「ある日、映画館でブルック・シールズ主演の映画『青い珊瑚礁』の予告編が流れたんです。南太平洋のロマンチックな世界観が聖子のイメージに重なり、『次はこれだ!』と決めました」

松田聖子(64)のデビュー曲『裸足の季節』に続く2枚目シングル『青い珊瑚礁』は、爽やかな南国リゾートのイメージと、はつらつとした歌声で瞬く間に大ヒットを記録。

高校生だった聖子を久留米からスカウトし、数々のヒット曲を手がけた音楽プロデューサーの若松宗雄さん(86)に、楽曲誕生の舞台裏を語ってもらった。

「タイトルありきで、作曲家の小田裕一郎さんに持ち込んだんです」

小田さんの自宅での打ち合わせは、忘れられない瞬間だった。

「イメージを伝えると、小田さんがギターを手に取り、即興で詞の冒頭を歌い始めたんです。メロディと言葉が一緒に生まれてくる瞬間でした」

作詞はデビュー曲も担当した三浦徳子さんに依頼した。小田さんの冒頭を引き継いで、聖子のイメージを「淡いピンク」と捉え、文学的でみずみずしい詞を紡ぎ出し、編曲を大村雅朗氏が初担当。いまでは伝説となったアレンジャーだ。

山口百恵さんの『謝肉祭』のサウンドにほれ込み、大村さんにオファーしました。彼の編曲は爽やかでポップ、かつ情感たっぷり。聖子のキラキラした声を最大限に生かしてくれました」

そこから快進撃が始まる。

「なかでも忘れられないのは、1980年8月14日の『ザ・ベストテン』(TBS系)での出来事」と若松さんは振り返る。この日『青い珊瑚礁』が8位で初ランクイン。

「聖子は札幌の仕事を終え飛行機で羽田に戻る予定でした。

番組プロデューサー・山田修爾さんの大胆な発案で『羽田空港の滑走路で聖子に歌わせる』という前代未聞の企画が出されました。

航空会社や8つの省庁の許可を得るため、スタッフが奔走したそうです。到着時間が早くなりそうになると、『飛行機の速度を落としてください!』と無茶なお願いをしたエピソードも(笑)」

放送当日、久米宏さんが「第8位! 青い珊瑚礁、松田聖子!」と発表。カメラが羽田空港に切り替わると、聖子を乗せた飛行機がゆっくりと駐機場に止まる。

「ドアが開き、淡いブルーのワンピース姿の聖子がタラップを下り、駆け寄ってその場で歌い始めたんです。飛行機をバックに、はつらつとした笑顔で『青い珊瑚礁』を披露する姿は、まさに曲の世界観そのもの。生放送の緊張感の中、聖子は堂々と歌いきりました。これはテレビ史に残る名場面となり、聖子の新時代を象徴しました」

夏の夜、青い珊瑚礁の海にいる感覚に浸ってみてほしい――。

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