「もっと収入が増えれば、お金の不安も消えて幸せになれるのに」——そう信じて頑張り続けていませんか?

しかし、ファイナンシャル・ウェルビーイング研究者の櫻井かすみさんによると、年収1000万円を超えても「不幸」を感じる人は一定数存在し、いくら稼いでも「まだ足りない」と追われ続ける人には共通の原因があると言います。

この記事では、櫻井さんの著書『不安通貨 貯金や投資で消えない「お金の不安」を最新科学で解決』(Gakken)より一部抜粋し、収入増だけでは埋まらない「幸福度の真実」を紹介します。


■年収1000万円超でも「不幸せ実感」が消えない理由
「年収が上がれば、人は幸せになれるのか?」

多くの人が一度は考える問いではないでしょうか。実際、収入が増えるほど安心できそうに思えますし、「もっと稼げば不安はなくなる」と感じる方も少なくありません。

確かに、パーソル総合研究所×慶應義塾大学前野隆司研究室「はたらく人の幸せに関する調査」では、年収が高い人ほど“幸せ実感”が高まる傾向が示されています。一見すると、「やはりお金が多いほど幸せなのでは?」と思えるかもしれません。

しかし同じ調査では、興味深い結果も示されています。それは、年収が1000万円を超えても“不幸せ実感”はゼロにならず、一定水準で下げ止まるということです。つまり、お金は幸せに関係する大切な要素ではあるものの、それだけで不安や不満が消えるわけではないのです。

■「年収1000万円の不幸な人」と「年収400万円の幸せな人」の違い
また、ある比較事例では、「年収400万円でも幸せな人」と「年収1000万円でも不幸な人」を比べた際、印象的な違いが語られていました。

年収1000万円でも不幸を感じている人は「お金が足りない」「もっとお金が欲しい」と感じ、信頼できる人間関係が少ない傾向があった一方で、年収400万円でも幸せを感じている人は、「これだけもらえてありがたい」「今の生活に感謝している」と、日々の暮らしや人とのつながりに満足していたといいます。

ここで見えてくるのは、幸せを決めるのは“いくら持っているか”だけではなく、“どこに価値を置いているか”でもあるということです(※参考:『年収が増えれば増えるほど、幸せになれますか?:お金と幸せの話』前野隆司/河出書房新社)。

■収入より重要? 幸福度を大きく左右する「4つの因子」とは
さらにパーソル総合研究所の調査では、幸福度を構成する要素として、次の前野隆司先生の「幸せの4つの因子」が活用されています。

「やってみよう(自己実現と成長)」
「ありがとう(つながりと感謝)」
「なんとかなる(前向きと楽観)」
「ありのままに(独立と自分らしさ)」

ここから見えてくるのは、幸せを決めるのは「いくら持っているか」だけではなく「どんな状態で生きているか」ということです。


どれだけ収入が増えても、自分らしさを失っていたら。信頼できる人とのつながりがなかったら。未来に希望を持てなかったら。

お金だけで幸福が完成するわけではありません。

幸福は収入だけではなく、人とのつながりや感謝、前向きさ、成長実感といった複数の要素が重なって形づくられていきます。つまり、お金は幸せの一部を支える大切な要素ではあっても、幸せそのものを単独で決めるものではないということを、感じていただけるのではないでしょうか。

■収入が増えても「まだ足りない」が終わらない……「不安通貨」の正体
これは、私が提唱する「不安通貨」と「幸せ通貨」の違いにも重なります。

不安通貨は、「もっと収入があれば安心できる」という前提で動きます。しかしこの考え方では、収入が増えても基準が上がり続け、「まだ足りない」が終わりません。

一方、幸せ通貨は“自分にとって満たされる状態は何か”を基準にします。だからこそ、お金の額だけでなく、誰と過ごしているか、どんな時間を使えているか、自分らしく選べているか、といった要素も含めて、幸福が形づくられていくのです。

改めて、お金は、人生を支える大切な道具です。
でも、お金そのものが幸せの土台をすべて担えるわけではありません。

だからこそ、問い直したいのです。「自分にとっての幸せは、どこにあるのか?」「そのために、お金をどう使いたいのか?」この問いに自分の言葉で答えられるようになったとき、お金はただの数字ではなく、人生を支える“幸せ通貨”へと変わっていくのだと思います。
この書籍の執筆者:櫻井かすみ プロフィール
ファイナンシャル・ウェルビーイング研究者、ママ金融教育家、ファイナンシャルプランナー。株式会社トウシナビ代表。投資詐欺や貯金ゼロなどを経験した後、資産形成を実践。現在は大学院で「お金」とウェルビーイングについて研究している。著書に『投資への不安や抵抗が面白いほど消える本』『母が子に伝えたい大切なお金と社会の話』(いずれもGakken)などがある。
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