〈名古屋の“頂きオヤジ”求刑8年〉「俺が社長役でオマエが秘書」1億円ダマし取られた女性も…共犯の男が告白「江尻被告が怖かったし、絶対捕まらないって…」
〈名古屋の“頂きオヤジ”求刑8年〉「俺が社長役でオマエが秘書」1億円ダマし取られた女性も…共犯の男が告白「江尻被告が怖かったし、絶対捕まらないって…」

マッチングアプリなどで出会った女性に自身が会社経営者だとウソをつき、次々と金を 騙し取り、昨年10月に詐欺容疑などで逮捕された“頂きオヤジ”こと江尻舟一被告(51)と”秘書役“の武田佑氣被告(33)。二人の公判は今年の1月20日から名古屋地裁にて行なわれ、6月25日に結審、検察は江尻被告に懲役8年、武田被告に懲役7年を求刑した。

「集英社オンライン」は今月初めに、武田被告への面会取材を行なっていた。 

面会室に現れた武田被告は……

昨年10月に発覚した、被害総額3億円にも及ぶ結婚詐欺事件。主犯は自らを経営者と偽った“頂きオヤジ”こと江尻被告で、武田被告は江尻被告の秘書役として女性らの前に度々現れ、LINEなどで女性たちと密に連絡を取り合う役だった。 

武田被告は江尻被告を「社長」、女性らを「姫」と日ごろから呼んでおり、江尻被告が女性らから金銭を騙し取る小芝居に加担したり、詐欺を疑う女性の対応もしたりしていたという。 

武田被告は現在、名古屋拘置所に勾留されている。面会室に現れた武田被告は顔色も良く、穏やかな様子で記者のインタビューに応じた。

――江尻被告と結婚詐欺を始めるきっかけは何だったのでしょうか。

江尻被告とは出身が同じ長野なんです。まず江尻被告の息子さんと自分が知り合いました。その後、息子さんを通し江尻被告を紹介されました。高卒で土木会社に就職しましたが、雪が降ると仕事がなくなり収入が安定しなかったんです。そんな時に江尻被告から「神奈川で一緒に仕事をしよう」と誘われ、神奈川に移住しました。でも仕事らしい仕事がなく、僕はいったん、長野に帰ったんです。

その後、再び江尻被告の息子さんや江尻被告と再会し、まず江尻被告が名古屋に移住し「一緒に仕事をやろう」と呼び出されたんです。そうして始めた“仕事”が、今回の詐欺事件に発展しました。僕が29歳の時です。

――その“仕事”とはなんでしょうか。

江尻被告がアプリで女性と出会い、その女性から金を借りる仕事です。「俺が社長でお前が秘書だ」という設定で、女性と会っている江尻被告の送迎や女性宅への送迎、女性と会う日のスケジュール管理を行ないました。また、ある程度女性からお金を搾り取った後は、江尻被告は連絡がとりづらい状況を演出していたので、女性からのLINEや電話の対応を僕が行なっていました。

――それは仕事ではありませんよね。どうして仕事だと思ったんですか。

名古屋に移ってから江尻被告に衣食住のすべてを面倒見てもらってる状態でしたので、江尻被告から頼まれることは仕事だと思っていました。

20代の“本命”からは騙し取ってないと思います

――複数の女性からひとり数百万円、多いと1億円ものお金を詐取していますが、武田さんはその度に江尻被告からお金をいくら受け取っていたのですか。

それは5万円や10万円などさまざまです。でも一番多かったのは親族の遺産1億円を江尻被告に貸した被害女性の時で、150万円もらいました。

でも、ブランド品などを買ってしまいお金はほとんど残ってません。

――江尻被告は、どういうつもりで複数の女性らからお金を騙し取っていたのでしょうか。

江尻被告自らが作った「ミッションノート」にも書いていましたが、女性に恋心を抱かせたり結婚を仄めかしたりしてお金を根こそぎ騙し取ることを仕事だと思っていたし、「俺には運がある」「絶対に大丈夫、捕まることなどはない」と言っていました。

――江尻被告は、女性から詐取した金を何に使っていたのでしょうか。

江尻被告には本命の20代の彼女がいました。その方と同棲し、衣食住の面倒を見ていたし、旅行にもよく行っていました。(名古屋市の)錦のお気に入りのキャバクラもあったので、そこにも相当お金を使っていたと思います。あとはあまりにしつこく何度も「お金を返せ返せ」言う女性には借りた金を返すなどしてその場をやり過ごしていました。

――本命の彼女からはお金は騙し取ってないのでしょうか?

本命ですからね(笑)。騙し取ってないと思います。

――江尻被告は「捕まらない」と思っていたようですが、その当時、あなたは自分がやっている“仕事”についてどう思ってたんですか。

こんなことをいつまで続けるんだろうか、と漠然と思っていました。

江尻被告は女性に対し悪気はなかったと思うけど、僕はやっぱり申し訳ないと思いながらやっていた面もあります。

「なぜやめなかったのですか」と質問すると… 

――申し訳ないと思いながら、なぜやめなかったのですか。

江尻被告が怖かったからです。「これは仕事だから徹底的にやれ」と怒られたりして。殴ったりはされませんでしたが、言葉が強いのでこの人から逃げられないと思ってしまってた。それにどこかで「絶対に捕まらない」という言葉を信じて後先考えずにやってしまってたところもあります。

――いま被害女性たちに思うことはありますか。また、6月25日の結審に思うことは。

皆さんには本当に申し訳ないと思っています。できる限り皆さんに謝罪の手紙を書いています。裁判で何年求刑が出ようともそれを受け入れ、償おうと思います。

こちらの質問に対し、なるべく丁寧に答えようとする姿勢はみせていた武田被告。

一方で筆者は江尻被告に関係者を通し取材を申し込んだものの断られてしまった。

被害女性らは、江尻被告にも面会しているというが、つい先日、江尻被告と面会した被害女性のひとりは面会室で江尻被告に怒鳴られたという。2022年2月に江尻被告とアプリで出会い、800万円を騙し取られた相田さん(仮名、47歳)は言う。

「私は自分の貯金だけでなく親や友人、消費者金融などにもお金を借りて総額800万円を江尻に騙し取られました。江尻被告と面会した際に、出会った当時につかれた嘘について指摘したら『そんなことない!』『俺の話を聞けよ!』と怒鳴られました。面会に立ち会った刑務官のかたも驚いてましたが、なにより私が驚いて怖くて『怖い!』と言って面会室を飛び出してしまいました」

相田さんは「江尻被告には刑務所から一生出てこないでほしい」と願っている。

6月25日に行なわれた名古屋地裁の公判の際、江尻被告は「反省しています。借金は返せると思います」と被害女性に反省の弁を述べたが、「詐取した金」を「借金」だと言い張った。検察側は江尻被告に懲役8年、武田被告に懲役7年を求刑している。

取材・文/河合桃子 集英社オンライン編集部ニュース班

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