全国労働安全衛生センター連絡会議は1日、記者会見を開き、精神疾患の労災請求が急増する一方で、国の労災認定率が過去最低水準に落ち込んでいる現状を報告した。
特に東京や大阪などの都市部では、調査機関の体制が追いつかず、不十分な調査のまま不支給とされるケースが増えていると指摘。
こうした状況を受け、7月3日と4日に「メンタル労災・ハラスメント全国一斉ほっとライン」を実施し、安全衛生団体や労働組合の専門スタッフが無料相談に応じると発表した。

請求件数急増、都市部で調査がパンク 認定率は過去最低水準に

厚生労働省の統計では、精神疾患に関する労災補償の請求件数は年々増加している。しかし、認定率は横ばい、むしろ低下傾向にあることが示された。
2023年9月には、パワーハラスメントなどを明確に位置づけた新たな労災の認定基準が施行されたが、2023年度の認定率は前年度を下回った。さらに、新基準が通年で適用された2024年度の認定率は、2017年度以降で最も低い水準となった。
会見では、特に東京や大阪といった都市部での認定率の急落が問題視された。両都府は請求件数が突出して多いが、2024年度の認定率はそれぞれ18.3%、23.5%と、全国的に見ても低い水準にある。
会見に出席した東京労災安全衛生センターの天野理氏は、この背景について「急増する請求に対し、調査機関の体制がパンク状態にある」と指摘する。
特に東京労働局では、滞留していた事案の処理を一気に進めた結果、2022年度から2024年度にかけて決定件数が急増した一方で、認定率は10%以上低下したという。
天野氏は「十分な時間や手間をかけた調査ができないままに不支給決定が増えている事態が懸念される。個人が労災を申請しただけではなかなか通らない、通りにくいという状況がどんどん広がってきている」と危機感を示した。

「とことんまで追い詰めてやる」でもパワハラではない?

また会見では、労働基準監督署によるハラスメント認定を得ることが困難になっている実態も指摘された。
パワーハラスメントに該当するかどうかが極めて狭く解釈され、本来労災と認められるべき事案が「同僚とのトラブル」などとして、心理的負荷が低いと判断されるケースが相次いでいるという。
天野氏が担当する事例では、配送会社のオペレーターが先輩運転手から「少なくとも4回にわたり、大声で怒鳴られる」「『とことんまで追い詰めてやる』と言われる」といった行為を受け、適応障害を発症した。
監督署はこれらの事実を認定しながらも、「人格や人間性を否定する言動ではない」としてパワーハラスメントとは認めず、労災の不支給決定を下したという(現在は審査請求中)。
会見では、監督署の調査が警察のような強制力を持たないことにも触れ、同僚の協力などがなければ被災者の訴えが認められにくいという構造的な問題も語られた。

7月3・4日に全国一斉ホットライン開催

こうした状況を受け、全国労働安全衛生センター連絡会議は、コミュニティ・ユニオン全国ネットワークなどと連携し、全国一斉の無料電話相談を実施する。
日時は2026年7月3日(金)から4日(土)の午前10時から午後6時まで。フリーダイヤルは「0120-631-202」。
相談では、労働安全衛生団体や労働組合の専門スタッフが、精神障害の労災申請の方法やハラスメント問題への対応策などについて具体的な助言を行う。
神奈川労災職業病センターの川本浩之氏は「労災申請を考えている人は、まず相談してほしい。監督署はちゃんとハラスメントの内容を調べて、労災を認めてくれるだろうという期待を持つ人は多い。しかし、実際には十分な調査が尽くされないまま判断が下されるケースも少なくない。相談を通じて、より認定されやすいように準備をしてから申請をすることが有効な対策になると思う」と呼びかけた。


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