ふだん何気なく眺めているクルマの足まわり。コンパクトカーや軽自動車の多くはホイールを留めるネジが「4本」ですが、ミニバンや大型のSUV、スポーツカーなどを見ると「5本」であることが一般的です。
この本数の差は、何が理由なのでしょうか。じつは、クルマの重さやエンジン出力などと密接に関係しています。走行中のホイールには、車重だけでなく、カーブを曲がるときの横Gや、ブレーキを踏んだときの強い制動力など、大きな負荷がかかります。
この負荷を支えるのが「ハブボルト」と呼ばれるネジの役割です。実際には、ボルトそのものが力を直接受け止めているのではなく、ナットで強く締め付けることで生まれる摩擦力によってホイールを固定している点も重要です。
自動車メーカーは設計段階で、車両重量や想定される走行条件に応じてネジにかかる力を評価し、安全率も見込んだ上で本数やサイズを決めています。
実際、軽自動車やコンパクトカーなど比較的軽量なモデルでは4本、高さや重さが増すミニバンやSUV、走行性能を重視したスポーツモデルなどでは5本以上が採用されるケースが多く見られます。重いクルマや高性能なクルマほど、ネジを5本に増やすことで力を分散させ、全体の強度を底上げしているのです。いわば「数で重さをねじ伏せる」というわけでしょう。
しかし、本数が多ければ多いほど良い、というわけでもありません。そこには、自動車メーカーが最も嫌う「ある問題」が立ちはだかるからです。
「6本」や「1本」も存在! 徹底したコストと性能のバランスなぜ、すべてのクルマを5本や6本にしないのでしょうか。
ボルトを1本増やせば、ボルトそのものの重さに加え、それを受けるハブ(車軸の回転部)の構造も重くなり、部品代も上がります。1グラム単位の軽量化と1円単位のコストダウンを競うコンパクトカーにとって、不要なネジを増やすことは“悪”なのです。
一方、さらに過酷な条件では、より多くのネジが必要になります。たとえば本格的なクロスカントリー車や大型ピックアップトラックでは「6本」が主流です。これはオフロード走行での激しい衝撃に耐えるためです。
逆に、世界最高峰のレースであるF1マシンなどでは、ホイールを中央の大きなナット1個で固定する「センターロック方式」が採用されています。
これはピット作業でのタイヤ交換時間を極限まで短縮することを目的とした特殊な構造で、そのぶん1か所に大きな力がかかるため、高い強度をもつ素材と精密な設計が求められます。
「4本」か「5本」かという違いは、そのクルマが「どれだけの重さを背負い、どのような道を走るのか」という設計思想そのものを映し出しているといえます。
もし自分のクルマが5本なら、それは「それなりにタフな性能を求められた証」かもしれません。次に駐車場で隣のクルマを見たとき、足もとのネジの本数を数えてみると、そのクルマの性格が見えてくるのではないでしょうか。

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