手術の読みは「しゅずつ」「しじゅつ」でも通じるのか
「手術」を「しいつ」と言うのは、さすがに文脈によって「シ−ツ」にも勘違いされそうだけど、民放的には基本OK。
テレビで著名人が手術したニュースを報じるとき、「しゅじゅつ」とキチンと発音しないアナウンサーなどが多いことが、以前から気になっていた。
最初は「いま、かんだ?」と思ったが、気にしてみると、ちゃんと「しゅじゅつ」と言う人のほうが稀で、多くは「しゅずつ」や「しじゅつ」。
なかには「しいつ」なんて人もいる。

確かに、「しゅじゅつ」の発音は難しい。さらに「手術室」「手術中」となると、素人はもう「しゅじゅちゅちゅちゅちゅ……」と、不覚にも、ずいぶんかわいらしいことになってしまうことすらある。
アナウンサーもやっぱり「かむ」ことを避け、はなから発音できないものとして諦念の「しゅずつ」「しじゅつ」を選択しているのだろうか。努力もせずに?

NHKの用語について担当している「放送文化研究所」に聞いてみると、
「本来は、『しゅじゅつ』です。言葉は変わっていくもので、間違った読み方をする人のほうが多くなると、それも容認することはありますが、あくまで正しくは『しゅじゅつ』」
とキッパリ。

発音しづらく、『しゅずつ』などと聞こえる場合はあるかもしれないが、
「NHKでは正しい発音を念頭に置いて、きっちり発音しようと言っています」とのことだった。

では、民放は? フジテレビに聞いてみると、アナウンス部の担当者は、「手術は発音しづらいですからね」と言い、こんな説明をしてくれた。
「たとえば、新宿なども発音しづらいため、『しんじゅく』『しんじく』どちらでもオンエア上はOKとなっているんですよ」
え!? 新宿が「しんじく」? 民放、ユルい!
「正しくは『しんじゅく』ですし、本当は正しく発音したほうがいいのですが、だいたい同じような音に聞こえるので、伝わればOKとしているんですよ。これは民放横並びの基準ですので、どこの局も同じでは?」
とのこと。

でも、実際、「手術」は伝わってはいるものの、「しじゅつ」「しゅずつ」などに聞こえちゃっているわけだから、「同じような音に聞こえていない」ことにならないのでしょうか。
「『しゅずつ』などを容認しているとはいえ、正しい発音のほうがいいわけですから、あとは個人的に練習しないと(苦笑)」
自分が指導されたような気分になって、思わず「そうですね」とかしこまってしまったけど、私、全然関係ないじゃん!

「しゅずつ」「しじゅつ」「しいつ」などは、あくまで「容認」という消極的な選択に過ぎないということで。

と思っていたとろ、26日放送の『トリビアの泉』で、奇しくもアナウンサーが発音しにくい言葉というのをやってた。1位と2位に選ばれたのが、それぞれ「摘出手術」と「腹腔鏡手術」と、なんと「しゅじゅつ」系の言葉が上位を占めてしまった。

やっぱり難しいのか、しゅずつ。
(田幸和歌子)