東京・池袋のサンシャインシティにある「ポケモンセンターメガトウキョー」でアルバイトの春川萌⾐さん(21)が殺害され、廣川⼤起容疑者(26)も現場で自殺した事件。廣川容疑者と事件当日の朝も一緒に過ごした母親は予兆を感じられなかったことに苦悩を深めている。
現行制度で可能な限り手を尽くしてもストーカーの襲撃をとどめられなかった事件をみて、政府が6年間も検討を続けているGPS装着を求める声も上がっている。
「次回はこっちを食べようね」と
「事件当日、(大起と)一緒にモーニングを食べにいきましたが、『次回はこっちを食べようね』と、またここに来ようといった話をしていました。とても落ち着いた雰囲気であんな事件を起こすような予兆はありませんでした」
加害者家族の支援団体代表を通じて集英社オンラインに寄せられたコメントで廣川容疑者の母親はそう明かした。
母子が一緒にモーニングを食べたのは3⽉26⽇。この日の午後7時すぎ、廣川容疑者はポケモンセンターでアルバイトとして働いていたかつての交際相手の春川さんをナイフで襲った。
「防犯カメラには廣川容疑者が春川さんに馬乗りになって、自分と春川さんを交互に刺す場面が映っており“道連れ自殺”を図った可能性があります」(社会部記者)
廣川容疑者は小学校低学年の頃に母親やきょうだいともに川崎から沖縄に移り住んでおり、近所の人は「(廣川容疑者の父の)DVが原因で移り住んだと聞きました」と語る。幼いころから苦労した母親と廣川容疑者との関係はよかったと親戚は証言する。
沖縄時代の廣川容疑者は水泳で優秀な成績を残し、学業も優秀できょうだいの面倒もよく見る青年として周囲に好印象を残している。しかし大学受験に失敗し、関東へ戻りアルバイト生活をする中で今回の事件を起こした。
沖縄の元同級生はストーカーとなった廣川容疑者の最期にショックを受けているという。
社会部記者は「2人は2023年12月ごろにバイト先で知り合い、2024年10月から交際を始めたが1年もたたない2025年7月ごろには関係を解消したと生前、春川さんは警視庁八王子署に説明していました」と話す。
「悩みながらも自衛隊への入隊を志し、生活を立て直そうとしていました」
春川さんは別れてから約5か月後の昨年12月25日、「元彼がつきまとってくる」と八王子署に相談。同署は同日中に被害者宅付近で廣川容疑者を発見し、強い執着と危険性を認めたとしてストーカー規制法違反容疑で逮捕し、果物ナイフ一本を押収している。
その後、今年1月15日には春川さんを盗撮したとの性的姿態等撮影処罰法違反容疑で再逮捕し、同29日に接近禁止命令を出して同30日に略式起訴。
3月12日までに同署は春川さんに電話などで計9回接触していたと報じられているが、「異常ありません」との答えがあったという。廣川容疑者はこの間、本当に接近していなかった可能性があるが、同署の最後の連絡から2週間後に事件は起きた。
いっぽう母親の話では廣川容疑者と春川さんは「1年半~2年間」交際していたという。
廣川容疑者はカウンセリングを拒み、スマホに保存してあった春川さんの写真の消去にも応じなかったと報じられてきたが、母親の認識では拒んだカウンセリングは釈放後のもので、勾留中は受診していたという。
「逮捕の後、息子は悩みながらも自衛隊への入隊を志し生活を立て直そうとしていました。釈放後の様子はとても穏やかで何かを振り切ったような様子でした。釈放後、母親が監督するということで同居していましたが、実家に依存せずひとり暮らしをするための物件と仕事を探しに行っていました。どこでスイッチが入ってしまったのか、わからず思い悩む日々です」(廣川容疑者の母親)
八王子署は春川さんの相談を基に現行法で可能な被害予防措置をすべてとったとも言われている。母親も事件当日の朝も異変を察することはできなかった。どうすれば今回のような事件を防げるのか。その一つとしてストーカー前科者にGPS発信器を取り付け居場所を把握する制度の導入を求める声が出ている。
韓国ではストーカー対策で導入済み
実は政府は2020年6⽉に決定した『性犯罪・性暴⼒対策の強化の⽅針』で、『仮釈放中の性犯罪者等にGPS機器の装着を義務付けることについて、2年程度を目途として諸外国の法制度・運用や技術的な知見等を把握し、その結果も踏まえて所要の検討を行う』と表明している。だが、いまだに結論が出る見通しがない。
いっぽう裁判所が被告を保釈する際、海外逃亡の恐れがあると判断すればGPS装着を命じられる制度が2028年までに施行されることが決まっている。
「このためストーカーへのGPS装着の検討に時間がかかりすぎているとの指摘が国会で出ました。三⾕英弘法務副⼤⾂が『検討の加速を法務省に指示したい』とやや前向きな答弁をしています」(政治部記者)
この制度は隣国の韓国が先を行っている。
「韓国では2008年に性犯罪者を対象とする位置追跡電子装置制度が施行され、その後未成年者誘拐や殺人、ストーキング前科者にも対象が拡大されました。
ストーカーの場合、被害者に一定の距離まで近づくと被害者にそのことを知らせるメッセージが送られる仕組みが運用されています。さらに加害者が接近すればその位置や移動ルートをスマートフォンの地図画面で見ることができるモバイルアプリが開発され、ストーカー対策などで導入されています」(韓国記者)
現行のものでも韓国の制度が日本にあれば春川さんは廣川容疑者の接近を知ることができたかもしれない。だがシステムだけでは防げない事例も起きている。
「韓国では3月に、ストーカー男が元交際相手を刺殺する事件が起きました。被害者は事件前、男が車に取り付けた位置発信機を見つけて警察に相談し男の接近を察知できるようストーカー被害者としての保護措置を求めていました。しかし対応した警察官が放置しているうちに事件が起ました。
ストーカー犯罪をどう抑え込むのか。重い問いが突きつけられている。
※「集英社オンライン」では、今回の事件に関連する情報を募集しています。下記のメールアドレスかXまで情報をお寄せ下さい。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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