釣り糸が絡まり足先を失ったフエコチドリ。奇跡的に生き延びる

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 海岸や水辺に放置されている釣り糸や釣り針、漁網などは、野生の生き物たちにとって、極めて危険な凶器になってしまうことがある。

 鳥やウミガメなどが絡まれば、動きを妨げられるだけでなく、深刻なケガどころか命にかかわることもある。

 海辺で暮らす水鳥たちも例外ではない。細い釣り糸が脚や体に絡まれば、自由に動けなくなるだけでなく、深刻な負傷につながることもある。

 そんな釣り糸が両脚に絡まり、両方の足先を失いながら、その後もたくましく生き続けている渡り鳥が話題になっている。

両足のつま先がないフエコチドリ

 足先を失っていたのは、2023年にフロリダ州タンパの南西に位置する海岸で発見された、1羽のフエコチドリである。

 発見したのは引退した渉禽類(海辺に生息する鳥)学者で、「Florida Shorebird Alliance(フロリダ渉禽類同盟)[https://flshorebirdalliance.org/]」で23年間ボランティア活動を続けているロレイン・マーゲソンさんだ。

 彼女はこの鳥に、「フェニックス・ザ・フットレス(足なしフェニックス)」と名付けた。当時の状況について、マーゲソンさんは次のように振り返っている。

ある日、両足に釣り糸が絡まったかわいそうな鳥を見つけ、すぐに保護団体と公園のレンジャーに連絡しました。

釣り糸を外してやろうと、約2か月にわたって20回ほど捕獲を試みたのですが、そのたびに飛んで逃げてしまったんです

 発見から約1か月半がたったころには、フェニックスの足先は壊疽が生じて黒く変色し、一部が脱落し始めていたという。

 状態を見守っていたマーゲソンさんは、もし捕獲できたとしても、苦痛を長引かせないために安楽死させる必要があるかもしれないと考え始めた。

 当時のフェニックスについて、マーゲソンさんは「どれほどつらかったことでしょう」と話している。

 ところが後日、彼女が再び浜辺を訪れると、予想外の光景が待っていた。両足先を失ったフェニックスが、仲間に混じって砂浜を走り回っていたのである。

 人の手を借りず、治療も受けずに傷が治っていった…。「フェニックス(不死鳥)」という名は、その驚くべき回復ぶりにちなんでつけられたものだそうだ。

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無事北へ渡り、メイン州でも目撃される

 フェニックスは、足先を失った最初の年の夏は北へ渡らず、傷が癒えるまでの間はフロリダに残っていたという。

 だがその翌年の夏からは、仲間のフエコチドリたちと同じように、再び北へ向かっての渡りをするようになった。

 そして2026年夏、フロリダから遠く離れたアメリカ北東部にあるメイン州で、少し変わったフエコチドリの個体が確認された。

 確認のきっかけは、砂浜に残された奇妙な足跡だった。フエコチドリの足には前向きの3本の指があり、砂の上には内股で歩く特徴的な足跡を残していく。

 ところが、この個体が残す足跡は、通常のフエコチドリのものとは明らかに違っていたのである。

 メイン州をで野生動物の保護活動を行う「Maine Audubon[https://www.facebook.com/maineaudubon/]」で、フエコチドリなどの保護に携わるローラ・ミニッチ・ジツキーさんは、この個体を発見した時の様子を次のように説明している。

私たちはいつも砂浜で、フエコチドリの足跡を探しています。彼らは特徴的な3本指で、内股歩きをするんです。

最初は、何なのかよくわからない奇妙な足跡に気づきました。その後、指のない個体を見つけたので、「ノー・トーズ(爪先なし)」と呼んでいました

 7月になると、「ノー・トーズ」の存在はバードウォッチャーの間ではかなり知られるようになり、その写真が拡散されるようになってきた。

 そしてある日のこと、生物学者のアレックス・ラモローさんがマーゲソンさんに「ノー・トーズ」の写真を見せ、この鳥を知らないかと尋ねたのだ。

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 写真を見たマーゲソンさんは、「ノー・トーズ」の特徴的な足先から、間違いなくフロリダの「足なしフェニックス」と同じ個体だと確信した。

こんな見た目をした鳥はほかにいません。私自身、鳥でこのようなケガを見たこともありません

 標識番号などによって識別されたわけではないのだが、それ以来、メイン州で見つかった「ノー・トーズ」は、フロリダの「フェニックス」として、バードウォッチャーらから見守られるようになった。

 足先を失っているフェニックスだが、現在の行動を見る限り、その動きからは障がいを感じさせる様子はない。

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 メイン州でのフェニックスは、砂浜で餌を探し、近づいてきたほかのフエコチドリから自分の縄張りを守る行動も観察されているそうだ。

 また、これまでフェニックス自身のヒナが確認されたことはないものの、最近ではMaine Audubonが観察したところでは、営巣に向けた行動も見せているという。

北米大陸を南北に移動する小型の渡り鳥

 フエコチドリ(学名:Charadrius melodus)は、北米の海岸に分布する小型の渡り鳥だ。夏には北を目指し、冬になると再び南大西洋沿岸やカリブ海と渡ってくる。

 体長は約17cm、体重40~65gほどで、砂浜に溶け込むような淡い灰褐色の羽毛を持っているのが特徴だ。

 繁殖期になると地面に浅いくぼみを掘って巣作りし、卵からかえったヒナはわずか数時間で巣を離れ、自分で餌を探し始める。

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 ジツキーさんは、ヒナたちは放置された釣り糸などが足に絡まる危険に、常にさらされていると指摘する。

特にヒナは注意が必要です。

フエコチドリは成鳥になると、それほど頻繁に歩き回らなくなりますが、ヒナは孵化してから数時間もすれば動き回れるようになり、浜辺のあちこちを走り回ります。

私たちは以前、人間の髪の毛に絡まってしまったヒナを捕まえたことがあります。そのヒナは片脚が腫れ始めていましたが、無事に髪の毛を取り除くことができました

釣り糸・釣り針による被害を減らすために

 人間が放置した釣り糸による野生動物への被害は、実は珍しいことではない。フロリダのある野鳥救護施設では、受け入れる鳥の少なくとも40%が、釣り糸や釣り針による負傷だという。

 釣り糸が翼や足、首などにきつく巻き付けば、ケガはもちろん、動きを制限されることで脱水症状に陥ったり、飢えに直結したりするケースもある。

 その中でこのフェニックスは、人の手で保護できなかったにもかかわらず、自力でケガを乗り越え、再び渡りをするまでに回復した珍しい例となった。

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 もちろん、こうした被害を受けた鳥がみんな、フェニックスのようにハッピーエンドを迎えられるわけではない。

 フロリダ州魚類野生生物保護委員会(FWC)は、釣り人に対して「Don’t Cut the Line!(糸を切らないで)[https://myfwc.com/education/wildlife/unhook/]」と呼びかけている。

 もし釣りをしていて誤って鳥に引っかけてしまった場合、糸だけを切ってそのまま逃がしてしまってはいけない。

 ゆっくりと手元まで引き寄せて、安全を確保したうえで、釣り針と糸を取り除いてから放すことが重要だという。

 また、釣り針を飲み込んでいたり、重傷を負っていたりする場合には、無理に対処せず野生動物の救護施設に連絡してほしいとのこと。

 浜辺などで釣り糸に絡まった鳥を見つけた場合も、まず状況を確認し、必要に応じて現地の保護団体などに助けを求めることが推奨されている。

 何よりも重要なのは、使った釣り糸を自然の中に放置しないことだ。切れたり絡まったりした釣り糸も、きちんと回収して適切に処分しなければならない。

 動物たちへの被害を防ぐために、我々人間にできるのは決して難しいことではない。最後まで自分の行動に責任を持つこと。それだけなのだ。

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References: Piping plover beats the odds after losing feet in fishing line[https://www.popsci.com/environment/footless-piping-plover-phoenix-maine-florida/]

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