
いま、日本の不動産が静かに、しかし着実に中国資本に呑み込まれている――。名物投資家・木戸次郎氏が警鐘を鳴らすのは、もはや都市部のマンションだけではない。
日本の不動産を購入できる中国人3億5000万人
新聞やテレビのニュースを見ても、中国人富裕層やそこまでいかない中国国民がこぞって日本の不動産を買い漁っている。私が脅威に感じているのはこのままでは日本が中国に呑み込まれてしまうかもしれないという悲壮感だ。
日々生活しているとそれほど実感はないと思うが、これからご紹介する事例を読んでいただければ、如何に危うい状況なのかというのは理解できると思う。
まず、中国人が日本で不動産を買うにはそれなりの理由がある。無論、これはアリババの創業者ジャック・マーさんのような超富裕層ではなく、中流階級以上の中国人の事を指している。
年収1000万円以上で持家、自家用車を所有している、いわゆる中流階級と呼ばれる人たちはざっと4億~5億人はいるといわれている。
これに総資産100万ドル(1億5000万円)以上の富裕層が86万人、総資産600万元(1億2400万円)の人が514万人、総資産3000万ドル(約45億円)の富裕層は4.7万人と、ざっと計算しても日本の不動産を買える可能性のある予備軍は少なく見積もっても2億8000万人から3億5000万人以上はいるということだ。
彼らが日本の不動産を所有したい理由は、まず第一に日本の不動産は永続的に所有できるという点があげられる。中国やベトナムなどの社会主義国の場合、個人が土地を所有することはできず、あくまでも期限付きの「使用権」なので、永続的でないばかりか、例えば開発などの国の都合で返還を求められれば、従わなければならない。
その点、日本であれば紛れもなく個人の「所有権」なので、孫子の代まで所有できる。
永住権を容易にそれも比較的短期間で取得する方法
第二に東京の不動産はアジアだけでなく、世界的に見ても相対的に割安と感じられている点だろう。さらに円安のまま長年放置されているから、それだけでも2~3割引きで不動産が買える計算になる。
現在、東京の不動産投資の利回りは約5%前後と言われており、中国の北京や上海のような主要都市の約2%程度と比べてもいかに魅力的に映るかわかるであろう。
そして第三は特に富裕層に多いのだが、中国の経済や政治体制そのものに不満や疑問を持っているため、移住と資産保全の目的のために日本に不動産を買うケースだ。
最後の4つ目は、3つ目と重複するが、移住目的の関係者や富裕層の居住者も多く、彼らは一様に不動産取得をきっかけに長期滞在ビザ取得や永住権の取得をしたいと考えているようだ。無論、日本では不動産所有によるビザ取得の優遇措置はないものの、既成事実という面では有効なのだろうと思う。
実は永住権を容易に、それも比較的短期間で取得する方法がある。それは高度人材ポイント制と言われるものに関連していて、このポイントを合計で70ポイント以上獲得できれば永住権が最短1年で取得することができるのだ。
親子2代にわたっての移住計画
例えば、日本への移住を考えている中国人家族がまず、子息を中国の一流大学から日本の大学に留学させ、そのまま日本の一流企業へ就職させれば、高度人材ポイント対象になる。
ちなみに中国では北京航空航天大学、北京理工大学、北京師範大学などの20校がポイント対象で、さらに日本のポイント対象である128大学へ留学すれば、ポイントが得られるシステムだ。
この例で言うと29歳以下で15ポイント、ポイント対象大学卒業で20ポイント、修士(MBA・MOT)で25ポイント得られるので、これで40ポイント。更にボーナスポイントで法務大臣が告示で定める大学を卒業したものに与えられる10ポイント、日本語能力検定試験N2で10ポイント、N1だと15ポイント、イノベーション促進のための支援措置で10ポイント、成長分野における先端的事業に従事する者に10ポイントと、あっという間に70ポイントは達成できる。
だから、親子2代にわたっての移住計画で日本へ不動産を求める中国人が多いのだと思う。
湾岸エリアではタワマンの買い漁りも
実際に江東区豊洲エリアでは中国人富裕層によるタワーマンションの購入が増加しており、特定のマンションでは住民の約20%が中国人であると報じられていたり、豊洲以外でも、中央区の晴海や江東区の東雲、有明、港区の芝浦・港南、品川区の東品川などの湾岸エリアでは中国人富裕層によるタワーマンションの買い漁りが増加していると報じられている。
実際に品川区の天王洲や港区の芝浦など湾岸エリアの中古マンションが分譲時の2~3倍に跳ね上がっているという話をしばしば耳にする。
さらに超富裕層になると東京の港区六本木、虎ノ門や渋谷区の神宮前、皇居が見渡せるような千代田区の番町など、高級マンションやオフィスビルへの投資が激増しているらしい。港区虎ノ門のランドマーク的なレジデンスでは中国人富裕層による購入者が多数を占めていたために、麻布のレジデンスでは水面下で規制しているという話も漏れ伝わってくる。
都心以外でいえば、北海道のニセコや富良野、喜茂別町などの広大なリゾート地が中国資本により買収されているのは有名だが、今や本州にまで買収の手は伸びており、リクルートが開発した岩手県の安比高原リゾートも今や中国資本であるうえに、全寮制のインターナショナルスクールまで開校している。
森林や水源地や農地なども
さらに脅威に思うのは森林や水源地や農地などの日本の重要な資源を有する地域までが買い漁られていることだ。先祖代々守られてきた田舎の山林なども、核家族化が進んで都会暮らししている世代にしてみれば、相続したところで持っていても税金ばかり取られるばかりか、資産価値はほとんどないと考えているはずだ。
そこへ、中国人投資家が相場の数倍で買うということになれば、ホイホイと売ってしまう。実際に2023年までのデータでも外国人の森林取得事例は358件、2868ヘクタールにも及んでいて、この2年でもかなりのスピードで進んでいる。
我々の気が付いていない間に山の手線の内側の約半分、渋谷区の2倍もの土地が彼らの手に渡っているのである。
山林が外国人の手に渡った場合、最も深刻なのは「水」であろうと思う。水は人間が生きてく上で最も大切な資源であるのは言うまでもない。山林は水源涵養機能を持ち、降水を一時的に貯留し、河川への流量を平準化する役割を果たしている。 そのため、山林の管理は水資源の保全に直結するのだ。
2050年までに、世界人口の約半数が慢性的な水不足にさらされると予測
だから山林がいたずらに彼らに渡れば、そこに含まれる水源地にも及び、地域の水資源への影響が大いに懸念される。よく日本人は近視眼的なものの見方をし、大陸の人間は何十年先も見据えたものの見方をするというが、まさにその通りなのだと思う。
水を取り巻く現状を見ると世界人口の約50%に当たる約40億人が、少なくとも年に1か月は水不足に直面しており、2050年までに、世界人口の約半数が慢性的な水不足にさらされると予測されている。
特に待ったなしの死活問題になっているのがインドだ。インドは2025年度末までに名目GDPで日本を上回り、世界第4位の経済大国になるとIMFが予想しているが、過去10年間で何と名目GDPを2倍以上に拡大するほどの急成長を遂げている。
そのインドの人口の約80%が地下水を飲料水として利用しているのだが、過剰な汲み上げにより地下水位が急速に低下してるそうだ。 このままでは2030年までに人口の約40%が飲料水を入手できなくなると予測されている。
特にニューデリー、ムンバイ、ベンガルールなどの都市部では、大規模な開発と人口増加によって、一気に水の需要が急増し、供給が追いついていないという。 例えば、南部の都市チェンナイでは主要な貯水池が干上がってしまっていて、深刻な水不足に陥っているそうだ。
「水が石油になる日」が確実に近づいている
そういう現状を知れば「水が石油になる日」が確実に近づいていて、世界中で水の争奪戦が始まるのは目に見えている。最悪、石油はなくても人間は生きていけるが、70%が水分で形成されている人間は生きてく上で水が必要不可欠なので「水源」を外国人に押さえられることがいかに危険なことかを政府は真剣に考えるべきだと切に思う。
既に多くの地域の地元住民からは安全保障上の懸念や地域の変化への不安の声が上がっていると聞く。大量に流入してくる中国人によって地域の既定ルールや慣例が多勢に無勢で変えられてしまっているということだ。
中国とは別に台湾も日本への”侵食”を始めている。
日本人の多くは中国資本の下働きと化してしまう危険性
また、TSMCが熊本県菊陽町に約1兆2800億円を投じて半導体工場を建設し、2024年に量産を開始して地元でも雇用を2400人も創出している。
さらに日本政府から最大4760億円の補助金支援を受け、ソニーと合弁で「JASM」を設立。また、台湾の半導体後工程最大手ASEは山形県高畠町に製造拠点を持ち、日本人を雇用し生産を開始している。
この他、電子部品大手のヤゲオが芝浦電子の買収提案をしたり、電子部品メーカーのシリテックがFDKの公開買い付けを行ったり、友好的にも敵対的にも確実に侵食が始まっている。
最終的な結論を言えば、現在、台湾と日本は非常に良好な関係を保っており、そのうえで上記したような投資が様々なされているが、中国は近い将来、台湾を占領し、台湾が投資している日本企業を、実質中国資本にしてしまおうという目論見だということは日本への浸食度合いからも容易に想像できる。下手すると日本人の多くは中国資本の下働きと化してしまうかもしれないのだ。
平和ボケ、事なかれ主義に胡坐をかいている日本の政治家たちはもっと目前に迫っている危険への対応策を迅速かつ真剣考え、危機感とリーダーシップをもって日本国民の生活を守るべきではないか。
文/木戸次郎