――北中米ワールドカップで注目している日本人ストライカーは?
2度のワールドカップに出場し、J1リーグ歴代最多得点の大久保嘉人にそう訊ねたことがあった。
「今はたくさんの日本人フォワードがヨーロッパのクラブでみんな活躍しているけど......ひとりだけ名前を挙げるなら、上田(綺世)かな。
そして北中米ワールドカップ、上田綺世(27歳)は、4-0で勝利したチュニジア戦でまさに大車輪の活躍だった。
1点目は、上田が右に流れて起点となり、入れ替わるようにトップに入った田中碧にボールを入れ、それが中村敬斗から鎌田大地につながってネットを揺らした。ストライカーとして味方にスペースを与え、ボールを供給し、"賢さ"を印象づけている。2点目は、彼自身の強烈な一撃だった。その時間、チュニジアにボールを持たれて受けに回っていたところ、板倉滉がインターセプトから縦につけたボールに、上田は完璧なコントロールで前を向くと、相手マーカーをじりじりと下げている。そしてファーサイドと相手が開くだろう股の間のコースを計算し、鋭く右足を振った。ボールは線を引いたように、GKの手が届かない軌道を描いた。
3点目は、上田が前線で田中碧の縦パスを受けに入り、すかさずフリックで裏に出す。これに伊東純也が快足を飛ばして相手GKを抜いた。
4点目は、佐野海舟が右から上げたクロスに対し、上田は完全にマークを外していた。そして空中で止まるようなジャンプで、ファーサイドにクリアに入ったディフェンスをあざ笑うようなコントロールショットを決めている。足でも、頭でも、ワールドカップでゴールを決めた。
チュニジアのディフェンダーにとって、上田は迫りくる悪夢そのものだったはずだ。
【「父親に認めてほしかった」】
過去の日本人ストライカーと比較しても、上田は異質な存在と言える。
柳沢敦、高原直泰のように足元の技術に優れ、鋭いターンでゴールを奪うような選手はいた。大迫勇也のようにエレガントな域まで高めたポストプレーで芸術的なゴールを決める選手や、岡崎慎司のように戦術的インテリジェンスと献身でゴールのスポットに入れる選手、大久保嘉人や玉田圭司のように機動力に優れ、自ら仕掛けてゴールを奪うような選手もいた。
しかし、単純なストライカーとしての剛胆さ、豪快さという点で上田は傑出している。前を向いたら、ほとんどどんなレンジからでも一発を狙える。ワールドカップ初得点はその一例で、ハンマーで叩くような重さである。相手がブロックに来ても、弾き飛ばすようなシュートをゴールラインまで飛ばした場面もあり(GKがライン上ギリギリで防いだ)、そのパワーは圧巻だ。
大久保が語っていたように、万能である。ヘディングでも高さと強さとうまさを見せていたし、味方との連係も出色で、ボールキープでも強さを見せている。相手を背負いながら、ほとんどボールを奪われない。相手とコンタクトしながらも体勢が崩れず、少しでも隙があったら、ターンしてゴールに向かう激しさだ。
これぞ、ディフェンスが畏怖するストライカーの肖像と言えるだろう。
2025-26シーズン、フェイエノールトの上田がオランダリーグで得点王に輝いたのは伊達ではない。ストライカーとしての覇気が匂い立つと言えばいいだろうか。それは生来的なものもあるだろうが、彼が時間をかけて身につけたものだ。
上田が法政大学の選手だったころのインタビューで、彼がこんな話を洩らしていたのを思い出す。
「(ストライカーだった)父親を超えたい、でやっていたと思います」
上田はサッカーの原点について、澄んだ目で振り返っていた。
「(小さい頃は)父親に認めてほしかった、褒められたかったですね。ボールを思いきり蹴って、『キック力ついたな』と言ってほしかったり、父が蹴って大きくなったキックに追いついて、『足が速くなったな』と言われてうれしかったり。
小1のとき、父がプレーする社会人リーグの試合を観戦した。フォワードとしてプレーする父は、そこでハットトリックの大活躍だった。ピッチに立つ姿が眩しく、とにかく格好よかったという。カテゴリーや舞台は関係なく、ゴールで輝く姿に痺れた。
<父のようになりたい>
そう思って始めたサッカーだったが、当初は意外にも要領を得なかったという。行きかうボールを追いかけるだけで、面白さを感じられなかった。
「おまえ、審判やってんのか?」
チームのコーチに入っていた父からは、厳しく言われたという。最初はまともにボールに触れられなかったのだ。
それが、2カ月後に転機が訪れた。試合でロングシュートを決めたのである。"これがサッカーなんだ!"という激しく胸を揺さぶる感慨があったという。
「ようやく達成した1点でしたが、"これをまた追い求めたいな"と思いました。
それは、ひとりのストライカーの誕生の瞬間だった。その純粋な思いが、最高の舞台での今回の姿に結びついているとすれば―――上田のストライカーとしての物語は、これからひとつのチャプターのクライマックスを迎えるはずだ。

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