タコが魚を腕で叩くのは、無差別な攻撃や腹いせではなく、相手をしっかりと見極めた防衛行動であることが明らかとなった。
ブラジルなどの研究チームの観察によると、タコは縄張り意識が強く、攻撃的な魚に対してのみ素早く腕で叩いたり、体の色を変化させる一方、ただ後をついてくるだけの魚にはまったく気にすることなく、餌を探し続けるという。
タコは相手を見極め、状況に応じて的確に対処していたのだ。売られた喧嘩は買うけれど、そうじゃないのなら手出しをしないってやつだ。
この研究成果は『Behavioural Processes[https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0376635726000872]』誌(2026年7月31日付)に掲載された。
魚の縄張り意識の強さでタコの対応は変わる
ブラジルのABC連邦大学などの研究チームは、ブラジル北東部の沿岸と島々の浅瀬にもぐり、マダコ属の一種、ブラジル・リーフ・オクトパス(Octopus insularis)の若い個体とサンゴ礁にすむ魚10種の間で起きた101回の遭遇を撮影した。
その結果、タコは相手の魚が強い縄張り意識を持っているかどうかで、まったく異なる行動をとることがわかった。
例えば、強い縄張り意識を持つことで知られているスズメダイの仲間は、タコに近づいて自分の縄張りから追い出そう突っついたり、叩いたりして攻撃を仕掛けてくる。
これに対しタコは、一瞬ひるんだものの、腕を素早く振ってスズメダイを叩き返した。
この緊張感のあるやりとりは平均して約14秒という短い時間で終わっている。
一方で、縄張りを持たないニザダイの仲間との遭遇は、まったく違う雰囲気となる。
縄張り意識のない魚は、タコが狩りをするおこぼれを狙って後をついてきたり、周囲をただ泳いでいるだけだ。
タコは全く気にすることなくそのまま餌探しを続けた。この穏やかなやりとりは平均で約46秒と長く続いている。
さらに研究チームは、動物の行動がどのような順序で連続して起こるかを調べる「ラグ・シーケンス分析」という統計手法を用いて映像を解析した。
その結果、タコを追い払おうとする魚と、ただついてくるだけの魚とでは、タコの行動パターンが明確に異なることが裏付けられた。
タコにもそれぞれ個性があることが判明
研究チームはタコの自然な行動を邪魔しないよう、浅瀬でシュノーケリングを行いながら撮影を行った。
現場の海は透明度が高く、時には約20m先まで見渡すことができたため、周囲の環境を含めてタコと魚の行動を広く観察することができたという。
映像を詳しく分析していくと、タコにも一匹一匹異なる個性があることがわかったという。
他の生物との接触を避ける恥ずかしがり屋なタコもいれば、魚との遭遇時に過。剰なまでに反応しやすいタコもいた。
ただし個性の違いが性別や年齢によるものなのか、あるいは一生を通じて変わらないものなのかは、今後の研究課題となっている。
また、タコは非常に強い好奇心を持っていた。
観察を続ける研究チームのカメラに興味を示し、自ら腕を伸ばして触ろうとするタコが頻繁に現れたのだ。
中には、ダイバーが潜水のために使う重りをかすめ取り、自分の巣穴へまっすぐ運んでいってしまうちゃっかり者のタコまでいたという。
敵対的な魚に対し、体の片側だけ色を変化させる
縄張り意識の強い魚に対するタコの防衛手段は他にもあった。
研究チームは観察の中で、タコが時折、自分の肌の模様を左右で異なる二つの色合いに分ける現象を発見した。
研究チームが「ハーフ・ブロッチ(half-blotch)」と名づけたこの体色変化は、縄張り意識の高い魚が近づいたり攻撃してきたりする時にだけ現れた。
タコは、魚と向かい合っている側の側面にだけ、白い円形の模様をくっきりと浮かび上がらせたのだ。
この模様を見た魚は、まるで恐れをなしたかのように後退する様子が確認された。
研究チームは、ハーフ・ブロッチがこれ以上近づくなというタコからの警告として機能しているのではないかと推測している。
ただし、魚の目に何が映っているのか、タコが意図してこの模様を出しているのかは、まだわかっていない。
野生のタコの行動は奥が深い
タコが魚を叩く行動そのものは、以前から知られていた。
一部のタコは魚と共同で狩りをするが、ちゃんと自分の仕事をしない魚を腕で叩くこともある。
今回の研究は縄張り意識の高い血気盛んな魚に対して応戦するために「叩く」という行動をとることがわかった。
タコは高度な知能を持つことで知られている。もしかしたら他にも我々の知らない魚との対応方法を持っているのかもしれない。
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References: DOI.10.1016/j.beproc.2026.105413[https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0376635726000872]











