約5億年前、海に降り注いだ大量のフンがカンブリア爆発を後押しした可能性
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 約5億年前のカンブリア紀に多種多様な生命が姿を現した。その理由は海に暮らす生物たちのフンが後押しをしたという興味深い仮説が打ち出された。

 オーストラリアのフリンダース大学とドイツのカールスルーエ州立自然博物館の研究者が世界36か所のカンブリア紀のフンの化石を調べたところ、ある時期を境にフンの化石が一気に増えることがわかった。

 腸を持つ生物が増えて大量のフンが海底へ沈み、深い海まで栄養が届くようになったことで、生き物の種類が爆発的に増えた「カンブリア爆発」のきっかけのひとつになった可能性があるという。

 この研究成果は『Trends in Ecology & Evolution[https://www.cell.com/trends/ecology-evolution/abstract/S0169-5347(26)00156-4]』誌(2026年8月4日付)に掲載された。

カンブリア爆発が起きた理由は海と大気だけなのか?

 今から約5億4000万年前、地球の海に残された化石の種類が急に増えた。

 現在の動物のほとんどのグループにつながる化石が、短い期間の地層からまとめて見つかるようになったのだ。

 この出来事を研究者たちはカンブリア爆発と呼んでいる。

 それまでの海には数個の細胞でできた小さな生き物しかいなかったのに、短い期間のうちに、現在の動物のほとんどのグループの祖先がまとめて出現したのだ。

 なぜ生物の種類がこれほど急に増えたのか、はっきりした理由はまだ明らかになっていない。

 研究者たちは長いあいだ、海と大気の酸素が増えたことを最も有力な理由と考えてきた。

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カンブリア紀の始まりを境にフンの化石が世界中に現れる

 オーストラリアのフリンダース大学とドイツのカールスルーエ州立自然博物館の研究チームは、海底に降り積もった生物の排泄したフンに着目した。

 古代の生態系におけるフンの重要性はしばしば見落とされていたと、フリンダース大学の進化生物学者ラッセル・ビックネル氏は語る。

 研究チームは、世界各地の博物館に収蔵されているカンブリア紀のフンの化石を調べた。フンが化石になったものを糞石(コプロライト)と呼ぶ。

 化石はオーストラリアやグリーンランド、中国、アメリカなど世界36か所の地層から見つかっており、最も古いものは約5億3880万年前で、カンブリア紀が始まった時期と重なっていた。

 それより古い時代の地層からは、フンの化石は発見されなかった。

 生き物が排泄物を体の外に出すこと自体はもっと前から行われていたはずだ。

 カンブリア紀以前のフンの化石が残っていないのは、粒としてまとまって海底に沈むようなフンが、この時期になって初めて大量に生まれたからだと研究チームは考えている。

 実際、最初の動物が現れた約6億年前の化石には、消化管がほとんど見当たらない。

 口から肛門まで食べ物が一方通行で通る腸を持つ動物が増えたのが、ちょうどカンブリア紀の始まりにあたる。

 腸ができると、食べたものは形の整ったフンとなって外へ出て、海底に沈み、化石として残るようになったのだ。

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生物が大型化するとフンが変化

 カンブリア紀が進むにつれて、フンの化石は姿を変えていった。

 初期のものは目に見えないほど小さな粒が中心だったが、時代が進むと数cmの大きさにまで育ち、中には砕けた貝殻やほかの動物の体のかけらが混じるようになる。

 生物の体が大きくなり、食べるものが変わっていった様子が、フンにそのまま記録されていたのだ。

 この変化は、消化器官がしだいに複雑になっていったことを意味する。初期の節足動物では、より幅広い食べ物を処理できる器官が進化した。

 体が大きくなるほど、残されるフンの量も増えていく。カンブリア紀の海には、それまでにない量のフンが降り注ぐようになった。

栄養たっぷりのフンが生命の進化を後押しした可能性

 海の栄養は太陽の光が届く海面近くに偏っていて、深い場所までは届きにくい。

 ところが粒としてまとまったフンは重さがあるため、海の底まで沈んでいく。

 炭素や鉄、窒素、リンといった栄養が、フンに運ばれて深い海まで届くようになった。

 深い場所に栄養が届けば、そこで暮らせる生物が出現する。

 海底に沈んだ有機物を食べる生物が広がり、フンそのものを食べる生物も登場した。

 生物が増えて体が大きくなれば、フンもまた大きくなり、運ばれる栄養が増える。

 増えた栄養がさらに多くの生物を養い、その生物がまた大きなフンを残す。

 フンと生物が互いを増やし合う流れが、カンブリア爆発を加速させたと研究チームは結論づけている。

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今はまだ仮説の段階。新たなフンの痕跡を探す

 ただし今回の研究は、すでに採取された糞石を集めて読み直したものであり、新しい化石を掘り当てたわけではない。

 フンが海の生命の進化をどこまで押し上げたのかは、まだ仮説の段階にとどまる。

 ビックネル氏は次の課題として、カンブリア紀より前の地層からフンの痕跡を探すことを挙げている。

 私たちが今ここにいるのは、5億年前の海に降り積もったフンのおかげなのかもしれない。

References: Surprising new theory for leap in evolution – News[https://news.flinders.edu.au/blog/2026/08/05/new-theory-for-leap-in-evolution-on-earth/] / DOI.10.1016/j.tree.2026.06.013[https://www.cell.com/trends/ecology-evolution/abstract/S0169-5347(26)00156-4]

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