この原稿を書いているのは、8月21日。もう、今年の夏も終わりかけているようだ。
あの異常な暑さ、ようやく打ち止めらしい。
そんな今夏、気になっていたのは「電力使用量」。エアコンなりを使用する際、やはりためらいの感情が生まれた方も多かったのではないか? そして、節電に努めていくべき日常は今後も変わらない。

……と思っていた矢先に、このようなアイテムを発見した。株式会社TESニューエナジーが6月末より発売しているのは『発電鍋』。
どういう鍋かというと、その名の通り。
この鍋を利用すると、発電ができるらしいのだ。

使い方だが、この鍋でお湯を沸かしてみる。熱源はガスでも良いし、薪、炭、がれきなどアウトドアでのシチュエーションでも対応可能。
そしてお湯が沸騰した頃合いが、充電が始まるタイミング。沸騰しているということは、鍋の中は100度になっており、鍋の底は550度を超えることになる。
発電に利用するのは、この温度差。
『発電鍋』には、鍋の底と内側の間に「熱電モジュール」が仕込まれており、底と内側の温度差によって発電が可能になるとのこと。この技術を、俗に“熱電発電”というそうだ。

こんな身近で、こんな風に発電ができるだなんて! 夢に見たことはあったけど、実際に形になるのだな……。そこで、このような鍋を開発したきっかけを同社に伺ってみた。
「震災直後、被災地の様子がテレビで頻繁に放映されていました。その時、被災者の方がたき火で暖をとっていらっしゃったんですね。
『あの熱を、何かに使えないか?』と思い、この鍋を開発いたしました」(同社・藤田社長)
震災が起こってからの数日間、被災者の安否確認が滞っていたのは記憶に新しい。そこで、外にいながらも携帯電話の充電ができる方法はないかと考えた藤田社長。だからこそ、鍋の取っ手の部分にUSB端子を付けた。そこから携帯電話やラジオなどを充電できるようにするためだ。

また、“発電”と“鍋”の組み合わせが最適な理由には、もう一つある。
「鍋は、自然災害の際の水の確保に必要な物です。
汚い水でも煮沸すれば、使用することができますし、インスタントラーメンも作れます」(藤田社長)

こうして開発された『発電鍋』だが、反響は予想以上だった。
「南アフリカでは、携帯電話は多くの方が持っているのですが、電気が普及していないようなんです。ですので、現地のユニセフなどからの反響が大きかったです」(藤田社長)
また、アメリカやカナダからはアウトドアにおける携帯電話の充電という用途で高評価を獲得している。どちらかというと、国内よりも海外からの反応が大きいそうだ。

そんなワールドワイドな活躍を見せている『発電鍋』は、同社のホームページにて問合せを受け付けている。価格は24,150円(税込み)。

ちなみに、「防災の日」である9月1日からは14,750円という価格設定で販売されるという。

そして、今後の展開について。
「現在の『発電鍋』は最大2ワットまで発電ができ、iPhoneを始めとした携帯電話や携帯音楽プレーヤーに対応が可能です。しかし、iPadやパソコンを充電したいという声もいただいており、今月末には鍋のサイズを大きくして10ワットの充電が可能な、新しい『発電鍋』を発売する予定です」(藤田社長)

これからは、このようなアイテムがドンドン普及する世の中になっていく気がする。
(寺西ジャジューカ)