『小学館ミニレディー百科』に見る、女子の関心の移り変わり
(上)最も人気があったと思われる、『少女まんが入門』。<br>(中)大人になった今読んでもかなりおもしろかった『あなたも詩人』。<br>(下)ここまで似ていて大丈夫だったのか……逆に心配になってしまう秋田書店の『ビバレディー百科』
私が小学生だった頃に大人気だった『小学館ミニレディー百科』。1970年代中盤から1990年代にかけて出ていた少女向けの百科事典で、かなり幅広い世代を網羅しているので少女時代に手にとったことがあるという女性は多いのではないだろうか。


百科事典といってもおかたいものではなく、おしゃれやお菓子づくり、星占いなど女の子の趣味にまつわるテーマを扱い爆発的な人気を誇ったシリーズだが、最近これをまとめて見る機会があった。すると、70年代、80年代、90年代と時代が新しくなるにつれ、少女たちの関心の移り変わりが見てとれてなかなかおもしろい。

70年代に出たもので印象的だったのは、『あなたも詩人』なんていう文芸系とか『エチケット入門』などマナーに関するもの。この頃は内面を磨く系のものが多かったんだなぁ〜。『あなたも詩人』なんて、現代では考えられないラインナップです。
個人的に最も印象的だったのは、画像の『少女まんが入門』(昭和50年)! これ、姉が持っていて恥ずかしながら私もこれでまんがの練習をした遠い記憶がございます……。
奥付を見るとすでに27刷目! それもそのはず、萩尾望都や竹宮惠子など、これ以上は望めないであろう超豪華講師陣。「作例」として、『ポーの一族』や『風と木の詩』などの美しすぎるカットがふんだんに使われているのもすごいです。

これが80年代に入ると『英会話入門』や『世界のお菓子づくり』『愛のフランス料理』等が出てきて、国内から海外へ目を向けはじめた「国際化」の波が感じられました。
さらに、90年代に入ると『ドキドキ両思い診断』とか『知りたい!BF(カレ)のハートわくわくチェック』など、色恋系のものがやたら目につくような……。さらに、『わたしの心霊体験』などオカルト系のものが加わっているのも印象的。
現代にもしこの『ミニレディー百科』を復活させるとしたら、『あなたもアイドルになれる!』とか『かわいいヘア&メイク入門』とかになるんでしょうかね?? まあ、「レディー」という言葉自体がすでに死語なのではという気もしますが。


とはいえ、70〜90年という約20年間の流れのなかで見ていくと手を変え品を変え出てくるテーマの傾向はだいたい決まっていて、普遍的な人気があるのは「おしゃれ」「お菓子づくり&お料理」「少女まんが」「手づくり」「インテリア」「ペット」「恋占い」などなど。どんなに時代が変わろうとも、女子の関心事はそんなに変わらないんだなぁ〜としみじみ。

さらに、この小学館ミニレディーの成功に負けじと(?)発売したらしき秋田書店の『ビバレディー百科』というそっくりシリーズも発見(画像参照)。中でも『私の本づくり入門』(昭和56年)という本が興味深く、「自分」を主人公に絵本やマンガを書いてみましょう! という提案にはじまり、出版社や印刷所へ見学にいって実際に本づくりの流れを勉強したりとミニレディーに劣らぬ充実の内容でした。これを読んで、実際に編集者や絵本作家になった女子がいたかも!?

感受性の強い10代に頃に読んだ本って強烈な印象を残すことが多いもの。改めて手にとってみると、これらのシリーズは子ども向けだからとヘンに扱う話題のレベルを下げたりせず、「売れりゃなんでもいーじゃん」という姿勢でもないところがすてき。
少女たちのためによいものをつくろう、という当時の出版人たちのアツイ心意気が感じられ、今さらながら「おかげさまで、楽しい少女時代でした」とお礼を言いたい気持ちになりましたよ。
(野崎 泉)