ネックレスや指輪、はたまた腕時計などのアクセサリー類。これらを身につけるのには、様々な理由があると思う。

単純にファッションとしてというのもあるし、もしかしたら大事な人の形見の品かもしれない。

そして、このペンダントは故人の戒名を彫り込む。山梨県の「清水商会」では『戒名ペンダント 蓮華想』なる商品を手がけている。

このような商品を開発したきっかけを、同社の清水代表に直接伺ってみた。
「当社は元々、レザークラフトやおまんじゅうなどに押す“焼印”を手がける会社なんですが、小さなサイズの焼印の場合、直火式のものだと温度設定が困難なんですね。そこで電気半田コテを用いた低温式の焼印、キャスティングホルダーを開発いたしました」

「その技術を知った方から、『戒名のペンダントを作ってほしいんです。
清水さんの技術で作っていただけないでしょうか?』という要望が当社に寄せられたのがきっかけです」
その方はご主人を亡くしたそうで、立ち直る過程で「故人に見守ってほしい」という思いを抱くように。そして、同社に戒名を彫りこんだペンダントの製作を依頼。「こういう商品は、宝石店には頼みづらい」という思いが、その方にはあったのだ。

その依頼を受け、清水代表は身内をなくした方々の心境などについて調べるように。すると、「グリーフケア」なる活動の存在に行き当たる。これは、知人の死別に伴う苦痛や環境変化を受け入れようとするプロセスをケアする活動のこと。

遺族が立ち直っていく過程で、“戒名ペンダント”が助けになるならば。そんな思いから、清水代表は同商品の受注の本格化を決意した。

この商品が発売されたのは5月上旬なのだが、直後から同社には問い合わせが殺到。それどころか、遠くの地域から直接訪ねてきて自分の思いを吐露する方までいた。このような商品を求めている人は、実は少なくなかったのだ。
反響も上々で、「納品された方は、本当に喜んでくれてます」(清水代表)。


ちなみに購入は、同社のウェブサイトから。そこで戒名などを伝えると、オリジナルの技術でペンダントを作成してくれるという。戒名の文字数の制限はなく、「どんな大きさの、どんな文字でも作ることができます」(清水代表)。
価格は9800円(税込み)。

また、清水商会では『戒名ペンダント 蓮華想』の売り上げをグリーフケアに還元したいと考えている。たとえば、売り上げの一部をグリーフケア団体へ寄付したり、グリーフケアに関する書物を図書館に寄贈したり……。


何気なく生活していると縁のない出来事かもしれないが、このような試みは世の中に必要なこと。我々も、いつお世話になるかはわからない。
(寺西ジャジューカ)