チャイナ茶ばなし茶の煙 第23回

冷たい風で、軽みのある茶葉が育つ-ANOMA亭主:星川康江

■鳳凰単叢の故郷では、至るところで「工夫茶」

 日本では冬の支度を始めるころ、11月も後半になると、広東省にある鳳凰山では、冬のお茶が採れ始めます。春のドッシリとした、旨味も香りも凝縮されたお茶とは異なり、冷たい風に当たり、華やかで軽やかな茶葉が育つのです。


 11月下旬、鳳凰単叢の故郷に雪片を求めて出かけて参りました。

 街中、至る所で工夫茶を見かけます。歩道の片すみでも、公園の中でも、スーパーのレジ横にも、とにかく至る所にお茶があるのですから。

 何年も前に鳳凰単叢を求めて鳳凰山まで出かけた時も、山の村の商店にだって、工夫茶がセットされていたことを、あらためて思い出しました。

 こんな、お茶だらけの街、しかもそろそろ雪片が採れる季節。あっという間に目的は達せられると思っていたのに、なぜか、雪片を売っている店を見かけない。

 どうしてだと思います? ……そう、製茶の真っ最中だったのです。

■現地では「春茶」の方が圧倒的人気

 店先では、大きな笊や板を出して、茎の部分や、きちんとよじれなかった葉をどんどんより分けてゆきます。時にひとりで、時にふたりで、おしゃべりの合間にも、どんどんと手が進みます。

 潮州の街中では出会えないかもと予想をしていたので、訪れる前に、ちゃんと山の上のお茶屋さんに連絡を入れておきました。おかげで何種類も品茶(試飲)ができるようにしておいてくれ、美味しいお茶を手に入れることができました。

 もちろん何軒かのお茶屋さんでは、春茶を含めた美味しいお茶をゲット。


 さて、雪片です。

 日本でも、ここ数年、雪片の人気は高くなってきましたね。現地でも、きっと人気が高いものだと、思いこんでいたのですが、実際は、ちょっと違っていたのです。

 どのお茶屋さんと話しても、「なんで雪片ばかり欲しがるの?」と言われます。春茶の方がずっとクオリティが高いよいお茶だと言い、春茶を勧めるのです。

■ワインでいえば、ボジョレーヌーボー

 雪片と言うのは、ワインでいうところのボジョレーヌーボーのような、存在だったのです。軽やかな華やかさが特徴ですが、ボディも軽いお茶なのですね。

 日本に戻り、少しずつ残しておいた、茶葉をチェック。

 5-6年前の雪片は、すでに香りも味もなく、「形だけが、お茶」という状態でした。しかし、同じ時期の春茶はというと、熟してさらに濃厚になった香りを悠然と漂わせているものもあるのです。

 茶商のおじさん達が言っていたことに、あらためて感じ入っている所です。

 お茶というものは不思議なもので、たとえ1年中同じような気候の所でも、必ずクオリティシーズンというものがあるのですね。
ちょうどよい時期にちょうどよい風が当たると、本当にすばらしい香りが出てくるのです。

 年末年始となり、日本でも雪片が出そろって来ています。皆さんも、「お茶のヌーボー」を楽しんでくださいね。

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