第三回平均視聴率が10.5%、10%台に復活。
・なぜ学ぶのか?
・アクティブラーニング。
・デジタル万引き。
いまの学校の問題をガッツリ盛り込んで展開した第三話。
真正面どストレートな扱い方。
しかも、この3つの話題が、バラバラに扱われるのではない。
鳴海校長(櫻井翔)という人物によって、結び付けられドラマとしての大きなうねりを見せる。
鳴海校長「生徒に興味がないと言い切った及川先生にはわたしの構想から外れてもらいます」
退職した及川先生(木下ほうか)の代わりに教壇に立つことにした鳴海校長(櫻井翔)。
「起立、気をつけ! 礼」
元気よくスタートするが、「礼」で、準備してきた小道具を封筒からバサバサと落として、「ああああー」と叫んでしまう。
気張って言った「起立、気をつけ、礼!」のテンションにつられて「ああああー」も大声。テンパり具合マックスなのが伝わってくる。
だが、ここからどうにか持ち直す。
アクティブラーニング型の授業をはじめ、生徒たちは興味津々である。
最初は上手くいきそうにも見えたのだが、あと6分しかないのに、生徒の半分も正解できてない。
ただ丸投げしただけでは、うまくいかないのだ。
最後に質問される。
「関数とか微分積分とか役に立ってますか?」
校長「え?」
「仕事とかしてて使ったことあるんですか」
校長「……ないです」
「じゃあ、こんなの勉強して何の意味があるの?」
困り顔。
校長「それは……勉強すればいい大学に入れるし、いい会社に入れれば、幸せな人生が送れる……」
あちゃーって感じで目を伏せる見学中の先生・真柴ちひろ(蒼井優)。
校長「っていう保証はない……んだけど、確率は高くなる……っていうか」
チャイムが鳴る。
生徒たちも、残念な気持ちがあふれている。
「わたしも期待してました」
と、矢部先生(森川葵)。

デジタル万引き問題は、真柴先生が手練れのやり方で問題をおおごとにせずに収める。
その方法に、鳴海校長は納得できないようす。
だが、サラリーマン的な自分の立場を考えると、おおごとにしないでおきたい。
蒸し返すべきではないと黙ってしまう。
関係ないように見えるふたつの事件が、ちゃんとテーマを通して結びつくのだ。
「あれには方法論があるんです」
英語の島津先生(瀬戸康史)は、アメリカ留学中にアクティブラーニングの方法論を学んでいた。
「どうしてやらないの!?」
と驚く鳴海校長に、島津先生は「いままでの校長が許してくれなかったからです」と答える。
効果に保証がないから許されなかったのだ。
島津先生「ぼくは許します。ぜひやってください」
ここから、ドラマは島津先生の英語の授業をじっくりと見せる。
「基本的に英語しか喋りません」
学生同士で対話させるが、島津先生は、丸投げして放っておくわけではない。
他の人に答えを教える生徒を止めたり、場がグダグダにならないようにファシリテートする。
鳴海校長と島津先生の授業の違いをもっと戯画化してわかりやすく提示することもできただろう。
だが、『先に生まれただけの僕』はそれをしない。
最後の質問に対する回答もふくめて、じっくり6分間アクティブラーニングの授業をドラマの中で誠実に描く。
「なんのために学ぶのか?」という質問をされて、校長のせいでこうなったと怒る先生たち。
同じように質問を受けたのに、「なぜ学ぶのかという根本的な質問を投げかけるきっかけを作ってくれたのは校長だ」と感謝する島津先生。
この違いは、島津先生自身が、授業や学校の変革に対して能動的に関わりはじめたからだ。
島津先生の授業を観て影響を受けた鳴海校長は、ドラマの最後、「なぜ学ぶのか」「なんの役に立つのか」を全校生徒に話す。
社員バッチを外して。
鳴海校長も、サラリーマン的な立ち位置を超えて、島津先生のように能動的に関わる決意をした。
だから、最後に「デジタル万引きの件」を、「なんでまたそれを」と嘆かれるのを分かっていても再び「蒸し返す」のだ。
能動的、主体的に事態に挑む。
アクティブラーニングで一番重要なポイントを鳴海校長が自身の行動で示した。
「数学なんて何の役に立つの?」という質問は受け身だ。
能動的な質問に変換するならば、こうだろう。
「役に立つために、われわれはどう数学を学べばよいのか?」
『先に生まれただけの僕』は、まっすぐだ。
教育における今の問題をどんどん盛り込んで、次々と事件は起こる。
だが、奇をてらった方法や、魅惑的な暴論や、情緒的な根性論で、解決しない。
まっすぐ。
櫻井翔のキャラクターがドラマに反映されているのだろう。
「NEWS ZERO」でのリポートやインタビューで見せる真摯な姿勢。
こどもでも大人でも同じように接する態度。
「嵐」のメンバーからも頼りにされ、まとめ役なのだそうだ。
鳴海校長が、「なぜ学ぶのか」「なんの役に立つのか」をどのように語ったのかは、ぜひドラマを観てください。
公式サイト「先に生まれただけの僕」
公式Twitter「先に生まれただけの僕」
見逃した人はhuluで観れるよ。(米光一成)