何を持ち、何を手放す企業が残るのか。市場は縮小し、原料や資材、人件費、物流費などあらゆるコストは上昇。
原料調達や流通の構造も変化している。こうした中、生産能力から原料調達網、取引先、物流機能、ブランドまで、これまで築いてきた企業資産のすべてを従来通り抱え続けることは難しい。限られた経営資源をどこに置くか。その選択の重要性が増している。

 漬物では、その選択が原料産地にも及ぶ。もともと漬物は、地域の気候や風土、そこで育つ原料、受け継がれてきた製法と深く結び付いてきた。その土地で作られること自体が商品価値となる一方、気候変動や生産者の高齢化・減少によって、その生産基盤が変わりつつある。

 産地が商品価値に占める重みは、カテゴリーや商品によっても異なる。特定産地に限定せずとも商品の特性を保てるものでは、調達先を広げて安定供給を図ることもできる。

 だが、紀州南高梅に代表されるように地域の気候や風土、原料、製法が一体となって商品力を築いてきたものでは、「何を、どこで作ったか」がその価値に直結する。

 それでも、従来の形をすべて維持することが、守るべきものを守ることとは限らない。梅干では紀州産の原料不足が続く中、中国産梅を活用して商品供給をつなぎ、売場や市場を維持する動きもある。
産地ブランドを守るには、「梅干」というカテゴリーそのものを残すことも欠かせない。原料調達や生産の形を変えながら市場との接点を保つことが、地域とともに築いてきた商品の経済的・文化的価値を次代へつなぐことにもなる。

 企業が持つ機能も同様だ。市場拡大期には、工場や拠点を増やし規模を拡大することが成長を支えてきた。しかし、市場が縮小し製造・物流コストが上昇すれば、固定費を伴う資産は負担にもなり得る。需要に見合った生産能力へと規模を適正化し、固定費を抑えることが、持続可能な経営につながる場合もある。事業環境が変われば、企業にとって意味を持つ資産も変わる。

 一方で、ロングセラー商品や産地との関係、取引先からの信用、培った技術など、短期間では築けない資産もある。すべてを残すことはできなくても、自社の根幹まで手放してしまえば、その企業である意味も失われる。残すべきものを見極めて磨き、時代に応じて新たな機能を取り込む。各社には企業資産を選び直しながら、自社ならではの価値を次代へつなぐことが求められている。

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