◆報知プレミアムボクシング▽ニューヒーロー第11回 WBOアジアパシフィック・フライ級王者・富岡浩介

 フライ級に今後の飛躍を期待されるチャンピオンが誕生した。今年2月、WBOアジアパシフィック・フライ級タイトル戦で富岡浩介(23)=RE:BOOT=が、長尾朋範(F赤羽)からダウンを奪い3―0の判定勝ちで新チャンピオンに輝いた。

U―15、全日本アンダージュニア大会で6度の優勝を誇り、注目を集めてプロ入り。勝ち負けを繰り返す苦しい時期を経験しながら、デビューから約6年半をかけ、ようやく地域タイトルを手にした。パンチ力とカウンターのタイミングは非凡な才能を持ち合わせるテクニシャン。まだまだ成長過程の新チャンプは、5月2日に東京ドームで初防衛戦を行う。

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 期待されながらなかなかたどり着けなかった。「もう、辞めよう」と何度も思った富岡だが、ようやく手にしたチャピオンベルトに本音をこぼした。

 「タイトルを取るまで6年半かかった。自分的にはもっと早く(ベルトを)取れると思っていたんですが…。デビュー戦も早く倒して勝って(1回TKO勝ち)、すぐにチャンピオンかなと思っていたら、勝ったり負けたりが続いた。苦しい時期もあったが、いろんな経験ができたし、いいキャリアを積んでいると思います」

 初めてタイトルに挑んだ2月の長尾戦。2回にカウンターの左でダウンを奪い、4回には相手の膝ががくりと落ちる左アッパーを放った。最後は前に出る長尾を足でさばき、冷静に対応して判定勝ちした。

 小学校4年の秋、「少しぽっちゃりしていたのと、兄2人がやっていた」ことから、ボクシングを始めた。才能に恵まれたのか、すぐに快進撃が始まる。翌年からアンダージュニア、U―15大会に出場して6冠を達成する。富岡3兄弟の末っ子は「スーパー中学生」と騒がれ、強豪ボクシング部のある複数の高校から熱烈な誘いを受けた。「今思えば行った方が良かったかと思いますが、あの頃はプロ一直線だった。自分の中で高校に行く選択肢はなかった」と、アマチュアを経験せずにプロ入りを決断。2019年7月1日にデビューが可能となる17歳の誕生日を迎えると、同月の27日にスピードデビューを果たす。前年の東日本新人王・若木忍(畠山)を1回TKOで下し、評判通りに強烈なインパクトを残した。

 が、プロの世界は甘くはなかった。東日本新人王は順当に勝ち進むが、決勝戦で逆転のKO負けを経験した。試練は続く。7か月後の再起戦では高山涼深(ワタナベ)に痛恨の1回KO負け。

「あの頃は19歳、20歳で遊びたい盛り。夜はどこかに遊びに行くことばかりを考えて、ボクシングに集中していなかった。メンタル的にもつらくて、何度も辞めようと思っていた」。転機は2連敗後の再起戦を6回TKO勝ちした時に見た、後援者たちの笑顔だった。「応援してくれている方たちの喜んでいる姿を見て、気持ちを入れ直さなければと思った。そこから本気になったんです」。一昨年3月の日本ユース・フライ級王座決定戦。野上翔(RK蒲田)に1―2の判定負け。その野上は昨年8月に日本フライ級王座を獲得した。「自分は負けている立場で大きなことは言えませんが、俺もやってやるという気持ちが強くなった。もう一度対戦したい気持ちはある」と、ともに地域タイトルを持つ立場になり、雪辱への思いを強くした。

 負けるパターンはいつも同じだ。

ダウンやチャンスをつかんだ後のラウンドに決まってピンチが訪れる。「気が抜けているんです。倒した後の次のラウンドに倒されたり、油断したりしてしまうんです」と反省するが、今は魅力の方が色濃く表れる。相手を一発で倒すパンチ力、カウンターのタイミング。今の富岡を支えている、どれも幼少期に身につけたテクニックだ。

 中学3年から富岡を指導するRE:BOOTジムの射場哲也会長は、そのポテンシャルの高さを認めるからこそ、注文も忘れない。「スピード、タイミング、倒すパンチを持っているのが魅力。今はセンスとタイミングでやっているが、これからステージを上げていって、10、12回の試合になればその中で波がでてくる。そうなった時にどう対処するかの(ボクシングの)引き出しを増やす必要がある。今はまだ10段階の6ぐらい。伸びしろだらけです」という。富岡自身も「(ボクシングの)引き出しを増やして、それをどう試合で出していくか。

それができれば、どんな相手にも対応できる」と、課題の克服に日々汗を流している。

 5月2日は東京ドームで初防衛戦を予定している。世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)と、元世界3階級制覇王者・中谷潤人(M・T)が対戦するスーパーファイトのアンダーカード第1試合で、無敗の田中将吾(大橋)の挑戦を受ける。今やプロボクシング界を席巻する大卒アマエリートとの対戦。対照的な立場の挑戦者に、雑草チャンプは言った。「田中選手はアマチュア出身のまとまった選手。自分は正反対のたたき上げです。でも、プロの舞台はアマとは違う世界。自分はプロの舞台で色々な選手と対戦して、色々な経験をしてきた。自信もあるし、そんな簡単にベルトは取らせません」と言葉に力を込めた。目標は当然世界だが、あえてその言葉は封印した。「一個、一個、勝つことが重要。

そうすることで、自然と目標に近づく。とにかく一個、一個です」。足もとをしっかり見つめ、経験したことのない大会場のリングに立つ。(近藤 英一)

 ◆富岡 浩介(とみおか・こうすけ) 2002年7月1日、埼玉県川口市生まれ。小学校4年からボクシングを始め、ジュニア大会で6冠を達成。17歳でプロデビュー。今年2月にWBOアジアパシフィック・フライ級王座を獲得。身長164センチの左ボクサーファイター。長兄・哲也さん(30)、次兄・達也さん(28)も元プロボクサー。父・憲一さん(55)は試合でセコンドを務めている。幼少期から一緒に練習していた同期に前WBA世界ライトフライ級王者の高見亨介(帝拳)がいる。プロ戦績は11勝(8KO)4敗。

 

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