石川祐希のAttack The World vol. 19

(連載18:出場機会が減ったクラブシーズン 「うまくいかないことが重なったのかな」>>)

 石川祐希は中央大時代を含めて11年にわたるイタリアでのプレーに区切りをつけた。その11年で道を切り拓き、自らの評価を高め、イタリアのトップクラブでプレー。

最初はつたなかったイタリア語も今は自由に操る。そんな慣れ親しんだ地を離れ、次なる挑戦に選んだ地はトルコ。30歳になった石川が下した決断の真意、これから先のキャリアプランに迫った。

【男子バレー】石川祐希は初のトルコリーグ挑戦に「自分が求める...の画像はこちら >>

【トルコでのプレーを決断した理由】

――来シーズン、トルコのジラートに移籍することが発表されました。イタリアでプレーするということは、石川選手がこだわってきた部分のひとつだったと思いますが、トルコに行く決断をした理由を聞かせてください。

「今までイタリアしか経験していなかったので、環境をガラッと変えてみたかったんです。環境を変えることで、また学べることがたくさんあると思っています。バレーボールのことだけを考えれば、同じ環境にいてもいいと思います。でも、いろいろな新しい経験をしたほうが、人としても成長できると思ったので。

 プロの選手である以上、年俸や契約の条件は気にします。これまで条件を下げたことはありません。契約を新たに結ぶ時には、条件が同じか、上げるかという2択になります。ペルージャもそうでしたが、ジラートも条件に応えてくれるチームです。

ほかのチームだと、どうしても条件が下がってしまう。もし条件が下がる場合は、『下げてでも行くメリットがあるのか』『そこでつかみたい何かがあるか』と天秤にかけます。その上で何もないとなれば、『同じチーム、あるいは条件がいい別のチームを選ぼうか』となる。今回はそう考えた時に、新しい環境でやったほうが自分のためになると思いました」

――トルコ以外からもオファーがあったのでは?

「イタリアも来ていましたが、イタリアの上位チームはアウトサイドの選手が固まっていましたからね。あとはポーランド、ロシア、日本からもありがたいことにオファーをいただいていました」

【トルコリーグでの目標】

――石川選手は「より厳しい環境」を求めてキャリアを歩んできた印象があります。言葉や食生活も含めて慣れたイタリアから、文化もまったく違うトルコに行くというのは、より自分を厳しい環境に追い込む選択ということでしょうか?

「個人的には、『あえて厳しい環境に飛び込もう』という感覚はあまりないのですが、自然とそういう環境に身を置いているのかもしれません。ペルージャに行く時も、移籍する前のシーズンで優勝しているメンバーがいましたし、スタメンを勝ち取れるかわからないなかでの決断でした。

 今回も、何も知らない環境に身を置くことになるので、周りから見れば『また厳しい環境に身を置くんだな』と思っている方もいるでしょう。ただ僕はそうではなくて、『そこに自分が求める何かがきっとある。新しい経験を積みたい』という思いのほうが強いんです」

――トルコだと上位4チームは選手もそろっていますが、そうではないチームとも多く戦うことになります。そのなかで見据えるのはリーグ優勝でしょうか。それとも欧州チャンピオンズリーグ(CL)優勝でしょうか。

「トルコリーグの優勝はもちろんですが、やっぱりCLで優勝したいです。

ジラートは直近のCLで3位だったので、チームとしてそれ以上の結果を求めていると思います。ジラートはまだCLで優勝したことがないので、初めてのCL優勝のトロフィーを一緒に掲げたいですね。ペルージャが初めてCLを制した時も試合に出ていましたが、チームへの贈り物というか、チームが求めているものを勝ち取れるようにしたいと思っています」

――リーグ戦で下位チームと対戦する時、今までとは違った難しさがあると思います。セリエAだと下位チーム相手でも、苦しい戦いになる可能性も高かったと思いますが、そうではないチームと対戦する時のモチベーションの維持などはどう考えていますか?

「そこも一種の経験ですね。"絶対に勝てる"という保証はスポーツの世界にないので、しっかり気を張るという練習になると思います。ただ、トルコリーグは昨シーズンよりもレベルが高くなるはずです。一流選手も多くいるので、厳しい戦いが多くなると思います」

【「ロサンゼルス五輪までは海外で」】

――30歳にしてイタリアを離れ、石川選手の"第二章"が始まるような感覚でしょうか。

「そうですね。イタリアではいったん終わって、トルコでとりあえず1年間プレーします。そのあとは、どうなるかわかりません。ずっと続けてきたことから離れるので、また新しい自分が作られるという感覚です。おっしゃっていただいたように、第二章、次の章に進むひとつの区切りになると思っています」

――将来的にイタリアに戻るかもしれないし、ポーランドに行くかもしれないし、あるいは日本に行くかもしれないというイメージですか?

「その可能性もありますが、ロサンゼルス五輪までは海外でやることにこだわりたいです。

ロサンゼルス五輪のあとは、日本でやるかもしれないし、まだ海外でプレーしているかもしれない。現役を長く続けるという目標はありますが、どこのチームに所属して、どう成長してという具体的なプランはロサンゼルス五輪までしか作っていません。そのあとは、その時の自分の感情だったり、置かれている立場だったり、自分のやりたいことだったり、そういったものに左右されると思います」

【プロフィール】

◆石川祐希(いしかわ・ゆうき)

1995年12月11日生まれ、愛知県出身。トルコ1部リーグのジラート・バンク・アンカラ所属。星城高校時代に2年連続で三冠(インターハイ・国体・春高バレー)を達成。2014年、中央大学1年時に日本代表に選出され、同年9月に代表デビューを飾った。大学在学中から短期派遣でセリエAでもプレーし、卒業後の2018-2019シーズンから昨シーズンまでプロ選手として同リーグで活躍。2021年には日本代表のキャプテンとして東京五輪に出場し、29年ぶりに決勝トーナメントに進出。2024年のパリ五輪でもキャプテンとしてチームをベスト8に導いた。

柄谷雅紀●取材・文 text by masaki karaya

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