多くの学校で夏休みが始まり、旅行・帰省シーズンが本格化した。空港や新幹線が混み合うこの時期、荷物の中に入っているモバイルバッテリーに注意が必要だ。

製品の安全性を評価・検証する国の機関、製品評価技術基盤機構(NITE)は7月15日、リチウムイオン電池搭載製品の事故は夏に急増するとして改めて注意を呼びかけた。NITEによると、過去5年間(2021~25年)に通知された同製品の事故は2140件にのぼり、特に8月にピークを迎えるという。
今年4月には航空機への持ち込みルールも改定されている。発火リスクが年間でもっとも高まる時期を前に、ルールと対策を確認しておきたい。

飛行機への持ち込み、4月から新ルールが適用

国土交通省は4月24日から、航空機内でのモバイルバッテリーに関する新たなルールを適用している。
背景にあるのは、世界的な機内火災トラブルの増加だ。韓国の金海国際空港でエアプサン機の機内持ち込み荷物から発火する事故が発生するなど、リチウム電池関連のトラブルが世界各地で問題視されたことを受け、国際民間航空機関(ICAO)が国際基準を緊急改訂。これに合わせる形で、JAL・ANAをはじめとする国内各社が加盟する定期航空協会も、一斉に統一ルールを導入した。
新ルールの主な変更点(従来ルールへの追加分)は以下のとおりだ。
  • 機内持ち込みは1人2個まで(160Wh以下に限る)
  • 機内でのモバイルバッテリーへの充電禁止
  • 機内でモバイルバッテリーから他機器への充電禁止
なお、預け入れ荷物への収納などは以前から禁止されており変更はない。罰則が科される可能性のある項目もあるため、各航空会社の案内を事前に確認しておきたい。

新幹線は「持ち込み禁止なし」だが…

新幹線へのモバイルバッテリー持ち込みはJR各社とも禁止していないが、JR東日本・北海道・東海・西日本・九州の5社は6月26日、発火対策としてファイアブランケットなどの防火用品を全編成に配備すると発表した。
鉄道各社がここまでの装備を進めるのには理由がある。国内では昨年7月、走行中のJR山手線の車内でモバイルバッテリーが発火し、5人が負傷、約9万8000人に影響する事故が発生。
その後も上越新幹線などで同様のトラブルが相次いでいる。
ファイアブランケットなどの防火用品は8月までに整備完了予定で、発火時には消火器による初期消火とファイアブランケットで延焼を防ぐほか、乗務員スペースのバケツでバッテリーを水没処理して再燃を防ぐ体制を整えるという。

夏場に発火が増えるメカニズム

冒頭で紹介したように、NITEが7月15日に公表したデータによると、2021~25年の5年間に通知されたリチウムイオン電池搭載製品の事故は2140件にのぼる。
事故件数は春から夏にかけて気温の上昇とともに増加し、8月にピークを迎える。製品別ではモバイルバッテリーの事故が最多で、2025年の件数は2021年比で3倍以上に増加している。
リチウムイオン電池は可燃性の電解液を含むため、高温下や強い衝撃などによって内部異常が起きると、発熱・発火の危険が高まる。
たとえば、炎天下の車内や直射日光が当たる場所に放置すると、電池内部の温度が急激に上昇して異常発熱や発火リスクが跳ね上がる。実際、NITEの実験でも、高温環境に放置されたバッテリーが膨張・発煙・発火に至る過程が確認されている。
また、落下など外部からの強い衝撃も、内部セパレータ(正極と負極を仕切る膜)の破損によるショートを招き、同様の深刻な事故につながる。
注意したいのは、PSEマーク(電気用品安全法による規制、2019年2月から義務化)があっても事故は起きている点だ。リコール対象品の見落とし、安価な非純正バッテリーの使用、高温環境への放置といった「使い方の問題」が依然として事故の大きな要因となっている。

事故を防ぐには

経済産業省や環境省などは、近年のリチウムイオン電池搭載製品における火災増加を受けて、事故を未然に防ぐための「3つのC」を呼びかけている。
①賢く選ぶ(Cool Choice)
  • 購入前に、販売事業者の連絡先や製品情報、リコール情報を確認する
  • 表示マークが適切か確認する など
②丁寧に使う(Careful use)
  • 高温となる場所では使用・保管しない
  • 強い衝撃や圧力を加えない
  • 異常を感じた場合は使用を中止する など
③正しく捨てる、そして資源循環(Correct disposal with better recycling)
  • 家電製品を廃棄する際はリチウムイオン電池の使用の有無を確認する
  • メーカー回収や自治体の回収区分等の廃棄方法を確認する など
旅行や帰省の前に、適切な使い方を見直すとともに、手元のモバイルバッテリーがリコール対象でないか、消費者庁リコール情報サイトで一度確認しておくだけでも、安全対策の第一歩になるだろう。



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