◆JERAセ・リーグ 広島0―4巨人(5日・マツダスタジアム)

 執念が実った。白い歯をのぞかせた巨人・知念は、一塁上からベンチに両手を突き上げた。

「前に打つことだけを考えて。何とかことを起こすことができてよかった」。0―0の5回無死一、三塁で内角直球を捉えた打球はしぶとく右前に抜けた。通算18打席目でのプロ初打点が先制タイムリー。チームに16イニングぶりの得点をもたらした一打が、初のV打となった。

 「8番・右翼」で約3週間ぶりに先発。0―0の3回先頭ではカウント1―2と追い込まれると、打席の立ち位置を、踏み込む右足が投手よりの白線にかかるまで変更。4球目の高めスライダーをノーステップ打法で腕をたたみながら捉える曲芸打ちで中前へ運んだ。「形は汚かったですけど、ヒットになってよかった」と、執念の“カメレオン打法”でともしたHランプが肩の力を抜いてくれた。

 19年に沖縄電力に入社当時は投手。最速150キロの剛腕にもかかわらず「小手先で惑わせられたらと。感覚で」と横手、下手を交ぜる“カメレオン投法”に挑戦した。

「全然ダメだったんで(投手を)辞めて良かったですね(笑)」と2年で打者に転向して開いたプロへの道。型にとらわれない冒険心が根幹にある。

 7月中旬には「試合に出られるならどこでもやります」と、アマチュア時代も未経験の一塁練習を首脳陣に志願した。当初は外野用グラブで練習を続け、今はチームが所有するミットを使う。「メーカーのみなさま、ファーストミットをお待ちしています」とニヤリ。沖縄電力を退社してプロにたどり着いた苦労人は、必死で1軍に食らいついてきた。

 対左投手で打率4割の適性を買われてのスタメン。「何かを起こそうとしてる(首脳陣の)意図は見えました」とプロ初のマルチで抜てきに応えた。7回の守備から代わって入った笹原が右中間への打球を好捕し「自分だったら多分捕れてない。ああいう打球を捕れるように練習を頑張っていきたい」。生き残るためなら何でもやる。ハングリーな26歳が、優勝争いを続けるチームの戦力となっている。

(内田 拓希)

 ◆堀内恒夫Point 5回の3点はスタメンに使われた知念と小浜の適時打だった。石塚、佐々木を含めて、これほど新人や若い選手が働くシーズンはあまり見ないよな。若手にとっては、とにかくチャンスをもらっている間に、結果を恐れずガムシャラにやるしかない。チームとしてもいろんな若手を使い続けて、総力戦で戦う方針だろう。終盤のヒリヒリする場面では、経験がものをいう時がくるかもしれないが、今の戦いをやり遂げることだね。(スポーツ報知評論家・堀内 恒夫)

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