なぜ国家は「帝国」を築こうとするのか ローマから大英帝国、トランプまで…支配の裏にある「欲望の3原則」
なぜ国家は「帝国」を築こうとするのか ローマから大英帝国、トランプまで…支配の裏にある「欲望の3原則」

なぜ国家は、わざわざ他国を支配しようとするのか――。ローマ帝国から大英帝国まで、歴史を振り返ると、人類は繰り返し「帝国」を築いてきた。

その背景にある「3つの欲望」とは?

イギリスの移民2世のジャーナリストが「なぜ、大英帝国について教えられないのか」を問題提起して話題になった『盗まれた歴史』より、「帝国のなりたち」を紹介する。

なぜ国家は帝国を築こうとするのか

まず基本から始めよう。「帝国」とは何か? この言葉は、ローマ帝国に関連して、もしくは、映画『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』で耳にしたことがあるかもしれない。

帝国とは、一つの国や政府によって支配される複数の国々のことだ。帝国について話すときによく出てくる、知っておくと便利な他の言葉もある。

• 帝国主義(Imperialism)……帝国を築く行為のこと(例「イギリスの帝国主義的過去」という表現は、イギリスが帝国を築いていた時代を意味する)。

• 植民地主義(Colonialism)……ある国が別の国を支配したとき、その国を植民地化した、という。ある民族が別の民族を支配する時、征服する側は植民者であり、征服される側は植民地化された人々と呼ばれる。支配された場所は植民地となり、支配のために入ってきた人々は植民者または植民地主義者と呼ばれる。

大きな理由は権力、カネ、そして栄光のため

支配する土地や資源(他国の食糧や貴重な鉱物など)が多いほど、より強くなり、名声を高め、裕福になり、さらに多くの冒険を経験することになる。当然ながら、歴史上多くの支配者が帝国を築こうと熱望してきた。

最も有名な帝国の一つがローマ帝国で、紀元前27年に始まり約500年間続いた。この時期、ローマ人はヨーロッパの大部分やさらにその先(グレートブリテン島を含む)を植民地化した(事実、ブリテン島を植民地化したのはローマ人だけではない。ヴァイキング、サクソン人、ノルマン人もそれに挑んだ)。

一般的に、大英帝国は1600年代、エリザベスⅠ世の治世中に始まったとされる。

当時、航海に出た冒険者たちが、貴重な物資が豊富にある土地を「発見」したのだ(これらの地域に既に住んでいた人々は「先住民」と呼ばれるが、イギリスの帝国主義者が現れる前からその土地を故郷だと考えていたから、この表現には当然ながら異議を唱えるだろう。

もし見知らぬ人があなたの家にやって来て、その地を「発見した」と周囲に言いふらしたら、どれほど腹が立つか想像してほしい。あなたたちは最初からそこにいて、「発見」される必要なんてなかったのに!)。

インドは資源のもと、オーストラリアは流刑地

大英帝国は約500年間存続し、フランス、オランダ、ポルトガル、スペイン、イタリアといった他の多くのヨーロッパ諸国もそれぞれの帝国を築いた。しかし大英帝国は史上最大の規模になった。その大きさは、かつての強大なローマ帝国の7倍にも及んだ。

およそ一世紀前の最盛期に、大英帝国は1371万平方マイルの広さに及び、インド(「亜大陸」とも呼ばれる)アフリカ諸国、カナダ、オーストラリア、そして数多くのカリブ海の島々を含んでいた。これは世界の陸地の4分の1にあたる。

さらに驚くべき別の言い方をすると、1900年代初頭の大英帝国の領土をすべてあわせると、月の表面のほぼ全体を覆うほどの広さだったのだ! 帝国は地球上のとても多くの国々や時間帯にまたがっていたため、最盛期には太陽が沈むのを見ることなく大英帝国を横断できるといわれていた。

イギリスがさまざまな植民地を手に入れた理由は、実に多様だった。例えばインドに関わるようになったのは、貿易で取引したい豊富な資源があったからだ。またオーストラリアは、犯罪者を送る流刑地として便利な場所と見なされていた。



イギリスの帝国主義は時代ごとにさまざまな段階を経てきた。ある時期には、白人男性が帝国内で出会った褐色の女性と結婚することが許されていたが、別の時期には異人種間の関係は嫌悪の対象となった。ある段階では、イギリスの帝国主義者たちは奴隷貿易の悪弊を根絶しようと尽力した。

しかし17世紀後半から19世紀初頭にかけての長い間、大英帝国は大西洋奴隷貿易という悪で利益を得ていた。

奴隷貿易とはアフリカ各地から黒人の男性・女性・子どもを拉致し、大西洋を渡ってカリブ海諸島、北米やその他の地域の農園に送り込み、無償での労働を強制するものだった。大英帝国の支配下で、アフリカ大陸の300万人以上がこの運命を被こうむり、その多くが船内の劣悪な環境で航海中に命を落とした。

奴隷によって生産された砂糖やその他の作物は、イギリスの一部の人々に巨額の富をもたらした。しかし最終的に英国は奴隷貿易を「悪」と認め、それを違法とし、世界的に廃止(つまり終わらせること)する運動で先頭に立つようになった。では、そのように多くの国々をどのように支配していたのか?

さまざまな出自のサッカー選手と砂糖も、帝国の産物

アフリカ、カリブ海、南アジア、東南アジア出身の多くのイギリス人がここにいるのは、イギリスがこれらの地域を植民地化したからだ。彼らの中には、おそらくあなたの友人の何人かや、イングランド代表の有名サッカー選手マーカス・ラッシュフォードのような著名人が含まれる。

マーカス・ラッシュフォードと砂糖は、間違いなくイギリスにとってすばらしい贈り物だ(もっとも、歯医者は後者には賛成しないかもしれない)。しかし、大英帝国は今なお非常に論議を呼ぶテーマだ。

それが良いことだったのか悪だったのか、人々は何世紀にもわたって議論してきたし(ネタバレをすると、話はもっと複雑だ)、それ以外のほとんどあらゆる側面についても論争がある。

想像できるだろうか。

人々は大英帝国について、あなたが友達とポケモンカードの交換や、スーパーマンvs.スパイダーマン、誰が一番のユーチューバーか、誰がダンスや側転が一番上手か、誰が一番かっこいいスニーカーを持っているかをめぐって言い争うよりも、ずっと激しく論争している。

大英帝国が何百万人もの人々を奴隷にしたことや、飢饉・戦争・疫病によってさらに数百万人もの命を奪ったことを考えれば、この話題が出れば感情的になるのも不思議ではない。大英帝国についての議論では、少なくとも一方がひどく動揺したり声を荒げたりし、もう一方が激しく反論する場面がよく見られる。

とはいえ、人々が同意できること、あるいは少なくとも激怒せずに議論できることもいくつかある。例えば、大英帝国の強大な権力が20世紀に終わりを迎えたことは一般的に認められている。

具体的には1947年にインドがイギリスからの独立を宣言し、1997年に香港が中国に返還された時だ。また大英帝国がさまざまな形でイギリスを形作ってきたことも否定できない。

日常生活を満たす小さな事柄だけでなく、イギリス人が自らをどう見ているか、そして世界の他の地域をどう見るかについても、帝国の影響が及んでいる。

私たちは往々にして、大英帝国がいまなお私たちの生活に与え続けている影響や、私たちが口にする言葉、行動、目にするもの、信じていることの多くが帝国の歴史に由来していることに気づいていない。

文/サトナム・サンゲラ 

盗まれた歴史

サトナム・サンゲラ
なぜ国家は「帝国」を築こうとするのか ローマから大英帝国、トランプまで…支配の裏にある「欲望の3原則」
盗まれた歴史
2026/2/281,760 円(税込)224ページISBN: 978-4868011330

君塚直隆 駒沢大学教授推薦!
「“帝国とは何か”をもう一度考えさせてくれる、素晴らしい道案内」


イギリスの生徒たちに
「自分たちの国は何をしてきたか」
を教えて大反響!

“STOLEN HISTORY” 待望の邦訳版が日本上陸!

「なぜ自分はここにいるのか?」
移民二世である著者が自身のルーツをたどると見えてきたのは、
身近なものの多くが“帝国”を起源にしているという
隠されてきた事実だった!

シャンプー、カレー、紅茶、コカ・コーラ
→これら全部「奪ってきたもの」です!


「……帝国は今なお私たちの生活に深く関わりのある歴史の一部で、イギリスという国家について実にたくさんのことを説明してくれる。この国の財産の多くや、博物館で見かける品々がどこから来ているのか、なぜさまざまな人種や背景の市民が暮らしているのか、私たちが食べる料理、使う言葉、すべてに帝国の歴史が関わっている」(本文より)

◎目次
第1章 大英帝国とはいったい何だったのか?
第2章 それほど大きな歴史的出来事だったのに、なぜ私たちはあまり知らない?
第3章 私たちの博物館の展示品はみんな盗まれたもの?
第4章 帝国は私たちの町や都市、地方をいかに形作ったか
第5章 なぜイギリスの家族はこんなにいろいろな場所から来ているのか
第6章 でも私はそこにいなかったのに!
第7章 私に何ができる?

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