中日ドラゴンズの次期監督に、球団OBである立浪和義の就任が確実になった。

 立浪は1987年にPL学園主将として甲子園で春夏連覇を達成し、同年ドラフト1位で中日に入団。

高卒1年目の1988年に新人王やゴールデングラブ賞に輝くなど、主軸として中日のリーグ優勝に貢献した。2009年の現役引退までに積み上げた安打数は歴代8位の2480安打。二塁打487本はプロ野球記録になっている。

 現役時代「三代目ミスタードラゴンズ」としてファンに愛された"切り札"は、2011年を最後に優勝から遠ざかるチーム再建にどんな手腕を見せるのか。

立浪和義で3人目、意外に少ないPL出身NPB監督。次の監督候...の画像はこちら >>

中日の次期監督となる立浪和義の手腕はいかに

 立浪の出身であるPL学園野球部といえば、2017年3月に休部するまでの60余年で、甲子園は春3回・夏4回の優勝を誇り、プロ野球選手は82人も輩出している。

 名球会には立浪(52歳/1988年卒)のほかにも、阪急の黄金時代に活躍した加藤秀司(73歳/1967年卒)、オリックスのコーチ時代にプロ3年目のイチローを指導した新井宏昌(69歳/1971年卒)、抜群の知名度を誇る清原和博(54歳/1986年卒)、抜群のリーダーシップで評価された宮本慎也(50歳/1989年卒)、西武で二軍監督を務めている松井稼頭央(46歳/1994年卒)、そして現役では福留孝介(44歳/1996年卒)が名を連ねる。

※カッコ内は現在の年齢とPL学園卒業年。

 しかし、これほど多くの名選手を輩出しているにもかかわらず、プロ野球で一軍監督になったのは、2010-2011年に横浜を率いた尾花高夫(64歳/1976年卒)と、楽天で2018年途中の代理監督から2019年に監督へ昇格した平石洋介(41歳/1999年卒)のふたりのみ。今回の立浪氏が3人目のNPB一軍監督になる。

 ただ、監督姿を見たいPL出身者はほかにもまだまだいる。そこで今回は今年のプロ野球12球団の監督平均年齢(53.9歳)よりも若い世代から、将来の監督候補をクローズアップしてみる。

 高校時代は清原との「KKコンビ」で活躍した桑田真澄(53歳/1986年卒)は1968年生まれ。

2006年に21年間プレーした巨人を退団し、2007年にピッツバーグ・パイレーツでプレー。その後は解説者などを務めたが、今年1月に巨人の一軍投手チーフコーチ補佐として現場復帰した。

 巨人の監督は初代・藤本定義から原辰徳まで、歴代で11人が務めているが、投手出身者は2リーグ制以降は藤田元司、堀内恒夫のふたりのみ。果たして3人目の投手出身監督になれるのか。

 立浪のPL同期には野村弘樹、橋本清、片岡篤史がいるが、コーチで実績を残したのは現役時代に日本ハムや阪神で活躍した片岡だ。引退後は阪神の一軍打撃コーチやヘッドコーチを務めた(2010年~2012年、2016年~2018年)。

そして今回、立浪ドラゴンズの入閣も噂されている。

 阪神OBでは坪井智哉(47歳/1992年卒)、今岡誠(47歳/1993年卒)もPL出身だ。坪井は2015年からDeNAで一軍打撃コーチを務めているが、監督タイプというよりは専門職のコーチとして力を発揮している。

 このタイプはPL学園出身者には昔から多く、様々な球団でコーチ経験を経て2020年からは楽天の一軍打撃コーチとなった金森栄治(64歳/1975年卒)、阪神で長く一軍のコーチを歴任した木戸克彦(60歳/1979年卒)、巨人で一軍打撃コーチなどを務めた吉村禎章(58歳/1982年卒)などがいる。

 これは50代前半以降にも当てはまる。KKコンビと同期の松山秀明(54歳/1987年卒)は、2021年はソフトバンクで三軍内野手守備走塁コーチを担当。

現役時代は巨人やMLBなどで活躍した入来祐作(49歳/1991年卒)はオリックスで投手コーチを務めている。

 一方、今岡は"ポスト矢野"の有力候補かもしれない。1996年ドラフトで阪神を逆指名して入団した今岡は、2012年にロッテで現役生活を終えると、2016年に古巣に復帰して二軍コーチを2年間務めた。2018年からロッテの二軍監督となり、今年から一軍ヘッドコーチとして51年ぶりに優勝マジックを点灯させるチームを支えている。

 そのロッテOBで言えば、サブロー(大村三郎/45歳/1995年卒)と今江敏晃(38歳/2002年卒)も将来的に監督になる可能性を残しているだろう。ふたりとも今は楽天に所属し、サブローはファームディレクター、今江は二軍打撃コーチを務めている。

楽天で監督就任への道が開かれたとしても不思議はない。

 その楽天で2019年にPL出身ふたり目のNPB監督になった平石は、チームを3位に導きながらも石井一久GM(2021年から兼任監督)体制に移行して監督の座を追われ、現在は福岡ソフトバンクで一軍打撃コーチを務めている。松坂世代で最初に監督になった平石が将来、再び指揮官になる可能性は十分にある。

「4人目のPL出身NPB監督」に最も近いのは、西武の松井稼頭央ではないだろうか。

 西武入団3年目の1996年にレギュラーとなり、2002年にはトリプルスリーを達成するなどして、2004年に日本人内野手で初めてMLBデビューを果たした。2011年から楽天でプレーしたが、2018年に古巣・西武に復帰し、この年かぎりで現役引退。

翌年から西武二軍監督を務める。将来的な監督就任は既定路線とも言われており、2022年は一軍ヘッドコーチに就く予定とされている。

 一方で「4人目」から遠ざかったのは宮本慎也だろうか。

 2013年の引退後は解説者を経て、2018年~2019年と古巣ヤクルトで一軍ヘッドコーチを務めた。監督就任への布石と見られていたが、小川淳司監督が成績不振で退任すると、次期監督に推す声があるなかで宮本も責任を取って辞任した。

 プロ野球に限らずJリーグなどでも、監督を支える立場のコーチが翌年からしれっと指揮官に昇格しているケースは少なくない。だが、宮本はそれを潔しとはしなかったようだ。ただ、今年ヤクルトは高津臣吾監督のもとで奇跡のV字回復。宮本がPL学園や野村克也監督のもとで学んだ抜け目のない野球観をヤクルト監督として披露する機会はしばらくお預けかもしれない。

 現役組では、中日の福留、ロッテの小窪哲也(36歳/2004年卒)、ミネソタ・ツインズの前田健太(33歳/2007年卒)、そして2018年ドラフトで指名されてPL学園出身者最後のプロ入りとなったオリックスの中川圭太(25歳/2015年卒)がいる。

 人気や実績を考えれば、福留や前田が将来的にNPB監督になっても不思議ではない。だが、そうした人材が監督になれなかったのもまた、PL出身者の歴史でもある。

 ただいつの日か、前田健太監督がマツダスタジアムのベンチから三塁コーチャーボックスに立つ『てっちゃん』こと小窪哲也コーチにサインを送る光景など見たいものだ。

 その前にまずは来季、弱体化した中日が立浪新監督のもと、どんな戦いを見せてくれるかを楽しみにしたい。その変貌ぶりがPL学園OB監督の「5人目」「6人目」の誕生につながっていくのではないだろうか。