「マンションは購入と賃貸、どちらが良いのか?」…永遠のテーマと言われ、SNSでも必ず議論が白熱する案件だ。かつて多くの識者も持論を展開してきたが、実は同じ条件での比較がなされていないケースが多いという。
マンションブロガーとして絶大な信頼を集める2LDK氏の初の著書『絶対に失敗しないマンション購入の教科書』より抜粋・再構成して検討すべきポイントをお届けする。
構造的に有利なのはズバリこちら
よく話題になるこのトピック、もちろん個々人の価値観でどちらが良いかは異なりますが、構造だけを見れば、長期的には購入のほうが有利になりやすいです。なぜなら賃貸の人が支払う家賃の中にはオーナーの負担する経費や利益も折り込む必要があるためです。
この差を生み出す要素の一つが、ローン金利です。居住用マンションを購入する際に利用できる住宅ローンは、金利が非常に低く抑えられています。住宅ローンは今なら変動金利だと0.8%程度で借りることができますが、投資用ローンは金利が高く設定されており、一般的には2~4%、それ以上になることもあります。
たとえば、7,000万のマンションを35年フルローンで借りた時、住宅ローンの金利0.8%であれば月々の返済は19万1,000円、総返済額は8,027万になりますが、同じ額を投資ローンの金利3.0%で借りると月々の返済は26万9千円、総返済額は1億1,314万になります。総支払額は3,287万円も変わります。
この支払額の差は銀行に支払う金利の差であり、オーナーのコストです。賃貸のオーナーは上記の金利に加えて税金や空室率なども考慮し、さらに自分の利益を上乗せして「賃料」を設定します。一方で自宅として購入した場合は、自分が必ず住むので空室を想定する必要はなく、ローン金利も税制面も優遇されています。もちろん、利益を上乗せする必要もありません。こうして比べてみると、構造上自宅として購入し住むことがいかに低コストであるかということがよく分かるかと思います。
巷には多くの賃貸vs購入に関する記事がありますが、読むのに注意が必要な記事も少なくありません。結論が先にあり、その結論に合わせて、途中の前提条件や比較方法が選ばれているケースも見受けられます。代表的なのは次の2つです。
・賃貸と購入で、比較対象となっているマンションが異なる
・35年の比較になっていて、住宅ローン完済後に購入優位な点が考慮されていない
一見もっともらしく見えても、前提条件をきちんと確認する必要があります。重要なのは結論そのものではなく、どのような設定で比較されているのかです。とくに多いのが、賃貸と購入で住んでいるマンション自体が異なるケースです。エリアや広さ、築年数が違えば、支払額や満足度に差が出るのは当然であり、その結果だけをもって賃貸か購入かを判断するのは適切とは言えません。
そこでここからは、「全く同じ物件」という前提で賃貸と購入の比較を行います。実際の検討では、賃貸と購入で住む条件が変わることがほとんどで、同じマンションを比較対象にするケースは多くありません。それでも同条件で比較するのは、感覚論ではなく、賃貸と購入の構造的な違いを明らかにし、購入する場合のメリット・デメリットを整理するためです。
国は購入を積極的に支援している
購入のメリット
①税制優遇
住宅購入については国も積極的に支援しており、税制面でもさまざまな支援が用意されています。その代表的なものが住宅ローン減税です。住宅ローン減税は本書を執筆している2025年7月時点では、最大4,500万の借り入れに対して年0.7%の減税が13年間行われます。
②資産になる
購入のメリットは購入したマンションが資産になることです。7,000万のマンションを35年ローンで購入した場合、35年後にはローンの残債はゼロになります。では35年後にそのマンションの価値がゼロになるかといえばそうではありません。ポータルサイトで築35年のマンションを調べてもらうと分かりますが、一定の価格で取引はされています。つまり35年経過して売却すれば利益がでます。
もちろん35年経過しなくても、その時点の住宅ローンの残債額より売却額が高ければ売却して利益を出すことが可能です。昨今はマンション価格も急激にインフレが進んでいます。
中古マンション70㎡の価格推移ですが、東京23区に絞ると2019年1月に5,457万だったのが、2025年5月には1億88万になっており、わずか6年ちょっとで約1.8倍に価格が上昇しています。もちろんどんなマンションでも買えば値上がるというものではなく、同じ首都圏でも東京23区と周辺3県の価格上昇率が異なるように、資産として価値が上がりやすいマンションとそうでないマンションは違いがあり、選ぶ際の目利きは必要になってきます。
③インフレリスクヘッジになる
ここ数年でありとあらゆるものが値上がりしており、インフレが進んでいます。
借地借家法は住んでいる借り手に優位な法律なので、オーナーの意向だけで一方的に賃料を上げることは原則許されていません。そのため、賃料の上昇は売買価格の上昇に比べ時間を要しますが、裏を返せば今後さらなる賃料上昇の可能性があります。一方購入の場合は、金利や管理費・修繕積立金など一定の価格変動要素はありつつも賃貸に比べて毎月支払い額の変動を抑えることができます。またインフレが進めば現物資産であるマンションの価値も上がる可能性が高く、仮に将来売却することになった際にも利益を生み出すことができるでしょう。
初期コストの重さはネック
購入のデメリット
①初期コストが重い
賃貸であれば、敷金・礼金と仲介手数料他諸費用で賃料の3~4ヶ月分を支払えば入居が可能です。家賃20万の部屋ならばおおよそ60万~80万です。一方で購入の場合は初期にまとまった資金が必要です。新築マンションだと修繕積立一時金で100~150万程度、これに加えて住宅ローンの融資手数料として借入額の2.2%、他登記費用などの諸費用がかかります。仮に7,000万のマンションを買ったとするとざっくり試算しても200~300万程度は見ておく必要があります。
そのため、1~2年の超短期で引っ越す前提であれば、初期費用だけを考えると賃貸のほうが合理的になる可能性があります。
②住み替えしづらい
購入のデメリットとしてよくあがるのが、住み替えのしづらさです。一度購入してしまうと簡単には動けず、ライフスタイルの変化に対応しにくい。その点、賃貸ならライフスタイルに合わせて住み替えが自由にできる、というものです。確かに「賃貸は気軽に住み替えが可能」ということは事実ですが、「一度購入してしまうとずっとそこに住まないといけない」というのは、必ずしも事実ではありません。
もちろんマンションによる個別差はありますが、首都圏のマンションは流動性が高く、相場通りの価格で売りに出せば数カ月で買い手が見つかるケースが多いです。公益財団法人東日本不動産流通機構のデータによれば、中古マンションが売却開始から成約に至るまでの平均期間は85.3日です。賃貸ほどスピーディーには進まないかもしれませんが、条件が整えば3ヶ月程度で買い手を見つけることも十分に現実的です。購入したからといって、ライフスタイルの変化にまったく対応できなくなるわけではありません。
ただしマンションごとの個別差は当然ながらあり、近年は選ばれやすいマンションとそうでないマンションの差は広がってきています。だからこそ、将来の住み替えも見据えたマンション選びが、以前にも増して重要になってきています。
賃貸で住み続けるなら考えておくべきリスク
賃貸を選ぶ場合に、あらかじめ考えておきたいリスクもあります。その一つが、高齢になると賃貸での入居を断られるリスクです。賃貸でマンションを借りる際に多くは保証会社を通しますが、高齢だと保証会社の審査が通らないケースがあります。また、万が一、入居者が室内で亡くなった場合、その後の賃貸経営に影響が出ることを懸念し、オーナーが高齢者の入居を敬遠するケースもあります。
もう一つが、インフレによる賃料上昇のリスクです。物価が上昇すれば、基本的には賃料もそれに連動して上がっていきます。その結果、ライフスタイルの変化に合わせて住み替えを検討した際、周辺の賃料が想定以上に上昇しており、近隣では希望条件の物件に住み替えられない、といった事態も起こり得ます。
これまで長くデフレが続いてきた日本では、賃料が大きく上がる局面を経験してこなかったため、こうしたリスクは表面化しにくいものでした。しかし、インフレ局面に入った今、「賃貸はいつでも自由に住み替えできる」という前提が、必ずしも成り立つとは限らない点には注意が必要です。
文/2LDK(マンションブロガー)
『絶対に失敗しないマンション購入の教科書』ぱる出版
2LDK

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