山本昌のスカウティングレポート2026年夏(前編)

 今年も恒例企画が帰ってきた。"球界のレジェンド"山本昌が夏の甲子園を彩った好投手たちを分析。

今回は甲子園史上最速の156キロをマークした織田翔希(横浜)を筆頭に、黒川凌大(花咲徳栄)、末吉良丞(沖縄尚学)ら、3年生のドラフト候補を中心に解説してもらった。山本昌が自ら「ぜひこの投手を紹介したい!」と大絶賛した"隠し玉"も登場する。

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織田翔希(横浜/186センチ・81キロ/右投右打)

もともと高校球界屈指の逸材と騒がれる存在でしたが、今夏に一気に怪物級へと成長した感がありました。甲子園史上最速の156キロには驚かされました。当たり前のように150キロ台のストレートを投げられる投手は、プロでもそういません。フォームで変わったと感じたのは、体を反らなくなったこと。静かに立って、スムーズに体重移動をする。荒々しさがなくなり、コントロールがまとまりました。スライダーなど変化球も段違いによくなっています。ピンチの場面ではギアが上がり、圧倒的な投球を見せてくれました。あとはプロの世界で1球ごとの精度を高めるとか、低めに集めるとか、細かな課題に向き合ってもらいたいです。問題は、高校卒業後の進路として日米のどちらを選ぶかですが......。

個人的には、大谷翔平くん(ドジャース)のようにNPBを経験したほうが、成功する確率が高いと感じます。もちろん、プロの世界はやってみないとわかりませんが、織田くんにとってベストな形を選択してもらいたいです。


【高校野球】山本昌が徹底分析 横浜・織田翔希ら夏の甲子園の好投手...「ぜひ紹介したい!」と惚れ込んだ逸材は?
初戦敗退したが仙台育英を1失点に抑えた花咲徳栄・黒川凌大 photo by Ryuki Matsuhashi
黒川凌大(花咲徳栄/182センチ・86キロ/右投右打)

今どき珍しくワインドアップモーションを採用する投手で、マウンドで大きく見えます。腕の振りが力強く、右手が出てくる位置がいい。軸足の使い方も理にかなっていて、フォームを研究していると感じます。ストレートの走りがよく、武器のスライダーが鋭く落ちるのもうなずけます。甲子園では初戦で仙台育英に0対1で敗れましたが、昨秋の関東大会と比べると大きな成長を感じました。あとは体に力をつけ、馬力をもう一段高めることと、スライダー以外にも勝負できる球種を増やすこと。上の世界でも先発投手として勝負できる資質を持った投手です。

【高校野球】山本昌が徹底分析 横浜・織田翔希ら夏の甲子園の好投手...「ぜひ紹介したい!」と惚れ込んだ逸材は?
2年連続出場を果たした聖隷クリストファーのエース・高部陸 photo by Ryuki Matsuhashi
高部陸(聖隷クリストファー/175センチ・74キロ/左投左打)

昨夏から見ている投手ですが、相変わらずストレートの走りが印象的でした。低いリリースポイントから放たれ、低めのストライクゾーンに収まる。まるで地を這うような軌道のストレートです。

ボールに力を伝えるのがうまく、その伸びもすばらしいです。将来的に目指すべき投手像は、同じく静岡の高校出身である髙橋遥人くん(阪神)でしょう。低いリリースから低いところへ......という球筋は、近いものを感じます。高部くんの場合はカットボールなど速い変化球を得意とする反面、変化量の大きな球種は課題になってくるでしょう。大学進学希望と聞きましたが、ぜひレベルアップして4年後のドラフト指名を目指してもらいたいです。

【高校野球】山本昌が徹底分析 横浜・織田翔希ら夏の甲子園の好投手...「ぜひ紹介したい!」と惚れ込んだ逸材は?
チームを9年ぶり甲子園に導いた中京・鈴木悠悟 photo by Ryuki Matsuhashi
鈴木悠悟(中京/177センチ・75キロ/右投右打)

今夏の甲子園より前に、個人的に鈴木くんの投球を見る機会がありました。その時から「これはプロの素材でしょう」と目を見張りました。上背はそこまで大きくなくても体に力があり、ボールの強さがあります。まだ粗削りですし、将来性の高い素材でしょう。運動能力も高く、打撃もいいと聞いています。甲子園では本来のよさが出なかったようですが、今後はフォームの安定感が出てくるかどうかがカギに見えます。体重移動時に止まって投げるイメージがあるので、全体的に流れるような動きになってくれば楽しみです。

ボールのバラつきが減り、キレも増してくるはずです。

【高校野球】山本昌が徹底分析 横浜・織田翔希ら夏の甲子園の好投手...「ぜひ紹介したい!」と惚れ込んだ逸材は?
智辯和歌山戦で150キロをマークした社・岩井秀耶 photo by Ryuki Matsuhashi
岩井秀耶(社/178センチ・73キロ/右投右打)

ひと目見て、腕の走りのよさを感じました。体の最短距離を右ヒジが通っていくイメージ。打者からすると急にボールが現れる体感で、タイミングが取りにくいはずです。ストレートの勢いには驚かされました。球速が150キロまで出ただけでなく、体のラインもしっかり出ていて、コントロールもいい。初戦の相手が智辯和歌山(1対2で惜敗)でなかったら、もっと話題になっていたはずです。あえて課題を指摘するなら、右手首が少し斜めの角度で出てくるところ。手首が立ってくれば、ストレートがよりホップする球質になってくるはずです。大学進学希望だそうですが、4年間で研究を重ねていけば、ドラフト上位でプロに行けるはずです。

【高校野球】山本昌が徹底分析 横浜・織田翔希ら夏の甲子園の好投手...「ぜひ紹介したい!」と惚れ込んだ逸材は?
高岡商戦で1失点完投勝利を挙げた高川学園・木下瑛二 photo by Ryuki Matsuhashi
木下瑛二(高川学園/179センチ・85キロ/右投右打)

躍動感のあるフォームで、個人的に好きなタイプの投手です。左足を高く上げてから、まるで鳥が翼を広げるように弾みをつけた体重移動。

捕手に対して縦のラインで真っすぐ向かっていけるのもいい。これだけ体を大きく使っていても、フォームが安定している高校生は珍しいです。打者に向かっていく気持ちだけでなく、投手としてのセンスも感じます。将来的には、プロで先発投手として活躍できるイメージが湧いてきます。今は時折、腕を振る際に左肩をあおるように使い、ボールを引っかけてしまうシーンもあります。まだ体の線が細いですし、体ができてくれば改善できるはずです。

【高校野球】山本昌が徹底分析 横浜・織田翔希ら夏の甲子園の好投手...「ぜひ紹介したい!」と惚れ込んだ逸材は?
徳島大会からほぼ一人で投げきった鳴門渦潮・西村大輝 photo by Ryuki Matsuhashi

西村大輝(鳴門渦潮/179センチ・76キロ/右投右打)

この投手を初めて見て、「ぜひ紹介させてほしい」とスタッフにお伝えしました(笑)。これだけ体をまとめられるサイドスローを久しぶりに見ました。高校生のサイドスローは左右にバラつきが出る投手が多いのですが、西村くんは真っすぐにラインが出せてコントロールがまとまっています。これから体に力がついてくれば平均球速も上がるでしょうし、将来的には大勢くん(巨人)のような投手に化けるかもしれません。今後は馬力をつけるとともに、シンカーやチェンジアップなどの球種も磨いていけると楽しみです。近い将来、たくましくなった姿を見せてもらいたいです。

【高校野球】山本昌が徹底分析 横浜・織田翔希ら夏の甲子園の好投手...「ぜひ紹介したい!」と惚れ込んだ逸材は?
最速152キロを誇る大分商の平田玲翔 photo by Ryuki Matsuhashi
平田玲翔(大分商/188センチ・80キロ/右投右打)

身長188センチと上背があって、手足が長い投手らしい体型が目を惹きます。投球フォームはテイクバックが小さくて、右ヒジの位置は低めながら力強く振り抜けています。左肩が真っすぐにホーム方向に向くので、ラインがしっかりしています。イメージ的には、日本球界トップクラスのスライダーを投げていた新垣渚くん(元ソフトバンクほか)と重なります。静かな始動からスピードボールを投げられるので、打者からすると体感スピードが速いはず。プロ志望と聞きましたが、プロでは勝負できる変化球をひとつ習得できれば十分にやれそうです。

【高校野球】山本昌が徹底分析 横浜・織田翔希ら夏の甲子園の好投手...「ぜひ紹介したい!」と惚れ込んだ逸材は?
昨年夏の甲子園優勝投手、沖縄尚学の末吉良丞 photo by Ryuki Matsuhashi
末吉良丞(沖縄尚学/176センチ・94キロ/左投左打)

今夏の甲子園では、万全な体調ではなかったことがすぐに伝わってきました。昨夏の甲子園での投球は、2年生にして「大会ナンバーワン」と評するにふさわしい内容でした。その後も注目されるなか、慌ただしい日々を過ごしてきたはずです。今春に左ヒジを痛めて、ようやく投げられるようになったと聞きました。甲子園での投球を見る限り、腕の振りやボールのキレ、コントロールは昨年のほうがよく感じました。ただし、今春の選抜大会では軸足のヒザが早めに折れていたのが、今夏は自然な形で軸足を使えていた印象があります。

投手としてのポテンシャルは折り紙つきですし、体も順調に大きくなっています。体調さえ戻ってくれば、また安定感が出てくるはずです。まずは体を万全にして、プロに挑戦してもらいたいです。

つづく>>

菊地高弘●文 text by Takahiro Kikuchi

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