「タバコの吸い殻を首元に…」「かんざしも盗まれた」元舞妓が明かす迷惑外国人観光客たち…「盗撮も日常茶飯事」“舞妓ハント”の実態
「タバコの吸い殻を首元に…」「かんざしも盗まれた」元舞妓が明かす迷惑外国人観光客たち…「盗撮も日常茶飯事」“舞妓ハント”の実態

街を歩けばカメラを向けられ、着物を引っ張られ、装飾品を盗まれることすらある……。16歳の頃、京都・花街で舞妓として過ごした元舞妓・桐貴清羽(きりたか・きよは)さん(25歳)。

6月5日、京都・花街の舞妓たちに対する未成年飲酒や性行為強要、賃金未払いなどが横行しているとして記者会見を開き、実態調査や改善を求めて訴えたことでも注目を集めている。そんな彼女が外国人観光客の急増によって深刻化する“舞妓ハント”の実態を明かす。 

ほんの数分歩いただけでも被害に

わずか16歳にして親元を離れ、京都・花街で舞妓として過ごした日々。その中で、「外国人観光客との接点も少なくなかった」と語るのは、元舞妓の桐貴清羽(きりたか・きよは)さん。

京都・花街の舞妓たちに対する未成年飲酒や性行為強要、賃金未払いなどが横行しているとして、6月5日、東京・永田町で記者会見を開き、実態調査や改善を求めて訴えた桐貴さん。

今回のインタビュー取材で、桐貴さんは外国人観光客が増加する花街のリアルを明かした。

――近年、SNS等の影響もあり、舞妓さんを盗撮する外国人観光客が増加しているとニュースになっていましたが、当時から街中でのトラブルはありましたか?

桐貴清羽さん(以下、同) 私が現役の頃も盗撮されることは日常茶飯事でしたよ。急いでいるのに外国人観光客の方に道をふさがれて通れなかったり、追いかけ回されたりすることもよくありましたね。そのせいで遅刻してしまっても、怒られるのはもちろん私たち。

私が舞妓をしていた2015年から16年にかけては、ちょうどインバウンドブームが始まって、外国人観光客が一気に増えた時期だったんです。

現役の舞妓さんたちからも、同じような被害に遭っているという話をよく聞きます。「コロナ禍は人が少なくて快適だったけど、すっかりもとに戻った」と話す舞妓さんもいますね。

ひどいときは袖をつかまれて、着物が破れたこともあります。

高価なかんざしを後ろから抜き取られたこともありましたね。そのことを報告しても、「あんたがしっかりしてへんかったからや!」と怒られるばかりでした。

外国人観光客に後ろから着物の首元にタバコの吸い殻を入れられて、泣きながら帰ってきた同期の舞妓もいました。

そういったことをする方は、日本人の観光客よりも圧倒的に外国人観光客の方が多いと聞きます。

――京都市を訪れる外国人観光客は年々増え、昨年は初めて1,000万人を超えたとのこと。今後ますます増えることを考えると、本当に心配です。

実際、ほんの数分歩いただけでも被害に遭うことがあるので、できるだけ外を歩かず、タクシーで移動するようにしていました。それでも、タクシーの窓ガラスにカメラを押し付けて、写真や動画を撮られることもあって……。逃げ場がないと感じている舞妓さんは今でも多くいます。

――インバウンド増加の影響で花街の雰囲気は変わりましたか? 

花街の中に普通の飲食店が増えてきていて、外国人の方がお茶屋さんに間違えて入ってきちゃうという話をよく聞きますよ。

外国人客からのチップ事情は…… 

――お座敷で外国人の接待をすることもあるんですか?

もちろんお座敷に外国人のお客様が来られたり、イベントで踊りを披露する場に呼ばれたりすることもあります。

――外国人とのお座敷はどんな雰囲気なんですか?

私、実はお座敷での外国人の方への接待は好きだったんです。

街で迷惑行為をする外国人観光客とは違って、基本的にみなさんお上品で、気を遣ってくれました。

今でも花街には「一見さんお断り」と言って、初めてお茶屋を利用するお客様は、お座敷経験のある方と一緒でないと利用できない決まりになっているんです。

お座敷に来られる外国人のお客様は、政治家や芸能関係者、会社役員などの富裕層ばかりで、舞妓に対してリスペクトしてくれる方が多かったです。「あなたたちはこの道のプロなんでしょう?」って対等に話してくれたり、日本文化を心から楽しもうとしてくれていたり……。

――お座敷で外国のお客さんとのコミュニケーションはどうするんですか?

ノリです(笑)。あとは、通訳の方がつくこともあります。でも、通訳の方がいてもちゃんと伝わっているのかわからないときもありましたね。感覚でみんなワイワイ楽しんでくださっている感じでした(笑)。

――お座敷でチップをもらうこともあるんですか?

外国人のお客様はチップ文化の国の方が多かったので、そのまま現金で渡されました。日本人のお客様はポチ袋に入れてそっと渡す方が多かったので、文化の違いを感じて、楽しかったですね。

――外国人のお客さんからもらうチップの金額は?

だいたい1人1万円くらいでしたね。多いときで1人のお客様から10万円くらいもらうこともありました。

でも、お座敷でいただいたお金は、お茶屋さんと置屋さんにお渡しする決まりになっています。

――外国人のお客さんから枕の誘いを受けることもあるんですか?

私の知る限りで、外国人のお客様からそういった誘いを受けたという話は聞かないです。舞妓の姿をしていると、外国人のお客様はそういう発想にはなかなかならないんだと思います。

――今後、京都の街はどうなっていくべきだと思いますか?

京都って、観光で支えられている部分も大きいと思うんです。だからこそ、これからはインバウンドを受け入れる体制をちゃんと整えていくことが必要だと感じています。例えば、外国人観光客向けのイベントをもっと増やすことで、街中での盗撮など迷惑行為も減るんじゃないかなと。

そもそも、『京・花街の文化』は京都市が選定する“京都をつなぐ無形文化遺産”に指定されている大切な伝統です。だったら、閉じた場所で守るだけじゃなくて、正しい形で広く見てもらう努力があってもいい。文化を守るためにはちゃんと伝えて、理解してもらうことも大事だと思います。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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