ演出…いつまでこの茶番を見せられるのか
ガソリン減税、何が何でもやらない自民党に国民が絶望…野党も「頑張った感」だけ演出…いつまでこの茶番を見せられるのか

ガソリン価格高騰が国民生活を圧迫する中、野党7党が提出したガソリン暫定税率の廃止を求める法案は与党による審議拒否、そして史上初の衆議院財政金融委員会委員長解任という異例の展開を見せ、最終的に参議院で廃案となった。この一連の動きに対し、早稲田大学招聘研究員で国際政治アナリストの渡瀬裕哉氏は「国会議員は国民を舐めている」と憤る。

与党だけでなく、野党もまた、国民の期待を裏切る茶番を演じたというのだ。同氏がこのガソリン税を巡る国会の裏側を徹底解説する。 

ガソリン減税、与党だけでなく野党も「頑張った感」を演出 

野党7党が国会に提出したガソリンの暫定税率廃止を求める法案は、同法案の審議入りを拒否していた与党の衆議院財政金融委員会委員長が史上初の解任に追い込まれた。その後、法案自体は衆議院で可決したものの、参議院において与党反対で審議入りすらせずに廃案となった。 

筆者の感想は「国会議員は国民を舐めている」というものだった。ただし、国民を舐めているのは「与党」だけでなく「野党」も同じだ。

政治は日程(スケジュール)である。特に日本のように通年国会ではなく「会期末」がある国会運営の仕組みの場合、会期末ギリギリに行われる対決法案の審議は茶番であることが通例だ。

与党としては予算審議や法案審査などで野党に国会日程調整を協力してもらうために調整を行う。その際、何としても通したい法案は会期末ギリギリではなく法案審議日程を先に持ってくるように促す。

通常の場合、法案は与党賛成多数で通ってしまうため、野党側としては、メディアにアピールできる対決法案を会期末ギリギリに持ってくる与党とスケジュールで妥協する。

したがって、会期末になると与党による強行採決が実行されて、野党が内閣不信任決議を出して否決される茶番が行われる。この茶番がメディアで喧伝されることで、与党だけでなく野党も「頑張った感」を演出されることになる。

平たく言うと、日本の国会とはそういうものだ。

もっと前から審議することはいくらでも可能だった 

国会議員たちも自分たちが何をやっているかは分かっているため、最近では首相を始めとして支離滅裂な答弁を繰り返し続けて、何事も無かったかのように審議時間だけが消費されている。

各委員会の委員長もだらけ切っていて、国会質疑を小馬鹿にしたような政府答弁にまともに注意することもなく、立法府としての矜持すら欠片も感じられない議会運営をしている。議会制民主主義の堕落が極まった状態だ。

そのような前提を踏まえて、今回のガソリン税暫定税率廃止法案の顛末を見てみよう。

現在の衆議院議席構成は少数与党である。したがって、野党が共同で法案を提出することが出来れば、今回の暫定税率廃止法案は「いつでも」「十分な」審議時間を取ることができた。

しかし、野党は同法案についてお互いに協力することを延々と拒み続けた上、実際に国会に法案提出したのは6月11日であった。しかも、7月1日からの暫定税率を廃止するというトンデモ日程の法案内容だ。

6月22日に通常国会が会期末を迎える見通しの中、衆議院で法案を野党賛成多数で通した上で、参議院で審議した上で与党反対多数で否決、その後の衆議院で再審議した上で云々、という国会プロセスを考えると、この法案提出のスケジュールでは同法案が十分に審議されることも、まして成立することもあり得ないことは明白だった。

最悪なのは立憲民主党と国民民主党の振る舞い 

野党が行ったことは最初から成立させる覚悟が全くない「ためにする法案提出」であり、暫定税率廃止を実現することを望んだ国民に対する裏切りといえる。

ひょっとしたら野党各党は暫定税率廃止に反対する財務省と結託して、野党間での暫定税率に対する内輪揉めもワザと継続し、いたずらに会期末まで共同法案提出を見送ってきたのはないか、とすら勘ぐってしまう。 

特に最悪なのは立憲民主党と国民民主党の旧民主党2党の振る舞いである。

立憲民主党の野田代表は言わずと知れた財務省の走狗であり、減税に関しては常に懐疑的なスタンスを示してきた人物だ。

旧民主党時代には税金に巣食うシロアリを退治するという「シロアリ演説」で名を馳せたが、今や野田氏自身が増税論者としてシロアリ化している。

その野田首相は暫定税率廃止のドタバタの陰に隠れて、党内の一部にあった内閣不信任決議を提出するべきだという声を実質的に封じ込めることに成功した。

「絶対に法案が成立しないこと」は当然に知っている 

国民民主党は昨年末に与党から何の役にも立たない「暫定税率廃止」の空手形をゲットし、それを金科玉条として掲げて与党を批判してきた。しかし、与党側がそんなものを何ら意に介していないことは明らかだ。

なぜなら、その空手形には「暫定税率廃止予定日」が一切、記載されていなかったからだ。ガキの使いよろしく、本当に酷い交渉結果であった。本来であれば、国民民主党こそが早々に会期末の内閣不信任決議の提出主体となるべきであった。

今回の暫定税率廃止法案の野党7党提出は、旧民主党2党が主導し、他の野党に呼びかけて成立したものだ。旧民主党2党は「通常国会の冒頭から暫定税率廃止法案を共同提出」し、世論を盛り上げることで日本維新の会に圧力を加えて、彼らを早々に暫定税率廃止の戦列に参加させるべきであった。

だが、旧民主党2党のベテラン国会議員たちがとった行動は違った。彼らはこのタイミングで提出したところで「絶対に法案が成立しないこと」は当然、わかっている。

それにも関わらず、国会会期末まで共同提出の働き掛けをサボってきたのは、今回の茶番は内閣不信任決議をせずに済ませるために別の見せ場を作ることを狙ったからであろう。

与野党の茶番に飽き飽きしている 

このままでは、参議院議員選挙後、野党は衆議院少数与党との間で茶番を繰り返し、時には空手形を掴まされ、時には年金流用などの悪政に手を貸し、与党から餌を貰って何かをやったフリをする政治が繰り返すだろう。

では、日本国民はこの腐りきった国会の有様にどのように対処したら良いのだろうか。モノが分かった有権者は暫定税率に関する与野党の茶番に飽き飽きしている。したがって、今のところ、参議院議員選挙で与党が過半数割れするような雰囲気は存在していない。

そのため、野党勢力の中で、国会の茶番芸に通じた旧態依然とした野党ではなく、本気で減税を求める野党勢力の伸長が必要である。与党は野党が真剣に取り組まない限り、「減税」に関してゼロ回答を変える気はない。

今度の参議院議員選挙は「野党」に新しい風をどのように吹かせるのか、そして国民のために本当に働く議員を作れるのかが焦点だと言えよう。

文/渡瀬裕哉

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