世界の外食産業は、パンデミック後に客足を戻しながらも、人手不足、食材価格、賃料、光熱費の上昇に直面している。店内売上だけへ依存する経営は揺らぎやすくなり、テイクアウト、配達、卸、ケータリングと複数の収益源を持てるかが、企業の耐久力を左右するようになった。
問われているのは料理の質だけではない。需要が変わった時に、人、設備、仕入れを組み替える経営力である。
日本でも、農林水産省は外食産業の人手不足を深刻な課題に挙げる。営業時間を維持できず、店を閉める事業者がいる一方、地域には食事を届ける機能と、働く場としての飲食事業が欠かせない。出店数を競うだけではなく、仕出し、卸、福祉と周辺の需要をつなぎ、一つの厨房や人材を複数の価値へ変える企業が、新しい成長の形を模索している。
ANDDINING株式会社は、その転換を創業直後から迫られた。最初の店を開いたのは2020年3月。わずか約3週間後に外出自粛が広がり、前年実績のない会社は支援も受けにくかった。桜井仁天代表は「来てもらえないなら、こちらから届ける」と考え、自転車で回れる範囲から仕出しと配達を始めた。15歳から約30年、飲食の現場で働いてきた経験が、計画外の状況で事業を組み直す土台となった。

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もともとANDDININGは2019年9月に設立され、飲食店を増やす計画を描いていた。ところがコロナ禍で、その前提を一度すべて見直すことになる。
仕出しを始め、近隣の飲食店から食材の相談があれば卸にも応じた。二店舗目には大きな冷蔵設備を設け、一般客への販売、店内飲食、近隣店への卸を一つの場所で動かせるようにした。
仕出しと卸によって仕事の種類が増えたことは、かねて考えていた福祉事業を現実へ移すきっかけにもなった。桜井氏には、障害のある家族を身近で見てきた経験から、いつか雇用の場をつくりたいという思いがあった。ただ、善意だけでは事業は続かない。そこで株式会社ANDSMILEを運営法人として就労継続支援A型事業所を展開し、弁当の梱包、パソコン業務、ウェブ制作など、利用者の特性に合う仕事を用意した。雇用と収益を両立させる形を選んだのである。
仕事の場をつくると、次に見えてきたのは、就労だけでは解決できない相談だった。利用者や家族から生活に関する声が届くようになり、株式会社ANDSMILEは特定相談支援事業所の運営にも事業範囲を広げた。一つのサービスを実際に動かしたからこそ、現場で次に必要な機能が見えたという。飲食、卸、仕出し、福祉は一見別々だが、食材、配送、人材、仕事づくりという共通の線でつながっている。
現場で必要な機能を一つずつ加えてきた経験から、桜井氏が目指す会社像も明確になった。
同じ業態を同じ形で大量に出店するのではなく、物件、地域、仕入れ先、働く人の強みに合わせ、一店舗ずつ店をつくる。出店するほど現場が薄くなるのではなく、新しい人とノウハウが加わり、会社全体が強くなる形を描いている。
地域や人に合わせて店をつくる考えには、大手飲食企業で働いた経験も影響している。ファンド傘下で出店を加速し、上場へ向かう過程を内部から見て、一店舗の成功だけでなく、採用、研修、広告、店舗運営を同時に動かす仕組みを学んだ。その一方で、成長を急ぐほど現場の人を置き去りにしやすい難しさも知った。
ただ、事業同士がつながるほど、現場の管理は複雑になる。同じ設備や人材を共有できる利点があるからこそ、飲食、仕出し、卸、福祉それぞれの責任者と収支を明確にし、どの仕事がどの事業を支えているのかを把握しなければならない。

複雑さを抑えながら事業を広げる順序として、桜井氏は店を増やす前に人が育っていることを重視する。物件が見つかったから出店するのではなく、任せられる人の強みと地域の需要が重なった時に店をつくる。その順番が、急拡大によって現場が薄くなることを防ぐ。

人を先に育て、地域の需要と重なった時に店をつくる。この順序こそが、ANDDININGの信用を店舗数ではなく、環境と人に合わせて事業を組み替える実行力へ結び付けている。
今後、各事業の収益と社会的成果を示せれば、飲食と福祉を無理なく結ぶ地域企業のモデルとして、より客観的に評価されるだろう。

取材を通じて、ANDDININGの強みは計画どおりに店舗を増やすことではなく、現場で必要とされた機能を事業へ変える柔軟性にあると感じた。飲食と福祉を無理なくつなぎ、人が力を発揮できる地域の仕事を増やすことを期待したい。

【取材/執筆:Y.U】
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