山がちな日本では、地図上で最短に思える経路よりも、遠回りに見える経路のほうが、逆に早いというケースも少なくありません。群馬県の赤城山の山麓から中腹も、そうしたエリアの代表例です。
赤城山はかつて活発に活動したと思われる火山で、溶岩や火山灰などの噴出物が広い裾野を作っています。その裾野には幾筋もの沢が刻まれ、その沢は中腹から山裾にかけて広く深くなっています。
そのため、南西麓の中腹を走る国道353号、県道34号は、谷を渡る部分で山側に回り込むようなカーブがあること、また市街地に近く信号が多いことなどから、平均速度は意外に伸びません。そこでこの区間を通り抜ける地元のドライバーの多くは、別の道を選びます。それが「からっ風街道」です。
からっ風街道は起点の桐生市新里町から終点の渋川市赤城町まで、国道353号の山側約1~3km、標高500m付近をほぼ並行して走る全長23.3kmの道で、「赤城南麓広域農道」が正式名称です。Googleマップなど、リアルタイムの通過時間情報を反映してルート探索するスマホのナビアプリでこのエリアでの東西方向の移動を検索すると、かなりの確率で候補として提示されます。
見た目では遠回りで、また実際に走っても国道353号からはかなり急な坂道を上っていくため、はじめて通るドライバーの多くは「本当に速いのか?」といぶかしむことになります。しかし実際に走ってみると、その疑問は氷解します。
とくに有用なのが、前橋市滝窪町の「道の駅ぐりーんふらわー牧場・大胡」や同市柏倉町の「ぐんまフラワーパークプラス」周辺から赤城町の終点まで、もしくはその逆の区間です。
この区間のからっ風街道は、ところどころで大きなカーブがあり、また急坂のアップダウンも頻出しますが、そもそも通行量が少なく、かつそのほとんどが地元のクルマであることから、流れが滞ることはほとんどありません。
さらに特筆すべきは、信号の少なさです。
こうした流れの速さと信号の少なさが、距離的には遠回り、かつ赤城山を中腹まで上るというハンディキャップを上回るメリットをもたらし、“遠くても速い”ルートを実現しているのです。
上武道路の全通前の「知る人ぞ知る」ルートそして、からっ風街道をより走りやすくアシストしているのが、2017年の国道17号「上武道路」の全通、そしてその後の段階的な片側2車線化です。
従来、桐生市方面から沼田市、さらには新潟県の間を行き交うトラックが、流れの遅い国道353号の混雑を嫌い、からっ風街道に流入する例が少なくありませんでした。しかし上武道路の全通で、国道50号から「今井町」交差点経由で前橋市街をパスして渋川市に抜けるルートへと交通転換が進んだと考えられ、からっ風街道を走るトラックは以前に比べて大幅に少なくなり、それが流れのさらなる改善につながっているのです。
このように“使える農道”であるからっ風街道ですが、通行にあたっては注意点もあります。
まず、農道であることから、ときおり飼料などを運ぶ大型のトラックが、低速で走っていることです。からっ風街道にはセンターラインが白い破線で「追越し可」となっている区間もありますが、対向車もかなりの速度で走っていることがあるため、無理な追越しは禁物です。
つぎに、土日など休日は、バイクの通行量が多くなることです。多くのライダーは安全運転ですが、ときに無理な追越しをするライダーもいます。からっ風街道を走行中は、バックミラーをときどき確認し、またバイクのエンジン音にも気を使いましょう。
そして最大のポイントが、冬季の通行です。
冬季に群馬県北部を走るときはスタッドレスタイヤの装着が前提なのは当然ですが、からっ風街道の凍結時には、4WD+4輪スタッドレスでも“危ない”と思うシーンが頻発します。「関越道上りから見た赤城山が白く見えるとき、国道353号周辺の日陰に少しでも雪が残っているときは、からっ風街道は避けるべき」と、おぼえておきましょう。

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