夏の帰省ではどのような服装を選べばいいのか。スタイリストの森井良行さんは「襟つきの服なら無難という認識は間違いだ。
たとえばユニクロは、よそ行きとして使えるシャツを数多く取り揃えているが、帰省ファッションとしては一発アウトの地雷商品がある」という――。
■帰省ファッションの「正解」とは
「妻の実家に帰省するとき、何を着ようか?」
お盆が近づくにつれ、クライアントから、そんな質問が寄せられます。35℃を超える猛暑のなか、「サマージャケットは暑苦しい、けれどもカジュアルすぎる格好は避けたい」と悩む方も多いのではないでしょうか。
そして迷った挙句、無難にポロシャツというチョイスは、誰もが行き着く終着点です。たしかに襟があるからこそ、Tシャツに比べれば、よそ行きだと思われがち。ですが見方を変えれば、単に襟があるだけで、必ずしも品よく見えるとは言えません。
というのも身につける枚数が少ない夏は、他の季節以上に選び方や合わせ方に工夫が求められます。つまり、「襟があるから失礼にはあたらないだろう」という解像度で選んでしまうと、ポロシャツなのに、きちんと見えない可能性があるのです。
では一体、OKとNGを分ける違いとは何か。その答えを導くカギは、「ポロシャツのルーツ」にありました。
■ポロシャツには「3種類の用途」がある
ポロシャツ選びで失敗する人は、そのデザインが「どれも変わらない」という勘違いをしています。たとえばポロシャツのルーツが、スポーツウエアであることは有名ですが、誕生からおよそ100年の時を経て、生地感やデザインから「3種類の用途」に分かれます。
それが大人カジュアル、スポーツ、ユニフォームです。
つまり帰省ファッションのポロシャツ選びで失敗する人は、大人カジュアルではなく、スポーツやユニフォーム要素が強いものを無自覚に選んでいます。実際ユニクロにおいても、色のみならず、生地感や型番もさまざま。そして場面に合っていないポロシャツ姿は、品よく見えるとは言えません。
では、帰省ファッションとして一発アウトなポロシャツの正体と、最適なポロシャツを判別する具体ポイントをお伝えします。
■ユニクロで見かける「一発アウト」のポロシャツ
まずスポーツ要素が強いポロシャツは、速乾や冷感など機能重視のあまり、テカテカした光沢という特徴があります。たとえばユニクロの「ドライEXハーフジップポロシャツ」(税込2990円)は、まさにスポーツ用途のもの。ボタンの代わりにファスナーを使うことで、ワンタッチで胸元の開き具合を調整できるデザインからも明らかです。
この手のスポーツ要素が強いものは、よそ行きというより、普段着というイメージがあるため帰省ファッションには向いていません。またベーシックな無地ポロシャツも、パンツの合わせ方次第で「ユニフォーム」に見えてしまいます。とくに作業着をルーツにもつベージュのチノパンとポロシャツというコンビネーションは、よそ行きとしての難易度が高いのです。
では帰省ファッションとして最適な大人カジュアルのポロシャツには、どんな特徴があるのか。
じつはユニクロの新作に正解がありました。
■プロが教える「正解」の見分け方
いちばん簡単に見分けるコツは、ボタンの有無です。胸元のボタンがないものはスキッパーポロと呼ばれ、大人カジュアルやリゾートに向いています。今季のユニクロで発売された「ウォッシャブルスキッパーポロセーター」(税込2990円)は、まさにその「正解」だと言えます。
英語で「船長」という意味をもつスキッパーは、諸説ありますが、海上活動を快適にするため、胸元のボタンがないシャツのデザインとして生まれたもの。つまり元々シャツのデザインとして生まれたスキッパーデザインが、ポロシャツに取り入れられたため、この手のポロシャツは、スポーツというよりマリンリゾートを想起させるのです。
しかもスキッパーデザインのポロシャツは、ユニクロのみならず、各社ともニット地が主流のため品の良さが伝わりやすく、大人っぽいのです。ボタンがないことで「だらしなく見えるのではないか」と思われるかもしれませんが、その心配はありません。一般的なポロシャツに比べ、胸元の切り込みが浅めにつくられているため、ボタンなしでもスッキリした印象です。
まさに大人カジュアルとして最適なアイテムですが、ユニクロのみならず、百貨店やセレクトショップでも見かけます。ボタンがないというデザインは同じですが、素材や襟のカタチに幅がありますので、お好みのものを試着してみてください。
■だらしなさを払拭する「3つの絶対法則」
ここまで前提となる大人カジュアルのポロシャツ選びについてお伝えしてきました。
とはいえスキッパータイプを選んだとしても、「着丈の長さ」や「合わせるパンツ」次第では、だらしなさを拭えません。
そこで大人のポロシャツ姿を洗練させる3つのポイントを解説します。
①長すぎる着丈は避ける
ポロシャツの長い着丈は、視覚的な重心が下がるため、年齢にそぐわないルーズで野暮ったい印象に見えます。
ポロシャツにおける最適解は、「イージースラックスのポケットが、半分見え隠れする程度の長さ」に設定すること。ジャケットのようなサマーアウターを羽織らない一枚姿のコーディネートでは、トップスの丈感が、ウエスト位置になるため、着丈が長いほど、胴長短足に見えるという弊害もあります。
もし手持ちのポロシャツの丈が長すぎる場合は、迷わずお直し(裾上げ)に出すことがおすすめ。またサマーニットのものならば、裾のリブが適度な引っ掛かりを生み、自然と腰位置で留まるでしょう。つまりは、自然に丈感を調整できるのです。
②肌着はベージュで存在を消す
夏特有の「汗対策」として、ポロシャツにも肌着を合わせてください。このとき、白い肌着やTシャツが首元からチラリと見えている方を見かけますが、これはNGです。
汗を吸収するために身につける肌着は、清潔をキープする目的にもかかわらず、存在そのものから「汗」を想起します。つまり、「肌着=生活感」のイメージがあるため、ベージュ色を選ぶことで、肌に同化させるのがおすすめです。

これでポロシャツの下に肌着を合わせたとき、首元から覗いても悪目立ちしません。インナーの存在は隠しつつ、汗の速乾機能を取り入れてください。
③イージースラックスで品よく見せる
またユニフォーム感を減らすべく、チノパンではなく、イージースラックス合わせを推奨しています。もはや定番化したイージースラックスは、ジャージー感覚で穿ける休日用きれいめパンツです。
パンツにホワイト系を選ぶならば、上品なホワイトデニムやチノパン等もおすすめです。マリンテイストをルーツとするスキッパータイプの紺ポロシャツに、白系パンツは、清涼感あるマリン配色の王道と言えます。
■「鹿の子」と「ニット」はどう違うのか
本稿ではスキッパータイプを推してきましたが、ボタンつきでも大人っぽく見えるポロシャツがない訳ではありません。それが「ニット地のポロシャツ」です。ここで「鹿の子」と「ニット」と呼ばれる生地感の違いについて触れておきます。
ポロシャツといえば通気性の良い「鹿の子」素材が一般的ですが、これもニット編みの一種です。鹿の子という名称が有名すぎて混同されがちですが、どちらも編み方が異なるだけで、同じニット素材なのです。
なかでもサマーセーターのように編まれたニットポロシャツは、ハイゲージと呼ばれる細かな編み目のものほど、生地に上品な微光沢が生まれます。
そこで鹿の子地のものと区別する呼び名として、ニットポロシャツと呼ばれています。この品の良さこそが、帰省先のリビングでくつろいでいる時でも、決してだらしなく見えない根拠です。
■帰省で忘れてはいけない「安心感」
最高気温が40℃近い暑さにおける帰省ファッションとして、ポロシャツを選ぶことは合理的な判断です。しかしながら、「ポロシャツなら何でもいいだろう」という選び方では、よそ行きには見えません。
もちろんスポーツ用のポロシャツは、休日に公園で子供と遊んだり、ゴルフの打ちっぱなしに行ったりするときは活躍しますが、帰省の目的を考えたとき、この手のものは最適ではありません。というのも本来、帰省とは「単に実家で過ごす」という意味合いではなく、親戚に対し「しっかり社会的責任を果たしている」という安心感を提示する側面もあるはずだからです。
この夏、帰省ファッションとして、大人カジュアルにふさわしいポロシャツを選びつつ、「長すぎる着丈は避ける」「肌着はベージュで存在を消す」そして「イージースラックスで品よく見せる」というルールを取り入れてみてください。

----------

森井 良行(もりい・よしゆき)

スタイリスト、服のコンサルタント協会代表理事

1979年千葉県生まれ。日本大学卒業後、一般企業を経て2007年に独立。これまでのべ5500人を超えるビジネスパーソンの買い物に同行し、スタイリングを手がける。感性で語られがちなファッションを独自のロジックで言語化し、戦略的にビジネスパーソンの魅力を引き出す着こなしのメソッドに定評がある。MENSA会員。
著書に『38歳からのビジネスコーデ図鑑』(日本実業出版社)、『男の服選びがわかる本』(池田書店)などがある。

----------

(スタイリスト、服のコンサルタント協会代表理事 森井 良行)
編集部おすすめ