“小児がんと向き合う子どもたちとそのご家族に、かけがえのない時間を届けたい”というプロジェクトの想いに共感し、ともに歩んできた10年。本記事では、プロジェクトの背景や10年の歩み、そして今年の活動の様子や関わる方々の想いをお届けします。
■スマイルスマイルプロジェクトとは
国内で、年間約2,500名もの子どもたちが発症すると言われる「小児がん」。現在は、約7割~8割が治ると言われていますが、長期間にわたる厳しい治療や入院生活により、家族との外出や旅行など「当たり前の思い出」をつくる機会が限られています。「スマイルスマイルプロジェクト」は、そのような子どもたちとご家族の気持ちに寄り添い、医療従事者が付き添うことで、安心して旅行や外出を楽しむことができるようサポートする活動です。本プロジェクトの原点には、一人の母親の強い想いがあったそうです。1985年、当時4歳で白血病と診断された長男・武文くんとつらい闘病生活を送った前川育さんは、一時退院で初めて飛行機に乗ったときの息子の最高の笑顔が忘れられないといいます。
前川さんが亡き武文くんを偲んで書かれた詩
(スマイルスマイルプロジェクトホームページより抜粋)
当事者である子どもたちが、治療中であっても子どもらしい時間を過ごすことができ、家族と大切な思い出をつくりたいと思ったときにそっと寄り添いたい。この出来事をきっかけに、ジャパンハートは「スマイルスマイルプロジェクト」を始動。当社は、そのような子どもたちとそのご家族に、精神的・金銭的負担をかけることなく、心から外出を楽しんでいただきたいとの想いから、参加ご家族とスタッフの入園料・宿泊費・交通費をすべて負担する本プロジェクトへの特別協賛を、2017年より開始いたしました。
■当社支援のきっかけ
当社が支援を開始したきっかけは、代表の後藤がジャパンハート創設者で小児外科医の吉岡秀人氏の志と活動に深く感銘を受け、「私たちに何かできることはないか」と自ら事務所を訪問したことでした。2010年秋にカンボジアから病気の子ども2名とそのご家族を福岡へ招待したことから始まり、国を超えて子どもの未来を育む手助けをしたい——その一心で、当社は継続的な支援への一歩を踏み出しました。支援を重ねる中で、「日本で病気と闘う子どもたちやご家族にも、かけがえのない思い出や笑顔を届けたい」という想いが強まり、2017年の九州初開催より「スマイルスマイルプロジェクト」への協賛を開始。
その他2025年には、カンボジアの首都プノンペン近くに開院された新病院「ジャパンハートアジア小児医療センター」プロジェクトのパートナー企業としても支援を行っており、多くの子どもの命や人生が救われる世界をともにめざしています。
■当社が協賛した「スマイルスマイルプロジェクト(九州開催)」の10年の軌跡
活動を重ねる中で迎えた2019年、突如として新型コロナウイルス感染症が世界を襲いました。感染による重症化リスクの高い子どもたちの命を守るため、この年は断腸の思いで開催見送りを余儀なくされました。「このままイベントが立ち消えてしまうのではないか」そんな不安が募る中、翌2020年、2021年も感染拡大が続きましたが、私達が諦めることはありませんでした。子どもたちとご家族にとっての「今」という瞬間は、二度と戻らない大切な時間であると考えたからです。できない理由を探すのではなく、どうすれば安全に実施できるかを考え、医療体制や安全面に最大限配慮し、形を工夫することで招待企画を再開。困難な状況の中でも、子どもたちとご家族にかけがえのない時間を届けるため、支援の歩みを止めることなく活動を続けてきました。
■今年の活動の様子
10年目を迎えた今回は、小児がんと向き合う子どもたちとご家族7組31名をハウステンボスにご招待。パーパスを体現する機会として、2026年度新卒入社社員8名と、社内公募で選ばれた社員1名が参加し、スマイルスマイルプロジェクトの医療スタッフとともに旅行のサポートを行いました。活動1日目
・ウェルカムボードでお出迎え、開会
当社社員が心を込めて手づくりしたウェルカムボードでご家族をお出迎え。最初はどこか緊張した表情を見せていた子どもたちやご家族も、社員が一人ひとりに寄り添い、温かい言葉を交わすうちに少しずつ表情が和らいでいきました。ジャパンハート理事長で小児科医の吉岡春菜氏、当社代表の後藤、専務の福原が挨拶を行い、これから始まる旅への期待と安心感が会場を包み込み、温かなスタートとなりました。
・園内散策
晴れやかな空の下、「夢を叶える旅行」をテーマに園内へ踏み出しました。スマイルスマイルプロジェクトの医療スタッフや社員ボランティアがすぐそばで見守る安心感の中で、子どもたちは病気のことを少しだけ忘れ、夢中でアトラクションや景色を楽しんでいました。不安や制約と隣り合わせの普段の日常から離れ、自分の足で走りまわり、弾けるような笑顔を見せる姿に、見守るご家族やスタッフの胸も熱くなりました。
・夕食会
当社社員がご家族へインタビューを実施。子どもたちは緊張しながらも、笑顔で発表をしてくれました。また、新日本製薬のマスコットキャラクター「パピィくん」も登場し、終始和やかな空間が広がりました。夕食後、子どもたちは旅行の思い出を形にするグッズづくりを楽しみ、大人の方々は、同じような境遇にあるご家族同士で想いを共有し合い、情報交換を行える場として交流会を実施しました。日常ではなかなか打ち明けられない胸の奥の痛みや悩みを分かち合い、同じ境遇だからこそ深く頷き合いながら、涙とともに肩の荷を下ろすような、深く温かい時間が流れていました。
活動2日目
・園内散策、お見送り
2日目はあいにくの雨でしたが、室内施設のアトラクションや体験型の展示などをめぐり、楽しい時間を過ごしました。
最後は心を込めてご家族をお見送りしました。「本当にありがとう」と手を振り合う中で、ご家族の表情は初日の緊張が嘘のように晴れやかで、満ち足りた笑顔に変わっていました。病気という大きな壁を忘れ、家族全員で心から笑い合い、深い絆を確かめ合った2日間の思い出は、これから先もご家族の歩みを優しく照らし続けるはずです。
■今年のスマイルスマイルプロジェクトに参加されたご家族の声
福岡県在住 植村さま娘がユーイング肉腫と診断されたのは昨年3月で、はじめは背中の痛みでした。昼間は元気なのに、夜になると痛がる。そのうち泣くほどになり、発熱もあって大きな病院へ行きました。入院、転院、緊急手術。
最初は親子で泣きましたが、「病気は受け入れるしかない。だったら、その中でどう楽しく過ごすかが大事。」と考えるようになり、前向きになろうと決めました。同じような状況の子どもたちやご家族と励まし合い、とにかく明るく過ごすようにしていると、気づけば「楽しかった」と思える入院生活になっていました。当時は歩くことも難しい状態でしたが、現在は回復し、学校にも通えるようになりました。
今年の1月に家族でハウステンボスに来たとき、娘はまだ髪が生えておらず、帽子を手放せませんでした。乗りたがっていたミッフィーの飛行機のアトラクションは、帽子を取らないと乗れないと言われ、泣く泣く諦めました。
だから今回の旅行が、娘にとってリベンジでした。念願の飛行機に2回乗って、「楽しい」と笑っていました。一番驚いたのは、途中から帽子を脱いでいたことです。学校では外さないのに、この日は忘れたみたいに帽子なしで遊んでいました。
7人家族で旅行に行くことは、簡単ではありません。けれど病気になってから、お金や予定よりも、今みんなで出かけることが大切だと考えるようになりました。スマイルスマイルプロジェクトは、楽しい思い出をくれるだけではなく、子どもが自分のペースで外の世界に戻っていくきっかけをくれる場所なのだと思います。帽子を忘れて遊ぶ娘の姿を見て、そう感じました。このプロジェクトのような温かい場が、同じような状況にあるご家族にとって、前向きに過ごせるきっかけになればと願っています。
植村さまご家族と同行スタッフ
鹿児島県在住 前田さま
娘が神経芽腫と診断されたのは、3歳のときでした。風邪のような症状から始まり、検査で副腎に大きな腫瘍が見つかりました。抗がん剤や手術、自家移植、放射線治療を経て一度は退院しましたが、5年以上が経って再発。その後も再発を繰り返し、闘病生活は10年を超えました。それでも娘は「治る」と信じ、病気を必要以上に気にすることなく毎日を過ごしています。
私は娘が小さい頃からシングルマザーとして、両親に助けてもらいながら治療と向き合ってきて、一度治療を終えたときは「やっと終わった」と心から思いました。その後に再発がわかったときは、想像以上に落ち込みました。「またここからなんだ」と受け止めるまでには時間がかかりました。
だからこそ今は、「悲しんでいる時間がもったいない」と思っています。時間は誰にでも平等です。先のことばかり考えるより、一緒に笑って過ごせる今日を大切にしたい。最近は夫という存在も加わり、家族で笑い合える時間が増えたことも支えになっています。
スマイルスマイルプロジェクトへの参加が決まると、娘は「乗り物に乗りたい」「ミッフィーに会いたい」と、この日を心待ちにしていました。当日は飛行機のアトラクションに何度も乗り、花や景色を夢中で写真に撮り、夕食後はイルミネーションへ駆け出すほど元気いっぱい。その姿を見て、「来られて本当によかった」と心から思いました。
以前テーマパークを訪れたときは、治療の影響で車椅子での移動が中心でした。
病気と向き合う毎日は、どうしても治療が中心になります。でもこの旅行では、病気のことを少しだけ忘れ、娘が一人の子どもとして思いきり笑い、家族みんなで同じ景色を見て、同じ時間を過ごすことができました。この一日は、これから先も私たち家族を支えてくれる大切な思い出になると思います。
前田さまご家族と同行スタッフ
■小児がん診療に携わる医師の声
九州大学病院 小児科 中島 健太郎先生旅行に行ったり、家族と過ごしたり、好きなことを楽しむ。そのような「当たり前」のようなことが、闘病中の子どもたちにとっては簡単ではない現実があります。
スマイルスマイルプロジェクトは、小児がんと向き合う子どもたちの“生きる力”を支えていくうえで欠かせない大切な取り組みであると感じています。不安を抱える中で、いざというときに助けを求められる環境がそばにあるのは、ご家族に安心感を与えてくれます。
本プロジェクトの中でお子さまやご家族が過ごした時間は、きっとかけがえのない思い出となり、病気に立ち向かう強い気持ちを育むことにもつながるはずです。これからも、この取り組みが多くの笑顔を生み出し続けていくことを願っています。
九州がんセンター 小児・思春期腫瘍科 古賀 友紀先生
闘病中の子どもたちやご家族は、多くの制約の中で、計り知れない不安を抱えながら日々を過ごしています。スマイルスマイルプロジェクトは、そうした環境から少し離れ、子どもたちが“患者”ではなく“一人の子ども”として自分らしく過ごす機会を届ける、かけがえのない取り組みだと感じています。
医療だけでは十分に支えきれない心の部分に寄り添い、笑顔あふれる体験を共有する時間は、子どもたちやご家族にとって大きな支えとなり、前向きに治療へ向き合う原動力となります。また、同じような状況にあるご家族同士が交流する時間は、孤立感の軽減や安心感にもつながります。
今後も、子どもたちとご家族の心を支える大切な取り組みとして広がっていくことを願っています。
■ボランティアとして参加した社員の声
第8回 2025年度参加 三宅 里佳私は、第8回スマイルスマイルプロジェクトに参加させていただきました。ご家族同士の交流会の後、涙ぐむご両親を見て、別室から戻られたお子さまが「なんで泣いてるの?」「ママ、目が真っ赤だよー!」とそれぞれ声を掛けていたことが心に残っています。病気で苦しんでいるのはお子さまだけではなく、そのご家族も同じように辛い日々を送っていることに改めて気づかされました。また、プロジェクトの中でジャパンハートさまからいただいた「病気を治すだけが医療ではない」という言葉が強く印象に残っています。治療ではなく、「美と健康へのサポート」という形でも社会や人々のためにできることがたくさんあるのだと実感し、改めて自分の仕事に誇りを持てた体験でした。
■代表者からのメッセージ
新日本製薬 株式会社 代表取締役社長CEO 後藤 孝洋
スマイルスマイルプロジェクトへの協賛を始めてから、今年で10年を迎えました。
この活動を通じて私たちが見てきたのは、旅行そのものではなく、ご家族が心から笑い合う時間の尊さです。病気と向き合う日々の中では、「家族みんなで出かける」「子どもが思いきり遊ぶ」といった何気ない時間が、決して当たり前ではないことを、参加されたご家族から教えていただきました。
私たちのパーパスは、『美と健康の「新しい」で、笑顔あふれる毎日をつくる。』です。この活動もまた、子どもたちやご家族が笑顔を取り戻し、明日へ向かう力につながる時間を届けたいという想いから続けています。
10年間積み重ねてきた支援が、ご家族にとって「また頑張ろう」と思えるきっかけになっているのであれば、これほどうれしいことはありません。
これからもジャパンハートの皆さまとともに、一人でも多くの子どもたちとご家族に寄り添い、かけがえのない時間を届け続けてまいります。
特定非営利活動法人ジャパンハート 理事長・小児科医 吉岡 春菜氏
新日本製薬の皆さまには、小児がん治療に向き合う子どもたちとご家族へのご支援を10年にわたり継続いただき、心より感謝申し上げます。
これまでに九州で開催してきたスマイルスマイルプロジェクトへの参加ご家族は、合計55組239名に及びます。参加されたご家族からは、「病気という大変な状況の中でも、多くの方に支えていただいていることに気づきました。本当にありがとう。」という声を毎回いただき、私たちも本プロジェクトを開催する大きな意義を年々実感しています。
これからも、子どもたちやご家族が“一人ではない“と感じられる時間を届け続けるとともに、つらいときには新日本製薬の皆さまやジャパンハートの存在を思い出していただけるような支えとなることを願っています。
■当社担当者の想いと今後の展望
私たちはこの10年間「スマイルスマイルプロジェクト」への協賛を通じて、小児がんと向き合う子どもたちとそのご家族に、かけがえのない時間を届ける支援を続けてまいりました。単なる資金的な支援にとどまらず、現場での活動や関わりを重ねる中で、本活動の意義や想いが、社員一人ひとりをはじめ、少しずつ社会の中へと広がりはじめていると感じています。当社では、現地に赴く社員だけでなく、参加しない社員も含めた全員がこの活動を「自分ごと」として胸に抱けるよう、毎年工夫を重ねています。参加されるご家族への手書きメッセージボードを作成する際、社員が一筆一筆に込める想い——。直接現場に行けなくても、想いを寄せることで社内のあちこちに温かい優しさと共感の波紋が広がっていくのを感じてきました。
社員から参加ご家族へのメッセージボード
旅先で見せてくださる子どもたちやご家族の弾けるような笑顔、そしてボランティア活動を終えた社員が語る気づきの声。その一つひとつに触れるたび、胸が熱くなると同時に、私たちが届けているものの大きさを改めて噛み締めています。
当社がこの10年間、一歩も足を止めることなく活動を続けてきた理由。それは、単なる社会貢献活動にとどまらず、子どもたちやご家族の「命」と「笑顔」に向き合うこの取り組みこそが、私たちが企業として存在する価値そのものであるからです。現地に赴く社員をはじめ、社員一人ひとりがご家族の温もりに触れ、人の幸せに寄り添う原点を学ぶ機会にもなっています。
10年という節目を迎えた今年、本プロジェクトへの協賛は一つの区切りであると同時に、新たなスタートであると捉えています。今後も支援を継続していくとともに、この活動に込められた想いや物語をより多くの方へ発信し、社会全体に「支え合いと笑顔の輪」をさらに広げ、次の未来へと歩み続けてまいります。
【会社概要】
会社名:新日本製薬 株式会社所在地:福岡県福岡市中央区大手門1丁目4-7
代表者:代表取締役社長CEO 後藤 孝洋
設立:1992年3月
事業内容:化粧品、健康食品、医薬品の企画及び通信販売・卸販売
URL:https://corporate.shinnihonseiyaku.co.jp/