大阪で開催されているバレーボールネーションズリーグ(VNL)予選ラウンドで、日本は破竹の11連勝を飾っている。首位でのファイナルラウンド進出も決めた。
しかし、オポジットという攻撃に特化したポジションに、西田有志(26歳、大阪ブルテオン)、宮浦健人(27歳、ウルフドッグス名古屋)という"ふたりの剣客"が控えているのは大きい。ケモノのように敏捷に跳び上がり、左腕を鋭く振り抜くとき、抜刀して敵を打ち果たすかのように映る。ふたりがかわるがわる出場することで、禍々(まがまが)しいまでの"斬撃力"が落ちない。
「(ふたりいるのは)気持ちが楽というか......僕がダメでも宮浦さん、宮浦さんがダメでも僕がいるっていうのはありますね」西田は言う。昨シーズンは代表活動を休養したが、今シーズンは戻ってきた。
「僕らは切磋琢磨していますけど、勝負しているわけじゃない。お互いリスペクトしているからこそ、練習もしっかりできています。去年は宮浦さんひとりで、ずっとプレーするのはしんどい状態だったと思いますね。そこを50対50でできればいいのかなと。"自分がダメだとあとがない"っていうのは無理があるし、お互いがバックアップできるのがいい関係かなって」
もしかすると彼らふたりが、誰よりも"ふたり体制"に手応えを感じているかもしれない。
来るべきロス五輪は、VNLなど比較にならないほどの重圧のなかで、ほぼ連日の試合になる。それだけに、ふたりの剣客が揃ったのはメリットと言える。刀が刃こぼれせず、切れ味を保ち、かわるがわる戦える。それは海外のデカくてパワーのあるオポジットの破壊力をも凌ぐだろう。
【昨シーズンとはここが違う】
「西田はすばらしい選手で、スタートから出て......」
宮浦は朴訥に言って、こう続けた。
「自分はサブからでもできるし、西田もそれはできると思うんです。けど、自分はサブから戦いの視点を変えられているな、とは思っています」
去年の代表シーズンの宮浦は、最後、無念で終わっている。VNLでは世界のベストアタッカーのひとりとしてベスト8にチームを導いたが、世界選手権では予選敗退。彼は自責の念に駆られていた。
そこで、臥薪嘗胆の心境を聞いてみたくなった。
――世界バレー後の取材で、「自分が決めきって勝たせたい」とおっしゃっていました。カナダ、ベルギーと連勝の立役者になり、その思いをひとつ結実させたのでは?
宮浦は低い声で丁寧に言葉を紡いだ。
「世界バレーが終わってクラブシーズンに入り、(移籍した)ウルフドッグスのコーチ陣とかとも話をしました。そこで『いったん自分がやってきたことを壊して、新しいことに取り組もう』ということになって、引き出しが増えてきましたね。壊したというのは、たとえばスパイクで速いトスにチャレンジしたり、助走の仕方を変えたり、攻撃のバリエーションを多くするために変化にトライし、いろいろ試したこと。おかげで成長できたと思っています」
僥倖もあった。ウルフドッグスで1シーズン、セッターの深津英臣とコンビを組んだことによって、代表でのコンビにもつながったのだ。
「臣さん(深津)とのコンビに関しては、たしかに不安要素はないですね。お互いが信頼してやれていると思うので。そこはいいコンビになっていると思います」
そう語る宮浦はオポジットとしての濃度を上げ、"斬撃力"は格段に上がった。
一方、代表シーズンを休養し、体づくりからあらためて取り組んだ西田も、昨年とはほとんど別人のようだ。チャンピオンシップにピークを合わせると、見事にブルテオンをチャンピオンシップ優勝に導き、MVPにも輝いた。最後のサービスエースは神がかり的だった。
【「チームプレーへのフォーカスが大事」】
西田、宮浦のふたりは違った経路で成長し、代表に合流した。これは、単なる足し算ではない。
日本ラウンド初戦、パリ五輪準々決勝で逆転負けしたイタリアを下した試合後、西田は筆者の問いに対して核心に迫る話を返している。
――イタリアはサーブを失敗してもぎりぎりを狙い、3セット目から好転させて、ミドルの高さを生かす戦略で、パリ五輪と同じでした。ただ、今回は見事に相手の流れを断ち切りましたね?
「確かにイタリアのサーブが入ってきてる感覚がありましたね。それで4セット目を取られてしまって......ただ、5セット目に耐えて勝負できたのは大きかったです。シャットされたり、ミスしたりしても、そこへの意識よりも、チームとしてどう1点を取っていくか。やっぱりチームプレーへのフォーカスが大事で......。
日本は常にいいチームだし、強いですけど、ひとりひとりになってしまうと弱さも出る。
強力なオポジットが2枚いることは、チーム力に通じる。それが日本の頼みの綱になるだろう。1+1を2以上にするしかない。
西田は哲学的に言う。
「僕はずっと強打しかなかった。イタリアもそのイメージを持っていたと思います。そこで、無理しても打つか、無理して打たないか。0コンマ何秒の判断で難しいですが、人がいないところに打てるか」
宮浦は簡潔に言った。
「オポジットの役割をまっとうするだけ」
ふたりは異なるキャラクターの持ち主だし、スパイクやサーブもタイプは違う。しかし、オポジットらしい気配を匂わせる点は共通している。
7月19日の予選ラウンド最終戦は、パリ五輪で接戦を演じたアルゼンチン戦だ。



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