「キュレーションメディア問題」が、世間を騒がせています。

元を辿れば、DeNAが運営するキュレーションサイト「WELQ(ウェルク)」が、医療・健康情報を扱う媒体であるにも関わらず、薬機法違反と思しき誤った記事を載せていたことがきっかけで、問題視されるようになりました。

健康に関する情報というのは、受け手の身体に影響を及ぼす可能性があるもの。だからこそ、メディアは厳正に吟味してから情報を公開すべきであり、いいかげんな知識を広めてしまっては社会的制裁を受けても致し方ないというものでしょう。

今から約10年前に放送された『発掘!あるある大事典』も、そういった社会的制裁を受けたメディアコンテンツの一つ。この番組は、スタッフが都合の良いようにデータを改ざんしていたという点で、ある意味、「WELQ(ウェルク)」よりも悪質だったといえるかも知れません。

『発掘!あるある大事典』の放送で納豆の品切れ続出


『発掘!あるある大事典』は、1996年~2007年に放送されたフジテレビ系列の生活情報番組。毎回、健康・からだ・食に関する様々な情報を紹介し、平均視聴率は15%前後と、安定した人気を誇っていました。

問題になったのは、2007年1月7日の放送。
『食べてヤセる!!!食材Xの新事実』と題した、納豆によるダイエット効果を特集した回です。内容としては、納豆に含まれるイソフラボンを摂取すれば、副腎皮質から分泌されるDHEAというホルモン物質が増加してダイエットに繋がる、といったもの。
安価で身近な食品を取りあげたためか、放送終了後の反響はすさまじく、全国各地のスーパーで納豆の売り切れが続出。入荷時期も全くの未定という、前代未聞の納豆フィーバーが巻き起こりました。

実験データや教授のコメントをスタッフが創作していた


こうしたブームの一方、ごく少数ではありますが、嫌疑の目を向ける人たちもいました。というのも、以前から『発掘!あるある大事典』に対しては、専門家から「無意味な実験を行っている」「データの根拠が曖昧」などの指摘が上がっており、2006年には『また「あるある」にダマされた。』なる批判本まで出版されていたのです。


そういった背景もあって、雑誌『週刊朝日』が独自で取材を敢行したところ、捏造と思しき箇所が次々と発覚。1月26日号で「納豆ダイエットは本当に効くの?」なる記事を掲載し、同時に制作にあたった関西テレビへ質問状を送っています。
これを受けた関テレは内部調査を実施。すると、行ってもいない検査データと、被験者と無関係な写真資料を番組内で表示していたことが判明。さらには、教授のコメントまでもがスタッフの創作だと明らかになったのです。

納豆ダイエット以外にも10件以上の余罪が


当然ながらこの一件は、当時のニュース・新聞で大々的に報じられます。
その社会的影響の大きさから、1月21日には通常放送が急遽中止になり、5分間の特別謝罪番組が放送されるという異例の事態に発展。翌22日には、長らく一社提供を担当してきた花王が、スポンサーを降板すると発表。これにより、番組の存続は難しいものとなり、23日、正式に『発掘!あるある大事典』は打ち切りが決定したのです。
しかし、騒動はこれで終わりません。納豆事件の後、関西テレビが立ち上げた調査委員会の調べによると、あるある大事典では過去に10件以上、似たようなデータ改ざん、過剰演出がなされていたという余罪が発覚。総務省からは行政指導としては最も重い「警告」の処分を受け、場合によっては電波停止もありうると通告されました。


ネットから流れてくるソース不明の情報ならまだしも、公共の電波を通じて放送される実験データや権威ある人の発言までもが、恣意的に歪められていたというのは、何とも恐ろしいこと。テレビ局は内部体制をより一層強化してもらいたいものです。
(こじへい)

※イメージ画像はamazonより発掘!あるある大事典〈3〉