欧州を襲う記録的な熱波を背景に、中国メーカーが生産する移動式エアコンの需要が急拡大している。ドイツやフランス、イタリアなどでは高温が続き、設置工事が不要な移動式エアコンが注目を集めている。

ドイツでは6月26日から28日まで3日連続で国内最高気温を更新し、27日には東部メッケルン・ドレビッツで41.5度を観測。ドイツの気象観測史上最高を記録した。フランス西部でも43度に達し、6月としての最高気温を更新した。推計では、6月25日に35度を超えた欧州地域の人口は1億人超とされる。イタリアでも27日、18都市に最高レベルの「赤色警報」が発令された。

一方で、欧州のエアコン普及率は約20%にとどまる。背景には、設置・費用・電気料金という「三つの壁」がある。

まず、多くの欧州諸国では歴史的建造物や老朽建築が多く、外壁への穴開けや室外機の設置が制限されている。仮に設置が認められる場合でも、行政手続きに数カ月を要するケースが少なくない。

次に、導入コストの高さも課題だ。一般的な壁掛け式エアコンの本体価格は600~800ユーロ(約11万~14万円)程度だが、設置工事費は1500~2000ユーロ(約27万~37万円)に達し、本体価格を大きく上回る。専門業者の手配にも2カ月以上待つことがあるという。

さらに、電気料金の高さも普及の妨げとなっている。独ベルリンでは家庭向け電気料金がおおむね1キロワット時当たり0.4ユーロ(約70円)で、一般的な家庭用エアコンを1日8時間使用すると、1カ月の電気代が100~150ユーロ(約1万8000~3万7000円)程度増加するとされる。

こうした状況下で冷房需要が急拡大する中、中国江蘇省常州市武進区に本社を置く江蘇友奥智能科技では、海外倉庫の在庫がほぼ完売し、電子商取引(EC)サイトでは2万台以上を販売。現在は在庫不足の状態が続いているという。

欧州で熱波、中国製移動式エアコンの販売が1000倍に急増

同社の呉清平(ウー・チンピン)董事長は取材に対し、「当社製品の95%以上を輸出しており、移動式エアコンや除湿機は世界100以上の国・地域で販売している」と説明した。同社製品は北米や欧州を中心に展開され、世界シェアは16%に達するという。

2025年上半期の輸出事業売上高は8億2300万元(約197億円)で、前年同期比10.38%増となった。26年夏には、「カルフール」で6月22日だけでエアコンと扇風機が3万台販売され、通常時の約1000倍の売れ行きとなった。同社工場の生産ラインもフル稼働が続いている。

欧州で熱波、中国製移動式エアコンの販売が1000倍に急増

同社が製造する移動式エアコンは室外機の設置が不要で、コンセントにつなぐだけで使用できるのが特徴だ。開発担当者は「本体背面には給気口と排気口があり、室外機を窓の外に設置する必要がないため、欧米市場のニーズに適している」と説明する。

また、同社の壁貫通型エアコンや縦型ウインドーエアコンは、米国、ドイツ、韓国、フランスなどで高い市場シェアを持つという。

25年時点で保有特許は1156件に上り、約20年にわたる技術開発の成果が競争力を支えている。(記事/RR)

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